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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第48話 (閑話)影働きの頭スマイラス

 ミンストネル国の影働きの頭と上役は対応に苦慮する。

 影の頭はスマイラスと言う。


 影働きと言っても生まれはミンストの騎士の息子だった。影働きの仕事をするきっかけは、上役の身代わりで罪を被って平民に落とされた。


 それは、別の貴族の暗躍による意図的な在庫の数と帳簿との差を、着服として訴えられたのだ。

 スマイラスが上役の濡れ衣を一人で負って職を離れた。


 その上役が暗躍のため作る事にした影の組織を一から作ったのが、スマイラスだったのだ。

 その時に彼の魔力視と言う技能(スキル)が役に立った。


 彼が組織した影働きの中には魔法(スキル)が使える物が多く含まれていた。もちろん彼のスキルで魔力を確かめて勧誘したからだ。


 彼らの働きは素晴らしく、上役だった貴族の政敵を蹴落とすネタを探るだけでなく、防ぐ事も出来た。やがて上役の末子を妻とし、上役の貴族家の一員として働く事になった。

 彼を今の立場に追いやった貴族など、無能で汚辱にまみれた者として家財没収の上、平民に落とされた。


 上役の貴族は、彼の働きによりミンストでの王の側近中の側近として国政を動かす一人となった。


 夜7時(午前0時)いつもなら自分の家へ帰って寝ている時刻だろうに、王城のこの部屋は煌々と魔道具の灯りで照らされ昼間の様に明るい。

 広い部屋の壁に盾と剣で装飾された紋章が飾られた壁を背に、一人の初老の男が座っている。


 近衛隊長レイモンド伯爵は、頭を抱えて机に突っ伏していた。

 ふてぶてしい態度で義父の前に立つスマイラスから見て、何時もの冷静に物事を受け入れ判断を下す近衛隊長とは違う慌てぶりだった。


 スマイラスの感想は、「仕方が無いかぁ。」だった。


 スマイラスが一枚の紙に要点だけ纏めて書き上げた報告書と言うより面倒毎を列挙した紙を読んで、俺の話を聞いたら、こうなった。


 紙には、傭兵クラン”緑の枝葉”のリーダーから報告があった内容が記されていた。


 最初に書かれているのは、スタンビードが起こった事。

 次に、エルゲネス国の闇魔術師とその眷属2人がスタンビードを起こした元凶だと言う事。

 彼らは他の神聖同盟の国に在るダンジョンでもスタンビードを起こすと言った事。

 彼らに洗脳され、使われていたオウミ国の貴族ベロシニアら7人を保護した事。


 以上が”緑の枝葉”のリーダー、名をカーと名乗った男の提供してきた情報だ。同時にベロシニアら7人の闇魔術師に洗脳されて利用されていたオウミ国の貴族も引き取り保護した件だ。


 個々の事項についての更に詳しい内容は、口頭で話をさせて貰った。文章に残せる内容ではなかったからな。

 書いて渡した紙も、直ぐ暖炉で燃やされるだろう。


 カーの話を全て信じるなら、国が亡びる事さえあり得る話だからだ。


 一昨日に、その時点で分かってる事を最初の一報で知らせている。


 内容は「魔女を含む、オウミ国の密偵と思われるグループがミンストへやってきた。」


 その時点での、分かっている事だけだった。


 「それで、闇魔術師は何処へ行ったのだ!」


 「去る時、次はミュリネンだ! と言って去ったそうです。」


 「ミュリネンか、あそこには10階層のダンジョンがあったな。」


 「はい、其処が次の狙いだと思われます。」


 「それで、お前に”城の主だっただれかと連絡を取りたい”と言って来た、で良いのか?」


 「その通りです。」


 「そのカーと言う人物は何者じゃ?」


 「恐らくですが、オウミ国の影働きの大物かと。」


 「大物?」


 「はい、魔女が二人付き添っております。」


 「なに! 魔女が二人だとう!」レイモンド伯爵が思わず椅子から立ち上がった。


 「オウミから魔女が二人も出て来るような大事だと言うのか?」


 「カーの言う通りだと、大事ですね。」


 「何を感心して居る! 奴らの狙いは何なんだ!」


 「彼の話を信じるとすれば、闇魔術師に対抗するためでしょうね。」


 「闇魔術師に対抗する?」

 「彼は儂らに何をさせたいのか言ったのか?」


 椅子に座り直すと、近衛隊長として気がかりな事を聞いて来た。


 「いえ、今の所話し合いをしたいとだけ。」


 「そもそも、オウミの連中と我ら神聖同盟の国が協力するとでも思っているのか?」


 「まぁ、ダンジョンのスタンビードが此れから次々に発生して行くのなら。」

 「あり得る話ではありますね。」


 「馬鹿な! それでオウミに何の得があるのだ!」


 「その彼らの得が、エルフの子だと思うのですが、なんで得になるのか分からんのです。」


 「エルフの子?」


 「はい、ベロシニアら7人の内女の一人がイスラーファだと名乗っておりまして。」


 「なんだと(・・・・)!!!」座っていた椅子を後ろに倒す勢いで立ち上がった。


 「おっと、慌てないでください、偽物ですから。」


 「はぁぁぁぁ。」力が抜けて座ろうとしたら、倒れた椅子の上だった。再び立ち上がって怒鳴りつけた。


 「馬鹿野郎!!」

 「先に言え、先に!!」そこで、先ほどの言葉を思い出したようで。

 「エルフの子?」


 「はい、魔女の一人がエルフの子に化けた魔女だそうです。」


 「どうやら行方不明のイスラーファは闇魔術師がどこかへ隠しているそうです。」

 「彼らは闇魔術師を追ってミンストまで来たそうです。」


 「闇魔術師がイスラーファ行方不明の原因か。」

 「ル・ボネンも隠したがる訳だな、飼い犬に手を噛まれた訳だ。」

 「それで、エルフの子と闇魔術師が如何関係するのだ?」


 「闇魔術師の目的はエルフの子を使って何かしたいらしく、イスラーファだけでなく子供も狙っているそうです。」

 「もう一つが、ダンジョンの最奥に在るダンジョンコアで、今回のスタンビードは彼らがダンジョンコアに何かをしたらしく、それが原因でスタンビードが発生したとの事です。」


 「何ともあやふやな情報だな?」

 「裏付ける様な物はあるのか?」


 「証拠ですが、ベロシニアが王都でイスラーファと名乗る妻とホテルに泊まっていた事は把握しています。」

 「そのホテルでは、イスラーファの子供が誘拐され、それを追ってミンストへ来たと言い触らしていました。」

 「聴いた者の話では、有用な情報にはダキエ金貨を褒賞として渡すと言って、ダキエ金貨を皆に触らせていたそうです。」


 「オウミの貴族を此方へ渡す意図はなんだ?」


 「オウミ国を出奔したらしく、オウミ国はベロシニアを追放したようです。」


 「そうか、理由は分かったのか?」


 「イスラーファの件で闇魔術師の手先として暗躍していたそうです。」


 「洗脳されてか?」


 「どうやら洗脳される前からだそうです。」


 「それにしても闇魔術師が何の目的でこんな事を引き起こすのか?」

 「カーとやらは、何か知っていないのか?」


 「カーも理由は分からないそうです。」


 と、言いながらスマイラスは続けた。


 「私が考えるに、闇魔術師はエルゲネス国の男エルフです。」

 「あの国は悪い噂が多く、男エルフの眷属も魔女並みに魔法(スキル)を使うそうですし。」

 「油断がなりません。」


 一端言葉を切ってスマイラスは、伯爵の倒した椅子を回り込んで起こす。


 「今回、カーらは、闇魔術師が仕掛けた罠にあえて踏み込むためエルフの子供を連れてミンストまで来たそうです。」

 「イスラーファの子供は幼児らしいので、魔女で体の小さい者をエルフの子として変装していると言っていました。」


 スマイラスは話しながら、伯爵が椅子に座るのを見て机の向かいへと移動する。


 「利害が一致するのなら、協力して対処できるだろうと言ってきています。」

 「更に、話し合いに応じるなら、今回のスタンビードに魔女を含めて対処しても良いと提案して来ています。」


 「それは頼もしいが、スタンビードの原因は本当に闇魔術師なのか?」


 「それは、スタンビードを意図的に起こすようなことは人族にはできません。」

 「今回、彼らが言うようにスタンビードが発生したなら、彼らの言う事を信じても良いかと。」


 「そうだな、スタンビードが発生したなら信じられるかもな?」

 「はーぁ!」伯爵は、どうもカーとやらの提案が気に入らない様だ。


 「今回のスタンビードは明日中に外まで到達するそうです。」

 「対処は早めにしないと、スタンビードの先頭が見えてから対処している様では被害は大きいでしょう。」


 「はぁ、そうだな。」やっと伯爵も決断したようだ。


 「闇魔術師のやりようによっては、最悪ダンジョン内の魔物が全て出て来るようなスタンビードになるそうです。」

 「危機感を持って、今すぐ対処してくれとの事です。」


 「わかった。」


 決断すると伯爵の行動は早かった。


 「スタンビードに闇魔術師か、最優先はスタンビードへの対応だな。」

 「私の権限で、衛兵へスタンビードへの防衛命令を出す。」

 「スマイラスお前は、カーとやらに話し合いはスタンビードが終わってからと伝えよ。」

 「ベロシニアは此方で預かるから、後程引き渡す様に、唯一の証人だからな。」


 スマイラスに命令を出すと、椅子から立ち上がり、暖炉へと近寄った。

 手に持っていた、渡された紙を暖炉に放り込んだ。


 「はっ。」紙の燃えていく様を見つめながらこれから始まる事へ決意を込め返事をした。


 「それから、カーとやらに魔女にもスタンビードへの対応をよろしくと伝えよ。」


 「彼らの云う事を信じて、協力する事にしたんですね。」


 「仕方があるまい、早急に王の裁可をもらう事にする。」

 「急げ!」


 「ハッ!」


 次回は、閑話傭兵ギルド買取所です。

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