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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第47話 後始末(2)

 ダンジョンから出て来たら、ミンストレル国の影が見張って居た。

 ダンジョン最下層から地上へ出るのに大した時間はかからなかった。


 それでも、昼10時(午後3時)位からコアの部屋で過ごした時間は1刻(2時間)は立って居ないと思っていた。

 ダンジョンから出て来たら、既に日が暮れていた。慌てて部屋(腕輪の空間収納)に置いてある魔時計(私が作った)を見ると夜2時(午後7時)になっていた。


 人目につかない場所として、傭兵ギルド買取出張所の横、ダンジョン城塞との間に在る隙間を利用する事にした。笑い猫を通路の様になっている隙間まで移動する。

 ベロシニアたち7人を闇隠(ダークハイド)から出して、通路の石畳へと寝かせる。縛り上げていたロープと魔術で眠らせていたのを解除した。


 この寒空に寝かしたままだと冷えるので、ベロシニアら7人には起き上がらせた。その後おしくらまんじゅうの要領で女性を中心にして集団で蹲らせた。

 少しは暖かいと思う。それに突発的な行動があったとしても座った状態からなら対処できるだろう。


 私たちも全員外へと出て、笑い猫は帰還させた。

 暗く狭い通路に蹲る7人とその前で表通りから隠す様に立って居る6人。怪しすぎる状況だけど、カー爺は自信有り気だ。


 「マリィー(マーヤ)、魔力視を使っている奴が居るか調べてくれ。」


 宿でポリィーが魔力の行使状態を見られたかもしれないと言っていたのを思い出した。やっぱり私たちを監視している誰かが居て、カー爺は誰が見張って居るのか分かっているようです。


 「はい」と返事して、空間把握で辺りの人で目に魔力を多く流している人を探します。


 魔力は空間把握では捉えにくいけど、魔力の影響を受けると質量が微量に変化するので、探せない事は無い。

 でも、疲れるのは集中しているだけでは無いのでしょう。魔力も結構使っている気がします。


 「居ました」

 傭兵ギルドの買取所を見張れる場所(通用門)に居る衛兵さんの一人が目に魔力を流していました。


 「門の衛兵の中の一人だけです」

 「門の衛兵の中でこちらを見ている人が居ると思います、彼が魔力視持ちです」


 「見つけた、もう良いぞ、ありがとうなマリィー(マーヤ)。」

 「ダルト、後は頼んだ、傭兵ギルドで換金して待っててくれ。」


 カー爺は私たちにそう言って、すたすたと衛兵へと歩いて行った。

 慌てたのは衛兵さんの方だった。なんだか挙動不審な態度で、隠れようとしているみたいだ。


 「すまんが、スタンビードの件で、知らせしたい事が在るんじゃ。」

 「ちと、話を聞いてくれんか?」


 とカー爺が挙動不審な衛兵さんに話しかけたのが聞こえた。


 その衛兵さんは諦めたのか、カー爺に向き直って聞いて来た。


 「ええと、スタンビードの事で話が在ると言うんだな。」


 「そうだ。」


 カー爺の確信した声でその衛兵さんは何かを悟った様だ。


 「分かった、すまんが詰所を少しばかり借りるぞ。」


 衛兵の隊長さんらしい人へ振り返りざま言った。何だか隊長さんより偉そうな感じがする。


 カー爺が衛兵さんと一緒に詰所へと入って行った。


 カー爺たちを見送った後、ダルトさんの指示で、私とダルトさんがベロシニアらの見張りに残る事にして、アントさんとケンドルさんとポリィーが傭兵ギルドへ換金に入って行った。


 ケンドルさんには、私が預かった魔石を背嚢に入れて渡してある。神域で魔石になったスタンビードの魔物の魔石も入れてあるので背嚢は満杯になっている。


 ケンドルさんの背嚢にはドロップした毛皮や角などが入れて在るけど、植物系のドロップ品(小麦とか果物)と魔糸などの錬金に仕える物は私が預かっている。


 2コル(30分)もせずにカー爺と連れ立って魔力視が使える衛兵(影働きの人)さんが通路へとやってきた。


 「ダルト、マリィー(マーヤ)、ベロシニアらを外へ出してくれ。」


 「はい。」ダルトさんが返事をして、ベロシニアらに命令します。


 「全員立て。」その命令でベロシニアら7人が蹲っていた状態から立ち上がった。

 「通路から外へ出ろ。」ベロシニアらが歩いて外へと出た。


 黙ってダルトさんの命令に従うベロシニアら7人を見ていた衛兵(影働きの人)さんが嫌そうな顔をしながら言った。


 「カー殿の云う通りだな、これが闇魔術師の洗脳とやらか。」


 カー爺が頷く。


 「分かった、こいつらにカー殿が言った事を確認してみる。」


 「ああ、そうしてくれ、でも急げよ、スタンビードが迫っているからの。」


 「その件も確認する。」

 「だが、提案の方は時間が掛かると思ってくれ。」


 衛兵さんが念押しするようにカー爺へ言い返します。

 カー爺が提案した事って、考えが有るって言ってたことかも。


 「かもしれんが、時間は大してないぞ。」カー爺がすげなく返事をしています。


 カー爺の言葉には返事をせずに、ベロシニアたちに体を向けると。


 「それでは連れて行くぞ、ベロシニア、其の家人と使用人ども、私が命令する事になった。」

 「私の言葉に従うように、分かれば返事をしろ。」


 「「「「「「「はい」」」。」」」」


 不気味なほど声を揃えて返事をするベロシニアら7人。

 それを顔を引きつらせながら、厭々な事が分かる声で衛兵さんが命令する。


 「では、私についてこい。」


 そう言って衛兵(影働きの人)さんが通用門へと向かって歩き出した。

 ベロシニアら7人も彼について歩き出した。


 カー爺が彼らを見送って「やれやれ、厄介者を片付けられて良かったわい。」とほっとした様に言った。

 そしてダルトさんに「アントらは傭兵ギルドか?」とギルドを振り返りながら聞いて来た。


 「ええ、だいぶ時間が掛かっているようですね。」とダルトさん。


 「たっぷり魔石やドロップ品が有ったから換金に時間が掛かると思うよ」カー爺に私の予想を話した。


 「ふん、どうせアントが受付に張り付いて話が長引いておるだけじゃろう。」

 「何処でも誰とでも、噂話から与太話まで聞きたがる癖は治っておらんわい。」


 「まぁおかげで色々話を仕入れられますので、助かっている面もあります。」


 カー爺とダルトさんがアントさんの噂話をしていたら、噂のアントさんたちが帰って来た。


 「カー爺さん帰って来てたんだな。」

 「聞いてくれ、スタンビードの話はまだ傭兵ギルド迄来て無かった。」


 アントさんが話始めたが、ポリィーが焦れた様子でアントさんの話を遮った。

 カー爺に切羽詰まったような慌てた様子で話しかけた。


 「私がスタンビードに8層で遭遇した事を話してしまったの」

 「そうしたら、換金の途中だったけど、スタンビードの対応の戦力として緊急対応で、強制的に迎え撃つ戦力に入れられてしまったの」

 「外の仲間に知らせて来るからと、抜け出してきたけど、ギルドはスタンビードが初めて見たいで混乱して大変そうなの」


 「分かった、と言ってもスタンビードが地上まで出て来るにはまだ時間が掛かるじゃろう。」

 「一度傭兵ギルドと話しをする必要があるな。」


 次回は、閑話を挟んでスタンビード戦になります。

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