第43話 スタンビード(2)
ダンジョンコアを操る闇魔術師達の罠に嵌りスタンビードに巻き込まれるのか。
「7層の護衛の人たちって、どのくらい強いの?」気になって聞いて見た。
「難しいのう、彼らは金剛力が使え無いから、力だけならダルトンと互角位じゃろう。」
「奴らの真の強さは、集団の強さじゃよ。」
「5、6人の集団が探索者として共に戦う経験を積むから、集団での戦いをよく知っとるんじゃ。」
「とは言え、経験の無い魔術師との戦いは、戦いにならんじゃろうな。」
「魔物相手なら、10層まで行ける奴らがゴロゴロおる。」
ゴロゴロいるのなら、ひょっとして、ベロシニアが雇った人たちって、
「ベロシニアが雇った探索者たちって彼らなの?」
「詳しくは分からんかったが、話を聞く限りベテランらしい。」
「荷物持ちの人たちも?」
「恐らくな、探索者の中から選抜して上位者を護衛、それ以外の合格者を荷物持ちに採用したんじゃろう。」
「襲って来ると思う?」
「儂はの、ベロシニアが雇った探索者たちを罠への餌として使うと思っとるのじゃ。」
「カー爺さん、罠だとして探索者たちが如何動くか、考えているんだろ?」アントさんが自分で考えるより聞いたほうが早いと、カー爺から聞き出そうと身を乗り出します。
「8層で待ち構えている事から罠は8層か9層辺りにあるのでしょう。」ダルトさんがアントさんの質問に答える形で話始めました。
「罠その物はダンジョンコアを使った魔物の襲来、つまりスタンビードを起こす事でしょう。」
「探索者が如何動くかは、二つ考えられます。」
そう言って、カー爺の顔を見ながら自分の考えを話し出しました。
「一つは仲間になる事です、例えばスタンビードの発生を知らせて一緒に対応する。油断したところで襲う。又はマリィーと私たちの分断を狙う。等ですね。」
「この場合は、洗脳されている事が前提になります。」
「もう一つは仲間にならないですが、恐らく彼らだけで私たちを襲う事は無いでしょう。」
「スタンビードを知って共に戦う以外の行動は下層へ逃げる。でしょうから。」
「彼らにとって仲間は7層迄の人たちでしょうから、早く知らせようと7層へ急ぐでしょうね。」
「こちらの場合は、洗脳はされて無いと考えて良いでしょう。」
「スタンビードの魔物といっしょに襲って来る事は無いでしょう。ダンジョンの魔物に人の区別など出来無いでしょうから。」
ダルトさんの言う通りだと思うな。
「まぁそうじゃな、ダルトの考えは儂と同じじゃ。」カー爺はダルトさんの考えを肯定した。
「カー爺はどの時点でダンジョンコアの部屋へ直接乗り込む判断をするの?」
「今言えるのは、雇われ者の探索者が、襲って来るか会って見なければ分からんとしか言えんの。」
「行くしかないと言う訳ね」
皆も分かっている様だ。彼らに会うため食事をした場所を片付け始めた。これで話し合いは終わり、次は動く時ね。
目の前には広がる草原が在りその先に林が広がっている。草原には魔物が結構います。3頭のオーロックの群れ以外にも彼方此方に背の高いイネ科の草が生えて群落を作っています。
草原を見渡すと、イネ科の草が一面に生えてて何処へ行こうが行く手を塞がれています。
このままだと麦刈りしながら進む事になりそうです。
カー爺の代わりに私が先頭に立って進みます。前方に行く手を塞ぐように生えているイネ科の草の群落へ対処するためです。
前を塞ぐイネ科の草の群落へ魔術を行使します。
『水墨て砂塵を纏え、その短き手は全てを砕く刃先とならん』
「水砂」
細かな砂粒を含んだ水を草に着く位の距離から高圧で出して行きます。右から左へと私たちの通る幅の広さで。
刈り取ったイネ科の草が落とすドロップ品は、小麦の実った穂の部分でした。水に濡れていますが、もったいないので頂いて行きます。
オーロックも林の中のトレント・果物も無視して進みます。林で狩りをしていた探索者は反対に7層へ帰るのか、壁際を通って7層へと帰って行きました。
私たちは、再びカー爺を先頭にした隊列を作り、探索者が居る平原の前にある林へと入りました。
そう思っていたら、空間把握で監視していた彼らが、此方へ向かって動き出した。
「探索者がこっちへ来るわ」
「9層の入り口から魔物が出て来ています、彼らは此方へと逃げ出してます」
ポリィーも使い魔からの視点で報告してきた。
いよいよスタンビードが始まった様です。
探索者に会いに行く前にスタンビードが始まってしまった。
次回は、スタンビードを起こした魔物に追いかけられた探索者がやってきます。




