表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
35/237

第33話・2 ラーファ行方知れず(2)

 マーヤはラーファを追うため男爵様に相談します。

 サンクレイドル男爵様からラーファが行方不明になったと知らされた時、マーヤはラーファの後を追う、正確にはベロシニアを追いかける事を決めていた。


 追いかけるにしても分かっている事は、ベロシニアがラーファを誘拐した後北へ帰らず、南へと移動しているらしい事ぐらいだ。それも門番が見たと証言している怪しい貴族の馬車が有ったと言うだけでしかない。

 それでも唯一の手掛かりだし、神聖同盟の国へと逃亡したと考えればルート的に南へ行く事は間違いないだろう。


 南の都市となると南の大公領都スローニンがあるが、其処から国境を超える事を目指して移動しているのだろうか?

 手がかりがあやふやな証言一つしか無いので、手配するにも打つ手が無いのが現状だ。


 南の街道沿いにスローニンまで今すぐにでも追いかけたいが、あの町この町と聞いて回る事はウラーシュコでのように、7才のマーヤではまともに取り合ってくれないかもしれない。逆にマーヤを獲物として襲って来る事も考えられる。

 どう考えてもマーヤには一人で追いかけても見失う未来しか見えない。


 マーヤはラーファなら自力で逃げ出す事も出来ると思っている。と言っても、マーヤとしてはただ待ってるだけなのは嫌だ。悩んだ末の決断は、ありきたりだけどおばば様とカークレイ爺様に相談する事だった。

 全てはマーヤが子供だと言う事から来ている。マーヤが信頼し頼るべきなのはおばば様とカークレイ爺様の二人だろう。この二人なら何か良い知恵を出してくれると信じている。


 「男爵様、カークレイ爺様とおばば様だけ(・・)に相談したいのです」


 マーヤがラーファの行方不明を知らせたサンクレイドル男爵様にお願いをすると、男爵様は眉をひそめた。


 「マーヤ、私に分かる様に説明をしてもらえないかな? 今の話では何故私に相談できないのか分からない。」


 その問いを聞いてマーヤは、男爵様に黙認して貰うためにも最低限の事を話さねばならないだろうと思った。男爵様の黙認が在って初めてマーヤはおばば様とカークレイ爺様に相談できるのだ。

 もし認めてもらえないなら、マーヤは一人で追いかける積りだ。


 「男爵様に話さないのは、王家の周りが今回の件に深く関与しているからです」

 「どうか、マーヤの相談を秘密にする事を黙認して欲しいのです」


 男爵様は唖然とした様子で「王家の周り?」とか言っています。どうやらガランディス伯爵の事は知らないようです。


 「男爵様、私の名マーヤニラエルの事を神聖同盟が知っていた事を王家周辺から漏れたと言われたことがありましたよね」

 「漏らしたのはガランディスからベロシニアへ、そしてル・ボネン国に流れました」


 爵位は(あえ)て付けない、マーヤの心の中では二人とも敵に認定されている。


 「元々5年前の3国の停戦では、密約として母の情報を共有する事が決められていました、ロマナム国との戦争でロマナム国とは密約は破棄されましたが、ル・ボネン国とは停戦まで続いていました」


 「なぜそれが断定できるのだ? マーヤ教えてほしい。」


 マーヤはベロシニアの部屋から持ち出した大量の記録や手紙の束から幾つかの証拠を男爵様に差し出した。


 「私の使い魔により調べた内容に基づき、マーヤが忍び込んで手に入れました」


 「忍び込んだぁ?」男爵様が素っ頓狂な声を上げた。


 男爵様は、マーヤの影働きが信じられないようです。茫然とした顔でマーヤを見ています。

 男爵様をそのままにしてマーヤは話を続けます。


 「マーヤにはカー爺様も知ってる使い魔がいますから、夜にベロシニアの家の上空まで飛び、其処から地上の家まで降りました」

 「部屋の中へ侵入して証拠を持ち去るのは、場所があらかじめ判明していましたので簡単でした」

 「帰りは又空を飛びカカリ村へ帰る、行き帰り4コル(1時間)の簡単な仕事でしたよ」


 マーヤが言いきると、カー爺様が感心した様に褒めてくれます。 


 「ほっほっほっ、魔女っ子お前さん影働きで食っていけるぞ。」


 カー爺様が太鼓判を押してくれました。


 マーヤとしてはここしばらくラーファの行方を捜す事に無我夢中でしたから、カー爺様に褒められたのはとても嬉しかった。

 思わず拳を突き出してカー爺と仲間意識を高めていたら、しばらく固まっていた男爵様が我に返って叱責してきた。


 「父上にマーヤ、いい加減にしてください。」


 叱責して、気分を切り合えたのか、諦めた顔をした男爵様がマーヤに言いました。


 「分ったマーヤの言う通り、イガジャ家が関わる事で王家の不審や疑念を招きかねない事は理解した。」

 「父上、後はお任せしますが、おばばとはしっかりと連携を取ってくださいね、独断は困りますから。」


 「無茶はせんよ、儂はもう年じゃしおばばの奴も自分で動きはせんじゃろう。」


 マーヤを見ながらにやりと笑いかける程度には余裕がありそうだ。

 後はポリィーを連れ出せるかです。


 いつ後遺症が現れるか分かりません、現れないかもですが危険は冒せません。

 でもポリィーを一緒に連れて行くならポリィーの家族をどうしましょう。


 ポリィーへはマーヤが魔力回復ポーションを安易に渡した事を悔やんでいます。そのためポリィーへは必要以上に拘っているのです。

 次回、マーヤはベロシニアの後を追って南へと向かいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ