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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第50話・5 スタンビード戦(5)

 スタンビードの魔物との闘いが始まった。

 スタンビードの先頭を走る魔物は、予想通りゴブリンだった。コボルトも混じっているけどほとんどが棒や短剣などを持った10級のゴブリンだ。


 彼らはダンジョン入り口を走り抜けると防護抗の壁際で止まり、アッとゆう間に抗下の広場全体が魔物に埋め尽くされた。

 周りを取り巻く壁を見て自然に足が止まった様だ。


 だが、なだれ込んでくる魔物の中には止まらず壁を駆け上がる魔物もいた。

 一団となって飛び出した10級の灰色狼が、立ち止まったゴブリンの背を蹴って壁に飛びついた。


 その時、衛兵隊が一斉攻撃を始めた。ギルド員たちもバラバラだったが攻撃を始め出した。

 私たちも櫓の上から弩で近くに居るゴブリンを狙い撃ちして行く。


 弩や弓で射られて壁へと飛びついた魔物の多くは下へと追い落とされた。でもすべてでは無かった。

 壁を越えることが出来た幸運な魔物は目の前の人間に襲い掛かった。


 櫓の上から最初の人と魔物の攻防を見ていると、ほとんどの魔物は打ち取られている。

 まだ10級の灰色狼だと人間の皮鎧を食い破る事は難しかった様だ。

 ケガ人はほとんど出ずに最初の攻防は防衛側の勝利で終わりそうだ。


 ただ魔物を打ち取ったけど、その数はほんの一部に過ぎない。大部分の魔物は抗の中で立ち止まったままだ。

 その魔物も次から次へと出て来る魔物で抗の中が一杯になって来ると、壁際をよじ登ろうとする物が出て来る。


 次の攻防はゴブリンやコボルトの魔物との抗全体での攻防となった。

 壁際の魔物の上に魔物がよじ登り壁越えをしてくる。今度はゴブリンなどの人型の魔物だ。

 中にはナイフやこん棒で武装している物もいる。


 打ち取られた魔物は魔石を残して体が消えていく。驚いた事に地下とは言え、ダンジョンの外なのに魔物が死んで魔石になっている。

 魔力視を使って見ると、ダンジョンと同じ魔力の流れがこの防護抗全体を覆っていた。


 「カー爺、此の場所全体がダンジョン内と同じ環境になっています」


 「そのようじゃな、魔物が魔石を残して消えよった。」カー爺が抗の中に散らばる魔石を見ながら言った。

 「好都合じゃわい、死骸の片付けをせんで良いしの。」と笑った。


 ゴブリンとコボルトが中心となった魔物の集団は抗の中にひしめき、下敷きとなった魔物の上に乗って壁を上ろうとしている。

 弓や弩での攻撃は多くの魔物を倒しているけど、魔物の数に対して少なかった。


 衛兵隊では弩と弓隊が奥へ下がり、槍隊が前に出て来た。

 ギルド側は小集団での戦いが続いていて、ギルド員の指示があるのか幾つかの集団が入れ替わりに戦っている。


 全体として優勢だけど、皆よく戦って魔物を抑え込んでいる。ただ今居る魔物は1層と2層の部屋に居た魔物だと思う。

 スタンビートの先頭集団の更に先頭部分だった。数として600匹ぐらいになる。

 使い魔の視野には、1層を駆ける千を超える魔物の集団暴走が映っていた。


 「カー爺、スタンビードの先頭集団が1層を越えてきます」見たままを伝えた。


 「いよいよ本番が来寄ったか。」

 「数はどの位だ!」カー爺の声が生き生きとしています。


 「1層には千程です」


 私の報告と同じぐらいのタイミングで影の長から質問が来た。


 「カー殿それはどのような状況なのでしょう?」


 影の長さんが私が言った魔物の数に危機感を持ったのか聞いて来た。


 「今見えているのはスタンビードのほんの始まり程度じゃと言う事じゃよ。」カー殿が言った。


 衛兵副長のラザフさんとギルド長のアサイアスさんがぎょっとして、カー殿の方へ顔を向けた。


 二人の顔を見ながら、状況をひっくり返す提案をカー爺が言った。


 「次の魔物の波が1層まで来ておる様じゃ。」

 「そこで提案なんじゃが、魔女の魔法での攻撃を見て見ないか?」


 カー爺の提案に真っ先に反応したのは影の長さんだった。


 「こんなに早く見れるのですか?」


 影の長さんの予想だと、魔女の魔法は切り札的な物で最後に見せるだろう、とでも思っていたみたい。


 「出し惜しみするようなもんでも無かろう。」

 「許可を頂ければ、何時でもお見せできる。」


 カー爺は衛兵副長のラザフさんとギルド長のアサイアスさんの二人を見ながら言った。


 「許可しよう、私も魔女の魔法を見て見たい。」


 衛兵副長のラザフさんが影の長さんの方を気にしながら言った。

 カー爺はギルド長のアサイアスさんが同意して頷くのを見ながら返答した。


 「承った。」

 「魔女による攻撃を先頭集団が押し寄せた時点で行う。」

 「よろしいかの?」


 カー爺が衛兵副長のラザフさんとギルド長のアサイアスさんの「「分かった。」」との返事で、私とポリィーの方を向いた。


 「二人共用意は良いかの?」カー爺の問いに「「はい!」」と頷く。


 いよいよ魔女の魔法(スキル)の見せ所の様です。ポリィーも私を見て頷いています。

 最初が肝心ですから派手に行きましょう。


 「魔女の魔法か?」影の長さんも好奇心丸出しの顔をして私たちを見てボソっと囁いた。

 「見せて貰おう、魔女の魔法とやらを。」私たちに問う言葉は挑戦的だった。


 「見ていただければ納得するじゃろう。」


 カー爺がその言葉に答えて返答した。それから衛兵副長のラザフさんとギルド長のアサイアスさんの方を向いて言った。


 「所で、連続した戦いのため用意した救護所に魔女の一人を派遣したい。」


 カー爺の言葉を受けて今度は、アサイアス・ギルド長が言った。


 「それは、魔女の治療を受けられると言う事か?」


 嬉しそうな声からすると、魔女の治療の事を知っていて、受けられるとは思っても居なかった様だ。


 「そうじゃ、今回儂らが持ち込んだ魔女のポーションも有る。」

 「魔物の数に対抗するには、ケガ人の戦線への復帰が必要と成ろう。」

 「魔女は治療する事も力の一つじゃ、救護所でその力は最大に発揮されるじゃろう。」


 嬉しそうなギルド長のアサイアスさんに比べて衛兵副長のラザフさんの方は良く分かって居ないようだったが、ギルド長さんの反応を見て「分かった、お願いする。」と、言った。

 ギルド長のアサイアスさんのはしゃぎ様に拒否する事でも無いと思ったみたいだ。


 衛兵副長のラザフさんとギルド長のアサイアスさんの返答にカー爺が私たちに声を掛ける。


 「聞いたな!」

 「魔女殿と魔女っ子はスタンビードの先頭集団を魔法で蹂躙するんじゃ。」

 「その後、魔女殿は救護所へケンドルと共に行ってくれ。」


 カー殿の指示が出ました。


 攻撃魔術に回復魔術どちらも私とポリィーには心躍る話です。

 私とポリィーの腕輪の空間収納には十分な魔女の薬(魔女のポーション)が備蓄してあります。

 魔術は最初ですから火球(ファイアーキャノン)にしようと思います。


 「火球(ファイアーキャノン)で行こうと思います」とポリィーの側で小さな声で囁いた。


 「ええ、私も火球(ファイアーキャノン)を使って見ます」とポリィーも小さな声で返してきた。


 ポリィーが火球(ファイアーキャノン)を使える事は、練習に付き合ったから知っていましたけど、実戦で使うのは今日が初めてです。

 魔力受容体が劇的に多くなったポリィーは樹人でも難しい火球(ファイアーキャノン)を撃てる様になっています。


 その時魔物の咆哮と集団の接近する音が聞え始めた。


 次回は、スタンビード戦も魔物の波状攻撃の最初の第1波が到着。

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