第36話・1 ミンストネル国境(1)
ミンストネル国の王都へと向かう事にしたマーヤ達。
オウミ国とミンストネル国との国境は、度重なるミンストネル国の侵略から国境を守るための要塞がオウミ国側に作られている。
国境は森が終わり平原となる場所がそうで、見た目に分かりやすい。位置的には大アントナ山脈とミンスト丘陵が最も狭まった場所から北北東へ向かう線が今の国境だ。この場所から北へはミンストネル国を囲む山々が連なり森の広がる山間地、ミンスト丘陵に成っている。
この国境地帯のオウミ側は平野が続く小麦の大生産地帯で、飢えた民が多いミンストネル国は過去何度も侵略を繰り返している。業を煮やした南の大公によりモルバヤーシ要塞が作られた。
モルバヤーシ要塞は森を切り開いて作られた平野の中にポツンと在る要塞で、要塞の中を通る街道が1本通っている。周りは麦畑が見渡す限り広がっている、要塞からは見えないが、大公領都スローニンを越えて延々と続く麦畑が地平線の遥か先まで在る。
これから行くミンストネル国を見れば其処には何処までも続く森が在り、ミンストネル国の森とオウミ国の麦畑が続く平原との違いに驚くばかりだ。
国境の手続きと言うか確認は傭兵なら各自が持っている札を見せるだけで良い。入国出国税は傭兵だとオウミ側では無いがミンストネル国へ出入りする時に一人銀貨1枚必要になる。
国境のモルバヤーシ要塞で傭兵ギルド発行の金属の板に名前と傭兵ランクとクランの名前が書かれた札(10級の札は木札)を、各自が見せ問題無く通ることが出来た。
そこから国境までは1本の道があるだけだけど、森(国境)に入った途端ひどく狭い道になっていて通りにくかった。
ミンストネル国に入った途端、木々がうっそうと生えた森になっていて、オウミ国との違いを今更ながら実感する事ができた。
やがて森の中にミンストネル国の国境の検問所らしき柵で囲われた場所が見えてきた。柵で囲われた広場の一角に馬車を止めて、カー爺が馬車から降りた。マリィー達も馬車から降りて馬車の側に立つ。カー爺が何人か商人や馬車が固まって入出国を待って居る場所へ歩いて行った。
国境の検問所前の広場では、商人たちが荷物の入れ替えを行っている。オウミ国から馬車で来た商人たちはここで馬の背に荷物を乗せ換えている。反対に馬の背に荷物を載せてきた人たちは荷馬車に荷物を乗せ換えている。
「なんで、馬の背に荷物を載せているの?」
「道が悪くて馬車では通れない場所が在るからですよ。」アントさんが教えてくれた。
「私たちは大丈夫なの?」
「ええ、いざと成ればマリィーのインベントリ(みんなは神域では無く空間収納だと思っている)の中に馬車を入れて貰えば歩いて行けますからね。」
カー爺と兵隊の一人が話し合い、カー爺と一緒に3人の兵隊も馬車へとやってきた。兵隊たちは馬車の中を覗いたりして人数を確認すると、商品などの売り物が無い事も確認して去って行った。
これで入国検査は終わりの様だ、カー爺によるとここでも一人銀貨1枚で銀貨7枚とられたそうだ。オウミ国の銀貨で支払っても問題無く受け取ったそうなので、銀貨だと同じぐらいの価値が有るのだろう。
「カー爺、銀貨の両替とか必要無いの?」
「此処じゃ無理じゃの、この先にここら辺を治める領主の町がある、其処まで行って両替するか、一気に王都へ行ってそこで替えるかじゃな。」
「俺はあいつを追うには、野宿してでも王都へ急ぐ方が良いと思うぜ。」
ベロシニアの名前を声に出して言う訳にはいかないけど、アントさんがベロシニアの後を追うには野宿してでも早く行こうと言います。
「私も賛成ですね、アントの言う野宿ですが、この国には山賊の類が多いのでそこだけ気を付ければ早く王都へ着く方が良いですから。」
ダルトさんも賛成する横で、ケンドルさんも野宿には賛成だと頻りに頷いています。
「私も食料は在るし、夜もマリィーの結界が在れば大丈夫だと思う、賛成するわ」
「任せて、しっかり守るから」
ポリィーさんの言葉に私は結界を張る事に張り切って答えた。
ミンストネル国の国境に在る検問所を越えて進んで行くと、途端に道の悪さが際立ってきた。馬の背に荷物を積みかえた商人の集団が私たちより先に出発したけど、私たちの馬車は追いつく事無く彼らの姿はいつしか見えなくなっていた。
私たちも検問所を遅れないように出たけど、直ぐに道の悪さのせいで馬車の進みが遅くなった。まともに馬車が通れるような平らな道が無く、抉れたり、傾いていたリ、そもそも道幅が無いような場所も在った。
大アントナ山脈の麓に沿って川が流れていて、道は川沿いから少し離れて作られている。単なるデコボコ道だったらゆっくりでも通れるなら通るけど、実際はそれ以上に酷かった。
抉れた箇所に土魔術で土を足して通ったり。洪水で流され道が崩落して狭くなっている場所では、仕方ないので少し木を切り倒して森へはみ出し流された部分を迂回した、そんな場所が複数個所あった。
どうやらこの道は修理もされずに放置されているようです。国境を越えて商売をする商人たちが馬車では無く馬の背に荷物を載せて移動するのも納得です。始めはその光景を不思議に思って見ていたけど、道の状態を知った今では、さすが商人は良く知っていると思った。
昼7時(午後0時)ごろに成ると、大アントナ山脈沿いの道からミンスト丘陵へと分け入る道が木々の間から見えてきた。ここに来て道は相変わらずデコボコだけど、馬車が通れないほど酷い道は無くなった。
ミンスト丘陵への道に入る前、昼7時(午後0時)丁度位に川沿いの道と山へ分け入る道とに分かれる場所へ出た。このまま川沿いの道を行けば、この辺りを治める貴族の領都へ至る道だそうだ。そう聞けばその道が少しは広い気がしてくる。
馬車の轍も在るので、馬車が通れる道の様だ。轍はミンスト丘陵へと続く道へと続いているので、王都との間の交通の便は馬車が通れる程度は良いのだろう。
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次回は、川の見える街道の合流地点でお昼ご飯のひと時です。




