第35話・3 スローニン(3)
領都スローニンでのベロシニア子爵らの動きはどうだったのでしょうか。
マリィーは疲れていたのかインベントリの中に入ると、ベッドで寝てしまい朝までグッスリだった。母を追いかける旅に出る事で、焦りと緊張で気が張っていた心も落ち着きを取り戻し、反動で疲れが出たのだろう。
次の日、すっきりと起きられたけど、昨日の聞き込みの結果が気になって仕方が無い。朝食で皆がそろうと、早速昨日の調べで分かった事を聞いた。
「ホテルオルカと言う宿に泊まったらしい。」
「ベロシニア子爵の名で泊まっていたそうだ。」とここまではアントさん。
「聞いた話では、ベロシニア子爵夫妻と使用人が男3人に女が2人、それと護衛3人だそうだ。」ダルトさんが更に詳しく話してくれた。
話を纏めると護衛は闇魔術師だろう、全部で10人もの大人数で堂々とベロシニア子爵の名でホテルに泊まっていた。そして、20日前の9月27日に国境を越えてミンストネル国へ向かうと言って移動したそうだ。その際「ミンストネル国へ行く。」と宿で大声で話していたそうだ。
なんだか誘われている気がします。カー爺たちも同じ感じを受けたらしい。
「そもそも、女性が夫人と使用人合わせて3人だけだったのがおかしい。」
「だよな、旅先だとしても使用人だけで4,5人ぐらいは女性の使用人が居ないと女主人の仕度が出来無いだろう?」
「その夫人がイスラーファ様とすると、あからさま過ぎて隠している印象が無いんだが?」
「イスラーファ様らしい夫人も本物か怪しいな?」
アントさんとダルトさんの話をカー爺がしかめっ面で締めくくる。
「イスラーファ様の真偽は分からんが、ベロシニアの動きを追うしかなさそうじゃが。」
「マリィーを誘って、国境を越えさせようとしているのが見え見えじゃ。」
「儂らは追うしか手はなさそうじゃしな、皆もそれでよいかの?」
私は怪しくてもベロシニアの後を追うしかないと思っている、それが私を誘い込む罠だとしてもそこに母の情報があるはずだから。
「「はい」」、「「「はい。」」」
今の所ベロシニアの後を半月遅れで追う形になっている。彼らは既に国境を越えてミンストネル国の王都ミンストへ半月前に入っているはずだが、彼らの行く先はミンストへ行って見なければ分からない。
クラン「緑の枝葉」は食料や補充する物品の仕入れがあるので、今日1日はスローニンの町に滞在する。私は宿で待機する事になった、ベロシニア一行が既に出て行っているのでおとなしく宿でマイセル君の子守を引き受けた。
まぁ私は私でこっそり調べようと思っているからマイセル君と二人に成るのは都合が良い。
私は朝食の後、出かけた大人たちを見送って、マイセル君と二人でお留守番だ。
母が行方不明に成って初めての手がかりが得られたのだ、はやる気持ちを抑え、使い魔を召喚してベロシニアたちが泊まったと言うホテルオルカへ向かわせた。
ホテルの場所は直ぐ分かった、スローニンの町の真ん中に在る大きな広場に面して、建って居ると聞いていた。泊まっていたのはホテルの最上階のスイートルームだから部屋も間違えることなく侵入で来た。
でもそれだけだった。
使い魔にホテルの近くから、母の匂いを探させていたが見付からない。ホテルのベロシニアが泊まった部屋に使い魔をやって調べたが、時間が立ち過ぎたのか彼らの匂いは無かった。
あまりにも奇麗に匂いが残っていないので、ひょとしたら闇魔術師らが何か小細工をしているのかもしれない。
母がベロシニアと一緒に居るのかさえ未だ確信が持てない。
王都ミンストでもラーファの痕跡を調べる積りだが、スローニンでも見つけられなかったので期待は出来ないかもしれない。
仕入れが終われば、明日から国境へと移動する事に成る。ラーファの居場所さえ分かれば追いつくのはワイバーンでも使えば直ぐだ。
ベロシニアの動きが分って来たためか、焦りは無くなったが母の姿が見えてこない、本当に彼らと一緒に居るのだろうか、疑問が湧き上がって来る。
闇魔術師らが母を隠して、私を誘い出そうとしていたとしても、彼らが母の情報を持っているのは変わらない。
闇魔術師とベロシニアらがどんな罠を仕掛けても、食い破って、母を助けるだけだ。
次回から、オウミ国を出ます。向かうのはダンジョンの在るミンストネル国です。




