第22話 ダンジョンの罠(4)
マーヤ達は、一息付けましたが、危機はまだ続きます。
カークレイ爺様がマーヤとポリィーに強い口調で言います。
「魔女殿に魔女っ子、良く聞いてくれ。」
「これから、今居る部屋と前に通った部屋のつなぎ目まで前衛の3人で移動する。」
「二人は同時に結界の後ろに居る魔物を掃討して欲しい。」
私たちの役目は後ろへの牽制の様です。結界を張り直せば今の位置の結界は消えますから、出来るだけ魔物は減らしたい所です。
「掃討後二人は、特に魔女っ子は、つなぎ目まで何があろうと立ち止まらないで来てほしい。」
「つなぎ目で次の結界を張るまで、わき目も振らずに駆けなさい。」
通路が5本ある両側に小部屋があるのですから一つの部屋に50の小部屋がある計算になります。その部屋と部屋のつなぎ目は四方から物凄い数の魔物が襲って来ます。マーヤの到着が遅く成ればそれだけ危険にさらされる時間が長くなります。
「魔女殿は魔女っ子が目的地に着くまでの守りをお願いしたい、後ろは気にしなくても良いので前で守ってほしい。」
その後、全員を見てニヤリとしながら言った。
「結界さえ張れれば、一息出来るからな。」
少しだけの前進に成りますが、重要な意味を持ちます。つなぎ目からは4階への階段がある通路へ真っ直ぐ続く通路が在ります。
「ダルトシュは、この通路の一つ向こうの通路から来る魔物から分岐の通路に入れない様に立ちふさがれ。」
「アントニーは、儂と共に部屋のつなぎ目まで進出、其処で3方から来る魔物を牽制、魔女っ子が結界を張るまで防衛する。」
命令を矢継ぎ早に出して、全員が理解した事を確認すると。装備を点検し直して、カークレイ爺様を先頭にアントニー様とダルトシュ様が聖光の結界を通り抜けて魔物に突撃した。
マーヤは後の聖光の結界で近寄れない魔物へ散弾を連続で撃ちだす。ポリィーも礫を撃つ。
後ろから寄って来ている魔物は10級の魔物しかいない、2回礫と散弾を浴びせると掃討出来た。結界をそのままにして、前衛の3人の後を追う、ポリィーは2歩前を走っている。
3人が分岐の所まで切り開き、私たちが後を追って来るのを分岐の先で待って居る。其処では一つ横の通路から魔物が攻めて来て、それをダルトシュ様が防いでいる。
カークレイ爺様とアントニー様は中央の分岐迄進んでいた。中央の分岐点は前後左右に通路が在る。後ろは私たちが居た聖光の結界がまだ残っているので魔物は来ない。
でも、ダルトシュ様が倒れたら前衛と後衛で分断されてしまう、早くダルトシュ様の居る場所へ行かないと。見ればダルトシュ様が血まみれだ、カークレイ爺様とアントニー様は無事だろうか?
急げ! マーヤの短い足が恨めしい、もっと早く!血だらけで奮戦するダルトシュ様の横を通り過ぎ、カークレイ爺様の後ろで光の結界を張る。
『わが身に宿る聖なる光よ、皆を守り、助ける壁と成れ!』
「聖光」
結界が広がり、結界の中に取り残された魔物を皆で掃討する。やっと一息付けた。でも結界への負荷が思ったより大きい、魔物が四方から押し寄せているだけでは無く、魔物の級も上がっている様だ。
結界に近寄る魔物に、散弾を撃ちだすが倒れない魔物も居る。4階へ上がる階段がある方からの魔物が多いし、強い魔物も多い。
行使する魔術を土槍に切り替える。効果は直ぐに出て近くの魔物は魔石に代わった。マーヤが魔術で魔物を牽制している間に、ポリィーはケガをした3人を魔女の薬で治療している。あれだけ血だらけに成っていたけど、大丈夫だろうか?
ポリィーが手慣れた感じでケガをした3人を治療して行く。ケガの位置を確認して、魔女の薬で治療した後、効果が足りているか確認している。ダルトシュ様には2回魔女の薬を使った。
マーヤも一息付けた。この分岐点の中央を抑える事が出来て良かった。この分岐から真っ直ぐ戻れば地下4階への階段がある通路へ行ける。
後ろの魔物は何故か前から来る魔物より数が少なく、近寄るたびにマーヤの散弾で掃討出来る程度だ。結界が持つのを確認できたので、今は牽制程度でしか魔術を行使していない。
しばらく分岐点中央に光の結界を張って居座っていると、出てくる魔物が強い魔物に代わってきた。9級や10級の魔物の数は少なくなった。
周りの魔物が7級のワーウルフを筆頭に8級の蜘蛛やトカゲの魔物、コボルトの魔法使い、同じく8級か9級の迷宮毛長灰色狼、そしてゴブリンの弓使い。大雑把だが倒した魔物の魔石を見て判断している。
魔法使いは土槍以外は火玉しか飛んで来ない。土槍は一度撃つとしばらく飛んで来ない。矢除けと違って聖光の結界なら、1発ぐらいでは結界が破られる事は無かった。
後ろから来る魔物はマーヤが散弾で倒すとしばらく近寄ってこない。前から押し寄せてくる魔物は数が多く、戦闘力も高い。
魔法も火玉や土槍が飛んできた。土槍が立て続けに5本結界にぶつかる。結界は? と見ると何とか無事の様だ。
魔法持ちが多い気がする?
そう思った時ダンジョン全体が地震のように揺れた。
次回、マーヤ達は魔物の徘徊するダンジョン内を地下4階へと戦いながら進みます。




