第28話 帰還
ダンジョンは消えてしまった、今回の反省をするマーヤ。
ダンジョンコアを持って駆け込んだ笑い猫の巣の中に入れたテントで皆は、マーヤを待って居ました。
ポリィーはカカリ村の魔女なので、闇隠は知っていますが、笑い猫の巣が闇隠その物だとは良く分かっていないようでテントの中に居ながらダンジョンから移動している事が信じられないようです。
他の皆もマーヤに言われるがままテントに入っていただけなので説明が必要でしょう。
マーヤは持ってきていた軽食を背負いカバンから全てテーブルの上に出した。これからみんなで食べながら、今絶賛崩壊中のダンジョンについて説明しようと思っている。
「どうぞ食べて下さい、ダンジョンコアを取った後の鳴き声の様な音や、何が起きて居るか食べながら説明しますから」
「そうじゃな、腹が減っとるし、食べようかの」カー爺はあまり動じていない、さすがです。
「食欲が無いけど、何か食べた方が落ち着けるわ」ポリィーも立ち直りが早い。
「じゃあ食べようか?」「そうだな」アントニー様とダルトシュ様は単にお腹が空いただけのようです。
テントの中に用意している椅子とテーブルにお茶と大皿に盛ったサンドイッチを食べながら。カークレイ爺様とアントニー様とダルトシュ様はハムをレタスと挟んでマヨネーズをかけた物を。
マーヤとポリィーはチーズサンドやクリームサンドを4つに切った物を。時々ポリィーがハムサンドへも手を伸ばして食べている。つくづくカカリ村の人は良く食べる。マーヤなど見てるだけでお腹いっぱいになる。
闇隠で移動中のテントの中でダンジョンの事について話した。
「では、ダンジョンコアを外した事で起きた事の理由を言いますね」
「このダンジョンは闇魔術師の手によって作られた神の恩寵型ダンジョンです」
ここまでは前置きです。
「闇魔術師らは私たちを罠にかけるため、ダンジョンに相当な無茶をさせています」
「みんなも見たと思いますが、ダンジョンコアがひび割れていました」
隅に置いてある取り外した、ひび割れたダンジョンコアを指さします。
「つまり、このダンジョンは崩壊寸前だったと言う事です」
「放置してても崩壊するダンジョンからダンジョンコアを取り外したら?」
「崩壊する?」ポリィーが疑問に答えてくれた。
「はい、今正に崩壊の途中です」
みんなを見ても、納得しているようです。
マーヤは密かに怒りを抑えていた。今回の闇魔術師らの行動は明らかにマーヤを狙ったものだ。しかも彼らは逃げ出した。
後に残る人たちが崩壊するダンジョンから逃げ出せない事を承知の上だった。そこまで考える暇も無かったと言えるけど、最初からダンジョンの中で殺すか放置する積りだったのでしょう。
ダンジョンコアの修復と言う手段があるかもしれないが、五分以下の勝算しかなかっただろう。もし笑い猫を召喚できなければ、マーヤは背負いカバンのインベントリの中へ皆を入れて、神域を通って逃げるしか他に手が無かった。
神域の濃い神力は人には害がある可能性もある、本当に危なかったのだ。怒りが重く心を圧迫するのは、そんな罠に皆を引き込んだのがマーヤだった事だ。
ダンジョンが出来た時、神の恩寵型ダンジョンがエルフが作る物だと知ってて中へ入った。うかつだったとしか言いようがない。
「魔女っ子、何を落ち込んどるのか知らんが、今回の事は出来過ぎだったと思うぐらい良かったと思っとるぞ。」
カークレイ爺様がマーヤの頭をなでてくれる。
「そうよ魔女っ子ちゃん、私たちドラゴンスレイヤーズなのよ、すごい事なのよ!」
ポリィーがまだまだ興奮冷めやらずな様子でマーヤに抱き着く。外からアントニー様もダルトシュ様もお茶で祝杯をあげている。
「そうだね、すごいことをしたんだよね」
そうだ、ポリィーの事も今後見守って行かないと何時後遺症が現れるかもしれない。後悔は心を閉じ込める、反省は心を整理して前へと扉を開けてくれる。この怒りと後悔はしっかりと心の中に刻み込もう。
「ニャーッ」笑い猫がスキルで声を出した、目的地へ着いた様だ。
闇隠からテントを出してもらう。テントから漏れる灯りに浮かび上がる地下室。其処はダンジョンに入った地下3階の倉庫だ。
灯り《ライト》を付けると狭い倉庫内が良く見える。壁にあったダンジョンの入り口は跡形も無く消えていた。しかし、棚から落ちて割れた入れ物や壁にかけてある道具などダンジョンに入る前のままだ。
灯で照らし出される地下室の中に張られたテントを背負いカバンに片付けた。これからの移動は歩く方が早いので、つかい魔の笑い猫(迷宮茶縞猫)を戻した。笑い猫(迷宮茶縞猫)は影なので分からないが、名前通り笑い顔に見えるらしい顔を見せながら消えて行った。
「さて、地下室探検隊の隊長さんは、これからどうするね?」
カークレイ爺様がマーヤに聞いて来る。
答えは一択だ。
「お家に帰りましょ」
次回、ダンジョン騒動後の騒動。




