第37話・3 王都ミンスト(3)
王都ミンストは居るだけで騒動が向こうからやってきます。
衛兵さんの話から、このミンストではオウミ国の銀貨がそのまま使える事が分かったので、カー爺は両替はしない事にしたようです。
ダルトさんに言いつけて両替商では無くて通りの中程に在ると言う、宿を探しに行かせました。
ダルトさんの帰りを待つ間、門前の広場の端近く、後ろが壁で右手側にお城が見える場所で一塊になって待つ事にしました。
待つ間暇なので、先ほど衛兵さんから聞いた話を皆で話し合いました。ほとんど私が聞いて誰かが答える事になりました。
「ミンストネル国の銀貨は何故オウミ国の銀貨より銀の量を少なくしてるの?」
「多く銀貨を作りたいから、銀の量を少なくして作っているのさ。」とアントさん。
「両替商はオウミの銀貨1枚をミンストネル国の銀貨1枚に両替するって言ってたけど、それってオウミの銀貨を両替する方が損するよね?」
「でもミンストネル国の銀貨をオウミ国の銀貨に両替して貰えば元に戻るのかな?」
アントさんがいじわるそうな声で言います。
「恐らく、オウミの銀貨を切らしているとか言って、両替をして貰え無いと思うな。」
「ええー、両替商って国の許可をもらってお仕事しているのよね、そんなんで良いの?」
「この国ぐらいかもな、オウミじゃちゃんと銀の価値で両替してくれるぞ。」
「そうなの? それなら、どうすれば銀の量を同じぐらいになる様にできるの?」
「オウミ国なら両替商などの貨幣を扱う商人は貨幣の鑑定をする人が居ってな。」
「色や重さや大きさなどから貨幣の成分を調べることが出来るんじゃ。」
「まぁ通常は、両替商を利用する者は大量に支払いが必要な商人たちじゃで、儂らみたいな旅人には関係無い場所じゃよ。」
「旅人はどうやって交換するの? お店で買い物できるのなら交換しないで良いのかな?」
「庶民や旅人なら町中の両替屋を利用するよ、其処なら1枚からでも両替してくれるからね。」ケンドルさんが教えてくれた。
カー爺の言う鑑定人は、私の受ける印象ではこの国の両替商には存在すらしていないのではと思えてなりません。
なにせ、オウミ銀貨からミンストネル国銀貨へは交換しても、逆は難癖付けて交換し無いそうですから。両替商として成り立つ事さえ無理だと思えてくる。
先ほど門の衛兵さんに支払った銀貨は今回の旅のために用意した物です。新品ではありませんが、十分重さのある正貨ばかりです。門の衛兵さんは其の重さを手で計りながらニタニタと笑みを浮かべていました。
カー爺が両替を止めたのも、オウミ銀貨がそのまま使える事と両替しても直ぐにこの国を出るかもしれない先行きの不透明さが在るのだと思います。
他にも。
「なぜ、傭兵ギルドが代行って? ギルドはダンジョンを管理して無いの?」
「門前の広場に宿が在れば便利なのに、何故無いの?」
「なんで、宿の食事は食べない方が良いの?」
衛兵さんが言った事の何故? を聞いて見ましたが皆も分からないそうです。
このミンストの町は、門を入った時からとても目立つ位置にこんもりとした丘の上に砦の様な王宮が在ります。
私達は、オウミ国から来たので、南から北西へと道を通ってきました。ですから今入った門は南側にある門になります。その正面に見えるのですからお城は北側にある事になります。
門に入る前に橋の無い大きな川を渡し舟で渡りました。此の川が大河ワーカムの源流に近い川に成ります。
お城以外に目立つ建物はお城の西に見える高い塔を持った教会らしき建物が在るのと、門から見て真っ直ぐ先のお城の真下にある城壁で囲われた四角い砦が目立つ大きな建物です。
道は馬車がすれ違えるぐらいの幅はありそうですが、真っ直ぐな道は無くて迷路のように曲がりくねっています。馬車道から逸れた小さな道は、其の先が暗くてとても一人で歩けそうにありません。
そろそろ昼10時(午後3時)が近いので、宿を決めてしまいたいのですが、宿を探しに行ったダルトさんはまだ帰って来ません。
私たちは門を出て直ぐにある広場の、右端にある建物で窓の無い壁側に一団となって立っています。ポリィーがマイセル君を抱っこしてケンドルさんがその前に立って居ます。私がポリィの右に、カー爺が左、アントさんが私の右に居ます。
ダルトさんは宿を探しに行ったままです。
武装した男3人と赤ん坊を抱いた女と側の子供も武装しています。見た目にもちょっかいを掛けて良い集団には見えないと思うのですが、この町は違うようです。
一人のへらへら笑う男が近づいて来て話しかけてきました。
「へへ、なぁ兄ちゃん、銀貨を交換しないか? あんたが持ってる銀貨とミンストネル銀貨を2対3の割合で交換するぜ。」
両替屋さんが押しかけてきました。
〇両替商の商売が成り立つかどうかについて。
両替商は、銀貨の両替は国の建前でしか行っていません。主に行っているのはロマナム国の棒銀の両替です。この場合は、同じ神聖同盟の国でも在り、又銀の価値だけを気にすればよいので両替商としての信用は保たれます。
後、ミンストネル国の両替商にも鑑定人はちゃんといます。
〇傭兵ギルドがダンジョンを管理していない理由。
ロマナム国王が傭兵ギルドをアーノン・ススミの提案に従って、ダンジョンの管理者として受け入れた時、神聖同盟の盟主として神聖同盟もダンジョンの管理を傭兵ギルドへ任せる事に決まりましたが、国毎に運用は分かれています。
ミンストネル国では王がダンジョンから上がる利益の全てを独占するため、利権を減らさない様に傭兵ギルドに管理を任せず、代理業務だけにしているのが理由です。
〇宿屋の纏まっている場所が門の近くに無い。
歴史的背景(城壁の拡張でとり残された)やダンジョンへの利便性(ダンジョンに比較的近く、それでいて傭兵が利用しにくい距離)を商人がこのんだからです。
〇宿の食事は食べない方が良い。
宿が人さらいや強盗の手先となって、宿泊客を襲うからです。そのため宿の食事は毒を盛られる事が在るからです。
ただし、衛兵の知識は商人相手の宿については詳しく無くて、取り締まる事が多い傭兵が利用する宿の事を言っています。
商人が利用する中級から高級宿では、信用を大事にするため安心して泊まれます。
次回は、ミンストで次から次へと起こる厄介毎です。




