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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第37話・4 王都ミンスト(4)

 王都ミンストは厄介毎が絶えないようです。

 押しかけ両替屋さんがやってきました。


 「いらん!」話しかけられたケンドルさんがそっけなく断ります。


 「そんなつんけん言わんと、なぁ兄ちゃん、交換は2対3だよ、絶対お得だからさ。」


 とケンドルさんが断っても、男はシツコク両替を持ち掛けて来る。


 「だから、いらん!」纏わりつかれて話しかけられたケンドルさんが少しいら立った声で断った。


 ケンドルさんは油断なくその男を見ています。手は両手持ちの斧の柄に置いて、何時でも地に置いた斧の刃を構える事が出来るようにしています。

 「まぁまぁ そうつれない事言わないで聞いてくださいよ。」手をひらひらさせながらにじり寄ってきます。

 「このミンストネル国の銀貨はちょっとばかし他の国より銀貨の量が少ないのはご存じでしょう?」

 「でも両替屋へ行くと1対1の交換で更に1割、銅貨で10枚税金で取られるのは知ってましたか?」


 ケンドルさんがうるさそうに「知らん!あっちいけ!」と言ってもめげずに迫ってきます。


 遂にケンドルさんがしびれを切らして、斧を構えようと手を動かす直前、「待て!」とカー爺が命令しました。ケンドルさんはぴたりと動きを止めます。


 動きを止めたのは両替を持ち掛けた男も同じでした。近寄る足を止めてカー爺を見ています。

 「儂らは傭兵クラン”緑の枝葉”じゃ、仕掛けてくるのなら相手になってもいいが、腕の1本や2本覚悟して来るが良い。」と周りを見回しながら言った。


 カークレイ爺様の話から、あたりを見回すといつの間にか周りを10人程の男らが囲んでいます。


 アントさんもいつの間にか少し離れて、何時でも剣を抜けるように身構えています。


 両替を持ち掛けた男は、私たちの気迫を感じたのか、後ろへと下がると。

 「いや、おっちゃんたちおっかない人なんだね、今日の所は引き下がるよ。」


 するすると人ごみに紛れ込むように消えて行きました。それと同時に囲んでいた男らも包囲を解き、幾つかある暗い路地へと消えて行きました。


 そこへ小走りに帰って来たダルトさんが何か在ったのかと、心配そうに聞いてきました。

 「何かありましたか?」


 宿を探しに行っていたダルトさんには、大勢に囲まれていた状況が見えていたのでしょう。


 カー爺が「ゴミが難癖付けようと近づいて来てただけじゃよ。」と先ほどの出来事を説明します。


 「そうでしたか、この町は少々物騒ですね。」

 「それで、宿は見つかったかの?」

 「はい、少々先になりますが、油断しなければ寝る事は出来そうな宿が在りました。」

 「やれやれ、宿まで胡散臭そうじゃの。」


 本当にミンストの町は王都なのに厄介毎ばかりです。

 「それで、一部屋かの?」

 「はい、最初は人数を聞いて、4人部屋2つにしてくれ、と言っていましたが、大部屋が無ければ泊まる積りは無いと突っぱねると。」

 「今度は、8人部屋で銀貨16枚だと言い出したんで、オウミ銀貨を見せて8枚で無ければ泊まら無いと言ったら、急に態度を変えてそれで良いと嬉しそうでしたね。」


 ここでも銀貨の価値が物を言ったようです。

 貨幣の価値は含まれる銀の重さで決まるから、オウミ国の銀貨だとミンストネル国の銀貨の倍近くの価値が有る様です。

 でも、みんな自国の銀貨よりオウミ銀貨の方を好んでいる様に思うのですが?


 そこら中で使われているのは、ミンストネル国の銀貨なのに、なぜよその国の銀貨の方を歓迎するのか分かりません。

 お店での買い物や先ほどの門の支払いも、他の人たちは全てこの国の銀貨を使っていました。


 オウミ銀貨は、誰も使っていないのに欲しがるなんて不思議です。


 (マーヤ)も空間把握の範囲を絞れば、貨幣の詳細な成分分析が出来ると思います、した事はありませんが。

 範囲を絞らない空間把握でも大雑把ですが分かります。ミンストネル国の銀貨は銀が5割から6割位で、オウミ国の銀貨は銀が8か9割ぐらいです、後は銅ですね。

 ミンストネル国の銀貨には鉛が銅と同じぐらい入っています。この銀貨は歯で噛むような事はしたくないですね。


 (マーヤ)たちは、固まってダルトさんが見つけてきた宿へと移動しました。

 途中食料品店や雑貨屋などが在りましたが、買い物はせずに宿へと向かいました。


 宿は通り沿いに大きな入り口の在る、細長い5階建ての建物でした。泊りは一部屋一泊オウミ銀貨8枚、8人寝れる大部屋です。

 大部屋でみんなで纏まって居るのは、その方がもしもの時に動きやすいのと、傭兵のクランだと言う事を知らせるためです。


 ダンジョンの中ではクランは男女関係無く寝泊りをしてダンジョンを進みます。そのためダンジョンへ挑戦する前から一緒に行動するのは当たり前の事なのだそうです。


 夕食までしばらく時間があるので、この後の事を話会いました。

 この後ベロシニアの泊まりそうなお城周辺の高級宿周辺で聞き込みをする予定です。ただ治安の悪さから2人一組での聞き込みになりました。ポリィーと私はマイセル君とお留守番です。


 昼の食事は渡し舟に乗る前に、持っているパンとチーズで軽く済ませています。宿の食堂は衛兵さんの言葉も在って、用心して食べない事になりました。

 夕食もみんなが帰って来てから、私の部屋(腕輪の空間収納)で作った料理を食べる予定です。


 衛兵さんも言っていましたが、宿の食事は危険だそうなので、宿には食事は外で買って食べると伝えています。


 宿の人は食事を断ったら、嫌な顔をしていました。


 次回は、泊まった宿での出来事です。

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