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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第36話・3 野営と食事

 ミンストネル国に入ると途端に道が悪くなり難儀するマーヤ達。

 野営をすると決まれば、皆は役割毎に仕事が在る。マーヤは食事と結界を張る事が仕事になる。


 この場所は、ミンスト丘陵の尾根を通る街道沿いに在る平らな場所だ。森を切り開いて作った広場は、この道を使う人たちの野営場所の一つだと思う。

 カー爺は「山賊が使う場所かもしれない。」とニヤ付いていたけど。


 大勢が野営したような痕跡は無かったので、ここしばらく誰も使っていない様だ。

 「水場が無いから野営じゃなくて、休憩用でしょう。」と言うアントさんの方が正しいと思う。


 馬車を止めて、ゴーレムを土に返したら野営の準備をする。みんな自分の仕事の分担に従って、森へ行って焚き付け用の小枝を集めたり、石を集めて焚火の準備をするなど、みんな散らばって行った。

 焚火用の薪は森で倒木を処理したので山ほど手に入った。途中に在った倒木は全て持って来ているので数日分は十分持つぐらい在る。


 竈も早々と作られて、石で囲った中に火が焚かれている。腰かける椅子や食器を置くテーブルは各自の部屋(腕輪の空間収納)から出してもらう。


 ポリィーと私が竈にかけた鍋には、羊肉と人参などの野菜や香辛料以外に玉ねぎが大量に入ったスローン風のオニオンスープだ。

 料理の最初に炒める玉ねぎは、私が切って色が濃くなるまでバターで炒めた。玉ねぎからの美味しいうまみが沢山出た自慢できる一品だと思う。


 ポリィーが時間が在る時に作り置きしている、ポトフ風の羊肉と野菜のスープを加え、最後に塩や香辛料で味の加減を整えて完成させた。


 オニオンスープが温まれば、お皿とパンを用意して食事の準備は終わり。みんなに声を掛けて竈の周りに集まって貰い。落ち着いて食事が出来るように結界を張る。

 野営する馬車の側で私は光の結界を唱えた。

 『わが身に宿る聖なる光よ、皆を守り、助ける壁と成れ!』

 「聖光セイントライト


 馬車を中心とした半径5ヒロ(7.5m)の半球形に結界を設置したので、馬車と食事する場所がスッポリと入る大きさの結界になった。

 結界が張れたので、ポリィーとケンドルさんが部屋(腕輪の空間収納)からマイセル君とベビーベッドを出して側に置いている。マイセル君のご機嫌は少し斜めになりかけている様だ。


 座るための椅子とパンと料理を置くためのテーブルを各自出してもらっている。ポリィーがマイセル君のお世話に係りっきりなので、パンとお皿などの食器は私が部屋(腕輪の空間収納)から出した。

 お茶は竈の鍋の横に土瓶を用意している。お酒を飲みたい人は各自のコップに自分で用意して貰う。


 各自のお皿を手渡して貰いスープを注いで返す。パンは大きめの籠に数個の黒パンを切らずに置いてある。スープを注いだお皿を側のテーブルの上に置いて、食事の前のお祈りをする。

 ポリィーもお祈りをマイセル君と一緒にしている。マイセル君の手を取ってお祈りの時の様に合わせお祈りする様は可愛いのだけど、マイセル君が元気に「ウーッ」とか「キャー」などと叫び出したので敬虔さは無くなってしまった。


 食事はパンを入れた籠を順番に手渡しながら食べたい人が取って、次の人に手渡して行く。取ったパンはテーブルに置いて置いて、ちぎるかナイフで切って食べる。

 私はパン一個は多すぎるので、ポリィーが半分に切ってくれた、残りはマイセル君のパンがゆの材料になる。


 「これがオニオンスープか! うめーなぁ。」ケンドルさんが左隣のポリィーに向かってスープを食べた途端、驚いたように言った。


 「ああ、儂も前にスローニンで食った事が在るが、これは格段に美味い。」カー爺も美味しさに驚いだようだ。

 「私は初めて食べましたが、コクが在って甘みも在るなんてこんなスープが在ったんですね。」アントさんが美味しさに驚いたのか言葉が戻っています。


 「ポリィーさんの作る料理はどれも美味しいけど、これは一段とおいしいですね。」ダルトさんまで美味しさに言葉が丁寧な言い方に戻っています。


 「皆さん、評価して貰えたのはありがたいけど、マリィー(マーヤ)が玉ねぎを此処まで美味しく炒めてくれたからこその美味しさなんですよ。」

 「部屋(腕輪の空間収納)でずうっと炒め続けたおかげなんですから」


 「そうか、いつの間にかマリィー(マーヤ)も料理の腕を磨いていたんだな、大したもんじゃ。」カー爺が手放しでほめてくれた。他の人たちも驚いたようで、口々に「美味しかった。」や「成長したなぁ。」、「見直したぜ。」とか言って来た。


 前日まで居たスローンの食材をたっぷり使った料理はポリィーと私の自慢の品だ。このオニオンスープの決め手は私が炒めた玉ねぎだと思う。なのに、カー爺たちはポリィーが作ったから美味しいと思っている様だ。

 でもポリィーが説明してくれたおかげで私の料理の腕も少しは見直されたと思う。


 食事が終われば、ポリィーと私は洗い物を持って、私の部屋(腕輪の空間収納)に行く。マイセル君もベビーベッド毎一緒に入れている。

 私の部屋はポリィーの部屋に次いで大きく、調理場としての機能が充実している。

 これは私の部屋に食器と食料用倉庫を作っているからで、密かに神域から食材を持って来れるようにしている。


 残ったカー爺たちは不寝番の順番や馬車の点検などをしていると思うけど、お酒を用意していたから摘まみになりそうなハムやチーズを置いて来ている。

 カー爺たちの事だから飲みすぎはしないだろう、その点は信頼している。私たちはマイセル君と団らんのひと時だ。


 次回は、野営するマーヤたちを山賊が襲います。

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