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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第1章 イタロ・カカリ村
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第21話 ダンジョンの罠(3)

 マーヤは乙女の危機にどう対処するのか。

 結界を張った後、魔物の動きを見ていたが、土槍ジャベリンを何本か弾いているので、結界を破れるような魔法スキルも無いようだ。せいぜいワーウルフが結界を爪でひっかく程度で、結界が破れる程の破壊力も無い。


 少し余裕が出来たので、魔女の薬をポリィーに渡して使ってもらう。魔力切れが心配なので魔力回復ポーションも渡す。


 「ありがとう、使わせてもらうわ、念のためと思って3つしか持って来ていなかったの、でも魔力回復ポーションまでもらって良かったの? これ高いんじゃないの」

 「魔力回復ポーションは魔力切れで動けなくなる前に使ってね、値段より命の方が大切よ」

 「わかった、いざと成ったら使うわ」


 ポリィーが渡した魔女の薬5箱と魔力回復ポーションを肩掛けカバンに入れる。先ほどアントニー様の負傷を治癒魔法で治療してたが、魔力がマーヤと比べ少ないポリィーには魔力を温存して欲しい。ポリィーも分かっているのか既に使い魔を使役するのを止めている。


 「マーヤ、この結界は前へ移動できるか?」


 カークレイ爺様がマーヤの名を呼んで聞いて来る、カークレイ爺様も余裕がなくなって来たのかも。


 「いいえ、設置型なので移動できません、移動するならこのまま放置して移動先で張り直します」

 「魔力は持つか?」


 マーヤの魔力はダキエの次期女王だった母ラーファより多い。ここまでの戦闘でもほとんど減って無い。心配するのは魔力より体力だけど、ここはラーファから作り方を習ったポーションの事を知らせて安心してもらおう。


 「はい、何度でも、それに魔力回復ポーションも持っています」

 「なんじゃ? 魔力回復? ポーションじゃと!」、「「「えっ!」」」。

 「ダキエ金貨1枚はする値段のはず。」


 ダルトシュ様は物知りですね、魔力回復ポーションなんて流通していませんから。金額を聞いたポリィーが吃驚した顔をマーヤに向けていますが、マーヤはポリィー頷いて「使ってね」と言った。


 「わっはっはっ、マーヤはビックリ箱じゃな! ここに来て魔物より吃驚びっくりさせてくれる。」

 「良し、少し休憩したら、地下4階へ向けて前進じゃ!」

 「「オオーッ」」、「「はいっ」」


 戦闘から少し気がそれて余裕が出来たのか、みんな気力が戻って来たようです。急いでお茶とクッキーを皆に配ります。 お茶はクコ茶、神域で栽培している魔力回復の効果が在る品種です。


 マーヤは魔力回復ポーションを今使う事を考えたが、ポリィーを含めて皆、まだ余裕はありそうです。クコ茶を飲むぐらいで十分回復するでしょう。


 それよりもっと緊急な問題が在ります。おトイレに行きたくなりました、もしここでするならみんなの前でする事に成ります。


 乙女の危機です。神域へ手を入れて在る物を取り出します。


 テントです、これはラーファが闇の森ダンジョンを彷徨さまよった時、野宿でテントが小さくて夜露や雨に難儀なんぎした事から作った物です。


 そのテントをマーヤが改造して機能を付け加えています。そうなのです、今一番欲しいトイレもシャワーも在ります。


 マーヤがいきなりテントを何もない空間から取り出したのを見て、みんなは声が出ないのか無言でテントを見ています。


 「カー爺様、ちょっとお花摘みに行ってまいりますね、魔女先生も一緒に行こう」


 ポリィーの手を持って強引にテントの中へ引き入れます。


 「ちょっと、ちょっと、待ってよマーヤ、いったいこれ何なの?」

 「そうじゃ、儂も聞きたいのう?」


 カークレイ爺様がテントの入り口の布をまくり上げて顔を出しています。後ろには、アントニー様もダルトシュ様も覗き込んでいます、覗きは良くない!


 「えっと、これはテントですわ」

 「そりゃあ見れば分かる、中に何が在るかと聞いているんじゃ?」


 カークレイ爺様の追及が迫ります。観念して話します。


 「空間を広げて、中にトイレやシャワー室などを設置してキャンプ出来るようにしています」

 「キャンプじゃっと! テントの中にトイレ?」


 なんだか呆れられたようです、カークレイ爺様が何か言おうと口を何度か開きますが、最後にあきれたと言った様子で声を出します。


 「まぁなんだ、花摘みなら行ってこい、儂らも後で逝くから。」


 そう言って、カークレイ爺様も後ろの二人もテントから顔を引っ込めました。


 途端にポリィーから抱きしめられました。


 「ありがとう、マーヤ、私トイレどうしようか悩んでいたの」

 「それに汚れたので、血を拭きたいの」


 テントの中のトイレは完全遮音と空調で、テントの中でも音も匂いもシャットアウトしています。トイレは1つだけなので、交互に使い、ポリィーが血の汚れを落とすのにシャワーを使った。


 着替えは無いけど、マーヤが火水魔術・熱湯ホットウォーター・ハイで洗い、汚れを落とした。濡れた服を錬金術・水分調整コントロールアクアで水分を適度に抜いた。多少しわになったが乾燥できた。


 テントから出ると、カークレイ爺様から順番に一人づつテントへ入って行きました。トイレに交代で行っている間に、結界内の散らばっている魔石やドロップ品を集めました。


 魔石は7級から10級まで、ドロップ品は狼の毛皮と爪、剣、槍、弓などで魔石と毛皮、爪以外は使い物にならないぐらい品質が悪く、開いている部屋にまとめて放り込みました。


 魔石だけでも100個以上在りますし、其の内の4個は7級の魔石です。魔石だけでも金貨で売れます、地上に出れたら打ち上げでホクホクですね。


 狼の毛皮は2種類出ています、一つだけ出ているのが灰色狼で残り6枚が毛長灰色狼でした。ポリィーが最初に見た狼は灰色狼で普段使役している毛長灰色狼と違っていました。


 爪はワーウルフ、これが一番高額で売れるそうです。魔石もドロップ品も全て背嚢せおいカバンに入れます。


 再び、全員が揃うとテントを小さくたたんで背嚢せおいカバンにしまう。みんなは呆れた顔で見ていましたが、何も言いませんでした。


 整理がついたところで、仕切り直しです。


 マーヤはこれまで秘密にしていた事を惜しげも無くみんなの前に出します。

 休息は出来ても、まだ罠の中なのは変わりません、でも希望は見えました。

 次回、4階へ向けて進みます。

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