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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第34話・3 マーヤの旅立ち(3)

 旅立ったマーヤ達は南大街道へたどり着きました、野営地である出来事が起きます。

 キャンプした翌日は、放牧場が在る高原の麓を通る間道を南下している。クラン”緑の枝葉”の最初の目的地は南の大公の領都スローニンだ。

 本来の通商路を行っていたなら、カカリ村から王都経由で行っても馬車で14か15日ぐらいかかるだろう。


 それを一度西のオイラート村まで行き、間道を南下した方が道は悪いが早く着く。イガジャ領を抜けた一行は王都からスローニンへと向かう南大街道へ合流するべく南へと急いだ。

 早く着けばベロシニアの後を追うのも楽になるだろう。


 御者を皆で交代しながら間道をひたすら南下する。途中にある小さな集落などは無視して進んだ。


 3日目に、王都から南の大公領へ通じる南大街道へ出る事ができた。ここから領都スローニンまでは3日の距離だ。

 その日は、合流場所の近くの休憩地で、他の南大街道を利用する馬車の群れに交じって休息する事にした。


 先に野営を始めている隊商から離れた場所に馬車を止める。今日の野営の場所は水場の無い森の近くになる。

 別に水は魔道具で幾らでも出せるので、水場(井戸)から離れた森側でも問題無かった。


 馬車と馬から軛を外し、馬2頭を土に戻して魔核を回収していると、ゴーレム馬が珍しいのか隊商の商人たちが集まって来た。


 その中の一人が近くに寄って来て、傭兵に話すにしては丁寧な言葉使いで質問してきた。

 「儂は向こうに止めてある10台の馬車を率いている隊商の主、ダレンシカヤと申す。」

 「先ほど馬を土に変えたが、ゴーレムなのか?」

 「ゴーレムなら入手方法を教えてくれんか?」


 馬車10台ほどの隊商を率いていると言う、いかにも裕福な商人と言った恰好をしたダレンシカヤが近寄って来てカー爺に質問してきた。

 「ゴーレムかだって? 見たら分かるだろ、ゴーレムだよ。」


 カー爺がぶっきらぼうに返事する。実際質問されても大した答えは持っていない。

 「おおゴーレムか、どこで手に入るのだ? 教えてくれるのなら金を出すぞ。」


 聞かれても正直に私が作ったとは言えないので、予め決めている事を答える。カー爺が指を3本を立てる。商人はそれを見てしぶしぶ頷いた。商談成立ね。

 「樹人に決まってんだろ、他にゴーレムを作れる奴がいるかね?」

 「爺さん、そうぶっきらぼうに言わんで教えてくれんか、魔石とかどこの樹人に頼んだのかとか色々有るだろう?」


 商人が食い下がるが、アントさんがいら立ったとでもいう風に割り込んで答える。

 「俺たちは傭兵なんだよ、魔石はダンジョンで手に入れたに決まってんだよ。」


 とアントさんがイラツク傭兵といった感じで商人に言う。そろそろ鬱陶しくなってきたのは他の人も同じだ。

 最後は真面目な顔をしたダルトさんが締めくくる。

 「商人の旦那、こちとらこれから飯なんだ、話せるのはダンジョンで手に入れた魔石をたまたま知り合ったエルフの女がゴーレムに加工してくれたってだけだよ。」


 ダルトさんが商人を追い払いたいのか、ゴーレムについて聞かれた時用の決めてある話でまだ話してない部分を言った。

 ラーファを匂わせるエルフに作って貰ったと言う話を決めている。傭兵らしくダンジョンで手に入れた魔石をたまたま知り合ったエルフがゴーレムにして貰ったなどと取り決めている。

 これもラーファの情報が得られる切っ掛けにでもなるかもしれない。

 「そりゃ運が良かったな、ところでどこでエルフに会ったんだ?」


 以外に粘る商人はさすがに馬車10台もの隊商を率いる商人だ、傭兵相手に簡単には引き下がらない。

 「キラ・ベラ市の近くだよ、もう何年前に成るかな? 7,8年ぐらい前だな。」

 「もう帰りな、こちとらこれ以上言う事はねえよ。」


 ダルトさんが商人に話の打ち切りを告げた。これ以上話してもこの商人からラーファの情報は出てきそうに無いと判断したようだ。

 「ゴーレムの事は覚悟してたけど、思った以上に興味を引かれたようだね。」


 やっと帰った商人の後ろ姿を見送りながら、アントさんが言う。商人は今仕入れた情報ネタを早速他の商人に売り込んでいる様だ。


 商人が支払った銀貨3枚を手で弄んでいるアントさんを見ながら、ダルトさんも同じ意見みたいだ。

 「仕方が無いさ、ロバや馬を連れて来てたら、世話や飼葉の調達とかで時間を取られるからゴーレムにしたんだからな。」


 ベロシニアの後を追うために、少しでも時間を取られたくなかったから、私が皆に頼んでゴーレムにしてもらったのだ。

 ゴーレム馬の魔核への登録はクラン全員を登録しているので、誰でも使える。


 遅かれ早かれ、今日の様な事はこれからも在るだろう。ゴーレムは役に立つ魔道具で手に入れたいと願う者は多いのだ。


 ラーファの話だと、ゴーレムの輸出としてはエルゲネス国が有名で、登録の書き換えが出来る人も大陸へ派遣していると言ってた。

 ダキエからは魔道具を輸出しているけど、ゴーレムは少ないそうで、そもそも輸出自体が多くないらしい。


 最低でも金貨500枚はするゴーレムなので、狙う盗人は多そうだが、ゴーレムの魔核に登録された人しか使えないので意外と狙われる事は少ない。

 登録を書き換えるには魔術の錬金で、登録している魔紋を消して書き込まなければならない。


 もちろん手に入れる事が出来た人は居るが最低でも金貨500枚かかるし、書き換えの出来る魔術師はほとんどが樹人の眷属(樹人の血を引く人族)で大陸に少ない、めったに無い幸運だったと言えるのが実情だ。


 翌日から南大街道をスローニンへ向けて旅を始めたが、思ったより時間が掛かりそうだ。大街道の馬車は集団で移動していて、追い越しが難しい、街道を移動する馬車は上り下りで逆向きににすれ違うため危なくて追い越せないのだ。

 途中の町での聞き込みはベロシニアらしき貴族の一行を見た人は居るが、詳しい内容は分からなかった。ただ一行の人数が10人ぐらいで、其の内の数名が女性だと分かった。


 次回は、スローニンでベロシニア子爵の情報を調べます。

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