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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第1章 イタロ・カカリ村
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第23話 ダンジョンの罠(5)

 ダンジョンの罠は大きな口を開けるようです。

 縦に揺れ、横へ振り回されるように揺れた。


 「カー爺様、地震と思う?」


 地震が収まった頃、震度3かな? などと彼の方の知識で思いながら聞いた。


 「大丈夫か? 見た所平気な様子だが、酷い揺れだった。」


 カークレイ爺様もだが、他の皆も蒼白な顔をしている。そっか、皆は地震なんて人生初の事だったんだ。


 「揺れには強いみたい? それよりこの揺れって、ダンジョンが崩れたのかな?」


 揺れの後、ダンジョンが出来る前響いていた音が再び響き出した。


 「ふむ、ダンジョンが揺れた理由は分からんが、ダンジョンコアが盗られると、ダンジョンが悲鳴を上げると聞いた事がある。」


 カークレイ爺様が考えを纏めるためか、区切りながら言う。空間把握では、4階への階段がある通路全体が振動している様だ。

 急がないと4階への階段が崩れる予兆かもしれない。


 マーヤの聖光の結界は魔物の攻撃と侵入を防いでくれている。今居る分岐点は2つの大きな部屋の繋がった所だ。

 この聖光の結界を先々で張り直しながら上の階へ移動して行けば脱出できそうだ。


 前衛の3人は体力は回復魔術や魔女の薬で戻るけど、精神的な疲労は蓄積しているだろう。

 ポリィーは治癒の魔術行使を何回も行使した事で魔力が残り少なくなり、今は魔女の薬でケガを治療している。マーヤは魔力は問題なかったが、結界を張る役目が重い精神的な重圧となって疲労を誘う。


 精神力を体力で補う事が弱いマーヤは、精神的な疲労を解消しようと眠気が襲って来る。早めに上の階へ戻り、ダンジョンを抜けないと精神的な重圧で寝てしまう。


 決断は何時も早いカークレイ爺様が休憩で体力気力が戻ったのを見て4階へ戻る手立てを言って来た。前衛のアントニー様とダルトシュ様へ言う。


 「今度は4階への通路前まで戻るぞ。」

 「通路沿いの部屋は扉は全て開いているが、中は全て確認しながら行くぞ。」


 顔を此方へ向けて来る。


 「マーヤは結界をこちらの分岐の通路をふさぐように張れるか?」

 「はい、カー爺様今の結界の端から新しく結界を張ればこの先の分岐をふさぐ結界を張れます」

 「よし、やってくれ。」


 結界の先端まで移動して、4階への一直線の通路を見据えて結界を張る。


 『わが身に宿る聖なる光よ、皆を守り、助ける壁と成れ!』


 マーヤは眠気を吹き払うように詠唱した。


 「聖光セイントライト


 結界が新しく張られるより早く、カークレイ爺様、アントニー様、ダルトシュ様がマーヤの側を通り過ぎた。結界に取り込まれた魔物を掃討して行く。

 戦いは直ぐに終わり、ポリィーがケガを魔女の薬で治療する。魔物が沸くのは部屋の中だけなのか、魔物の数が少なくなったような気がする。


 「続けて階段前まで一気に行くぞ!」


 カークレイ爺様が少なくなった魔物の様子を見て取ると透かさず次の指示を出す。前衛が突撃して行く後ろを遅れない様に走って行く。通路の両側の部屋は扉が開いたままで中には魔物は居なかった。

 階段への通路前の分岐には魔物がたむろしていて激戦になったが、マーヤが聖光セイントライトを張ると結界内にとり残された魔物は数匹のワーウルフだけになった。


 カークレイ爺様たちが残ったワーウルフ3匹を倒した。ワーウルフが魔石に変わる、マーヤが再度、聖光セイントライトを通路の出口をふさぐように張る。


 一息つけると安心した時だ。


 低い音で響いていた音が止んだ。みんな、階段がある通路の奥を見た。4階への階段は無かった、其処には大きな扉が一つあるだけ。


 扉は閉まっている。魔物が出て来て襲われる前にと、慌てて聖光の結界を扉の前に張る。


 『わが身に宿る聖なる光よ、皆を守り、助ける壁と成れ!』


 「聖光セイントライト・セカンド


 これで通路の前後2ヶ所に聖光の結界を張った。


 マーヤの魔力《神力》的にはまだまだ余裕がある様だ、マーヤ自身この事に驚いた。聖光セイントライト・セカンドの使用魔力は1つ目の倍以上に魔力を消費する。マーヤは自分で思っていた以上に魔力がある様だ。


 扉は開く様子が無い。


 だが、空間把握では中で魔術陣が魔物をポップさせようと、魔力が渦を巻いている。把握できていても部屋の中へ攻撃の魔術陣を出す事は出来なかった。部屋には魔力を通さない結界があるのだろう。

 扉を開ければ部屋に入って魔術陣を壊せるかもと、開けようと扉を押すがびくともしない。カークレイ爺様も手伝ってくれたが同じだった。


「魔女っ子、何しとるんだ?」


 一緒に扉を開けようと手伝ってくれたカークレイ爺様が、ビクともしない扉を押しながら聞いてくる。見れば分かると思うけど、一応説明しときますか。


 「今なら部屋の中が空っぽだから入れるといいな? って思って」

 「中が? 空っぽ? 部屋の中の事が分かるのか?」


 空間把握で分かるのですけど、この能力はラーファから秘密にするように言われている。無難な答えを用意する。


 「はい、音の響き具合や感覚的な物ですけど、分かります」


 その時、後ろの結界に又、土槍ジャベリンが何本も当たる音がした。後ろを振り返るとワーウルフが何匹か結界を攻撃している。


 「カー爺様、結界は大丈夫ですよ、あのくらいでは破れません」


 カークレイ爺様が獰猛な鷹の様な目で後ろを見ている。後ろの通路側に張られた結界に魔物が攻撃をして来ている。扉の奥の部屋に魔物がポップしてくればこの扉を挟んで前後に追い詰められる事になる。


 改めて周りを見てみる。扉の前の通路は見慣れた黒いレンガと光る苔で作られている。広さは横幅が4ヒロ(6m)、高さが3ヒロ(4.5m)ある。

 閉まっている扉の中央に魔結晶を象った浮き彫りが描かれているのが目に入ってきた。1ヒロ(1.5m)より上の高い位置に描かれているので今まで気が付かなかった。魔結晶が此処に在るのならこの部屋はダンジョンコアの部屋なのだろうか?


 いつの間にか、ダンジョンの最下層に在るはずのダンジョンコアの部屋まで誘い込まれていた?


 次回、決戦前のマーヤによる神の恩寵型ダンジョンにエルフが関わっている事の説明です。

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