第41話 6層から8層へ
6層から8層へ、ダンジョンを進むマーヤたちの前に敵の姿が見え始めた。
今日はこの後7層へ向かい、今日中に8層まで行く事になった。
カー爺たちの要求で、途中で食肉となる牛や鹿に猪などを肉を狙って狩りをして見る事になった。
一番の獲物は平原に単独でいるモーロックだけど、林の魔狼や魔熊などは臭いで襲って来るので、襲ってくれば返り討ちにする事まで打ち合わせている。
食事を終え、探索の準備を終えれば出発する。
今の時間は昼の2時(午前7)、テキパキとテントを畳み椅子を各自が部屋へ収納すれば、用意終わり。
出発です、隊列は昨日と同じなので、背嚢を担いでポリィーと歩きます。
6層は入り口付近の平原と周りを取り囲む林、又平原、林、平原と続く。全体が大きな円形で平原を林が区切っている縞模様の構造になっている。
私たちがキャンプしたのは、7層への降り口が有る平原の前に在る林の中。
林の中で気を付けなければならないのは、蛇の魔物スネエーク、と水場に居る赤毒カエル、果物を落とすトレント系の魔物と集団で襲う魔狼に6層のボス魔熊。
夜キャンプに出て来たのは、この内のスネエークと魔狼。
魔熊は6層のボス格らしく1匹だけ居るそうです。
別段ボス部屋など無いので、6層を徘徊しているそうだけど、広い6層で出会う事はあまりないらしい。(6層は半径2ワーク(3㎞)も在る円形の形をしている)
そして、目の前にあるのが、トレントの魔物の一つで、リンゴが実ってるトレント・リンゴ。実際に出会うとリンゴの木にしか見えないけど。近寄ると枝が襲って来る。
枝はリンゴが実ってる枝とうねうねと蠢く枝に分かれていて、動く枝が近寄る生き物を襲う。
トレントの魔物は単独でも結構強い魔物になる。ただ初級のトレントは果物を落とす比較的弱い魔物なので、果物が欲しいなら狙わないなんてもったいない。
見た目は完全にリンゴの木に擬態しているので知らなければ、近寄ってリンゴを取ろうとするだろうけど。ダンジョンに入る人でそんなのんきな人はいない。
初級の果物系トレントの狩り方は、動く枝を全て刈り取り、止めは幹を切り倒すと木の実をドロップして消える。
魔石は幹の中に在るそうで、魔石を砕くのは難しい。
私たち(私とポリィー)も新鮮なリンゴが食べたいから、このトレントを狩る事にします。
次々に私とポリィーで動く枝を散弾で枝毎吹き飛ばして行きます。(多少リンゴの実った枝も吹き飛びましたが、ドロップ時に落とすリンゴとは別で死んだら消えます)
枝を失い無防備になった幹を、ケンドルさんが斧で切り倒してくれました。
1本のトレントから50個ぐらいの美味しそうなリンゴが手に入りました。トレントの魔石は9級の魔石で私の親指の爪ぐらいの大きさでした。
平原に出ると、直ぐに7層への降り口が壁の中に見えて来ました。でも、草原の真ん中で魔熊がデデンと腰を据えて待ち構えています。
「良し、アント、二人で行くぞ! 他は周りの警戒じゃ。」カー爺が美味しい狩の獲物だとばかりに走って行ってしまいました。
アントさんが金剛力で身体能力を強化して後を追いますが。同じ金剛力で走りを強化したカー爺には追いつけません。私たちも見てるだけです。
魔熊は座ったままで、カー爺の速さに反応できず、動いていない。
カー爺が真正面から走り寄り、そのまま魔熊に一振り。
「ムンッ。」カー爺が魔熊の正面に立ち止まり、剣を振り下ろしたまま残心の構えです。
ゆっくりと魔熊が真っ二つに左右に分かれて逝き。直ぐに消えて魔石と毛皮が残りました。
カー爺が残心を解くと、魔石を摘まみ上げて。
「ふんっ、9級か、ボスとしては物足りんが、6層じゃとまぁまぁじゃの。」
アントさんが「カー爺さん、俺たちにも働かせてくれよ。」と文句を言っていますが、リーダーはカー爺なので、カー爺の暴走は止めようがありません。
「まだ初級の魔物じゃ、10層からお前たちにも活躍の場が出て来るじゃろう。」と気にもしてないようです。
魔石は私が、毛皮はケンドルさんが受け取り保管します。ダンジョンで取得した物は出る時に売る予定です。(二人だけ背嚢を背負っているのはそう言う理由もあります)
ボスの居た平原にはイネ科の魔物が群落を作って彼方此方に生えて居ますが、今回は無視して通り過ぎます。
さて、6層のボスもやっつけたので、7層へと降りましょう。
7層も6層と似た景色です。広さは7層の方が半径3ワーク(約4.5㎞)なので大きく見えます。
入り口の周りには6層と同じパレット(木の板製)を敷いた荷物置き場が8つ程有ります。
小さいながら7層にも村っぽいのが在りました。
6層の村と比べ小さくて、数人しか人が居ないようです。
朝の荷物置き場は、何も置いて無くて空っぽです。
カー爺によると「夜の早めに6層へ運ぶんじゃよ。」との事ですが、夜は魔物の活発になる時なのにわざわざ夜に運ぶなんて危ないんじゃないかしら。
「夜と言っても、暗くなり始める頃に運び始めて、1刻(2時間)位で6層の荷物置き場に到着するから大して危険じゃないんだよ。」
「それでも、魔物と出会う時もあるでしょう?」
「そこは、護衛の出番じゃよ。」
「6層より7層の護衛の方が強いからの。」
「やっぱり7層の方が強い魔物が出るの?」8級の魔物だけが、出るとかかしら。
「そうでもない6層も7層も出る魔物は同じじゃ、だが数が多くなると戦いにくくなるでの。」
「6層は出ても基本1匹なのじゃ、集団で襲う魔狼(迷宮灰色狼)は10級じゃし、集団でも大したことは無い。」
「だが、7層では、魔狼(迷宮毛長灰色狼)も9級の集団になる。」
「8層になれば、ゴブリンやコボルトなどの人型の魔物が現れるし、他も9級の魔物ばかりが団体で出てくる。」
なんだか、7層迄のダンジョンはミンストの食料供給のために作られたかの様です。あながち間違いでは無いと思うのですが、誰が何を思って作ったのでしょうか?
話ながらも、私たちは7層をどんどん進んで行きます。入り口の草原、林、また草原、林と進むと水場が在って、其処にはカエルがゲコゲコ鳴いています。麻痺毒持ちの赤毒カエルです。
鳴き声で居場所が分かるので、大きく迂回します。
トレント・ブドウが居ました。これはやっつけるしか無いでしょう。
「カー爺、あれを狩っても良いでしょう?」そう言いつつも魔術陣は既に完成しています。
「まぁ構わんけど、干しブドウにでもするのかのう。」
許可さえ下りれば、遠慮はしません、一気に散弾で枝を撃ち払います。
ブドウがなっている枝以外が全て刈られると、幹へケンドルさんが斧を撃ち込んで倒しました。
ブドウをゲットしました。
ウフフ! 幸せです。ポリィーと笑い合って収穫して行きます。
カー爺が「9級じゃの。」と魔石を見て言ってますが、右から左へと聞き捨てます。魔石とかブドウの前にはそこらの小石程の価値しかありません。
林の中では、私とポリィーが少し暴走気味にトレント・果物狩をしましたが、草原に出るとオーロックが2頭いました。
カー爺たちの出番です。魔石を先に破壊すれば肉が手に入ります。
男4人でオーロック2頭を半円に囲みます。
オーロックが前を塞ぐカー爺へ突進で攻撃を仕掛けます。その突進を利用して、前へと出る事で脇に移動したカー爺が、すれ違いざま剣を心臓へと差し込み魔石の破壊を狙います。
もう1頭はアントさんへと向かいましたが、奇麗に躱して首筋へ切り付け致命傷を負わせました。
アントさんはカー爺が魔石狙いなので、自分の方は倒す事を優先したようです。
アントさんが切り付けたオーロックは血を流しながら進んで直ぐに倒れ魔石とオーロックの角がドロップしました。
カー爺が剣を刺した方は、剣が刺さったまま走り続け、しばらく走るといきなり横倒しに倒れた。
上手く魔石を破壊出来たようです。
草原の真ん中で解体するために、倒れたオーロックの周りを土魔術を行使して石壁で三方を囲った。魔糸のロープを足首に掛けて釣り下げ解体を始めた。
私も冷却や水の魔術で血抜きなどを手伝いながらカー爺たちが手際よく解体していくのを見ていた。
解体で皮以外に、肩や腹、足などの部位毎の肉と捨てなかった内臓肉(心臓と肝臓ぐらい)が手に入った。残りの部分は大きな穴を掘って(土魔術で1ヒロ(1.5m)までは掘れた)捨てました。
土魔術で作った石壁を元の土へと戻し、穴を埋めれば出発できます。
7層のボスはトレント・ドリアンと聞いたけど、最後の草原にもいませんでした。
枝だけでなく果実を落として臭い匂いで攻撃するそうですけど。ドロップするドリアンは果物の王様と言われています。
「既に他の探索者に刈られたのかもしれんな。」
残念だけど、ボスは諦めて8層へ向かう事にしました。
8層を出て崖沿いに移動し、出入り口と平原が見える場所でお昼にしようと思います。
既にここまでで、昼9時(午後2時)を過ぎています。
崖を背にした出入り口と平原が見える場所なので、敵が現れてもいち早く知る事が出来ますから安心です。
実は、8層に出て何時ものように空間把握を行なったら、気になる集団が居ました。警戒は念の為です。
さてお昼です。
オーロックの新鮮な肉が在りますが、熟成させた方が美味しいので肉を熟成用の棚に押し込んで置きます。
お昼用にリンゴを使ったアップルパイを作ってるので、出そうとしたら、肉が良いと男共がダダを捏ねます。
仕方が無いので脂ののった、肩肉を分厚く4枚切り出し、ワイン、塩、胡椒を振りかけてしばらく置き味をしみこませます。その間にジャガイモを湯がき付け合わせにします。
ジャガイモが湯がけたら皮をむいてそのまま付け合わせにします。
後は、肉を1枚づつバターを入れたフライパンで炒め、ローズマリーとニンニクを潰して解けたバターで火を通しながら、肉が焼けるまで解けたバターを肉にかけ続けると完成です。
出来上がった肉を四等分してお皿に入れ、ジャガイモを置いて男共に出します。
それを4回繰り返してお終い。ポリィーと二人で焼いたので2枚焼いただけですが、疲れました。
一人1グラン(700g)以上はある肉の塊を出したのに、男共は全部食べてしまった。どれだけ肉に飢えていたのだろう?
私とポリィーは焼いただけで、肉を見るのも嫌になったと言うのに。
私とポリィーはアップルパイとリンゴの皮を入れたアップルティーで美味しくお昼を頂きました。
昼食の後、満腹で動く気配の無い男共を後ろに、8層に入った時行った空間把握で見つけている人の集団を探った。
探ると言っても、使い魔を呼び出して彼らを見にいかせただけです。
ポリィーは使い魔を一番多い人数がいる9層入り口前の平原へ。私は林に隠れるようにして行動している6人の集団を。
林の中にいた集団は、トレントを狩る探索者だった。今の所怪しい所は無いので、空間把握での監視で見張れば大丈夫だと思う。
カー爺に使い魔が調べた結果を報告して、しばらく監視すると伝えた。
カー爺が同意してくれたので、後はポリィーの報告を待つ事にする。
程なくポリィーも使い魔の調べた事を報告してきた。それによると人数は50人でベロシニアが雇った探索者たちの人数と一致しています。
次回は、8層でベロシニアが雇った探索者たちとの出会いです。




