第18話 ダンジョン騒動(7)
マーヤ達ダンジョン探検は5階のボス部屋へ。
探検隊は隊列を組むと奥へと進んで行った。突き当りで通路が一度一つになり、通路の先で又分岐している。
カークレイ爺様は常に左を行く。今回も分岐を左へ突き当り迄来た。
「よし、ここらの部屋を適当に入るぞ!」
「魔女っ子、魔女殿、用意してくれ。」
「「はい」」
「風を掴み、矢の行方を狂わせ、その境を守りとなせ!」
「矢防、付与」
『混乱を纏いなさい!』
矢除けの結界が全員に付与され、使い魔が混乱スキルを纏った。
「先ほどと同じじゃ、前衛はこちらで対処する、後衛を頼むぞ!」
「行くぞ!」
カークレイ爺様がドアを勢い良く開ける。アントニー様、ダルトシュ様が入り、使い魔とカークレイ爺様が続く。マーヤとポリィーも飛び込んだ。
中は剣ゴブリン、コボルト、スライム。アントニー様、ダルトシュ様、カークレイ爺様が戦ってる。前衛の3匹が薄く魔力を纏ってる。
確認で一呼吸遅れた、急いで後衛を見る、杖コボルトが2匹。杖を構えて詠唱中! 早い!
「kdが0あ」杖コボルトが火玉を撃ち出した。
「礫」マーヤの攻撃。
火玉はマーヤへ迫ると、矢除けの結界に弾かれて天井へ当たった。天井で火玉が燃え広がり、火の粉が散ったが結界に阻まれ消えて行った。
火玉を撃ったコボルトにマーヤの礫が当たる。杖コボルトを仕留めた。
残った杖コボルトは混乱でウロウロしている。
「礫」マーヤの攻撃で仕留めた。
前衛を見ると、既に魔石に成っていた。
「驚いた、火を結界が弾いたな。」
アントニー様が先ほどの火玉を結界が弾く所を見たのだろう、びっくりしている。
「そうです、横で見ていたから良く分かったわ、火の魔法なら矢除けで大丈夫でしたね」
「火や風ならば比較的簡単に矢除けで防げますが、水と土は込めた魔力次第ですよ」
「なんだか前衛の3匹が強かった気がするのですが?」
ダルトシュ様が手ごたえが違ったのか、首をかしげながら言う。
「前衛の3匹は魔力を纏っていましたから、恐らく何らかの強化が掛かっていたと思います」
マーヤが気が付いた事を知らせる。
「むぅ! 強化じゃと、それで一太刀で仕留められんかったのか?」
「同感です! 最初の一撃を受けてもまだ攻撃してきました。」
アントニー様も違和感が在った様です。
「厄介じゃな、敵に魔法使いが居ると強化迄使うか。」
「神の恩寵型ダンジョンの地下5階で魔法使いは初めてじゃ。」
「しかも一度に魔法使いが2匹も出るし、強化された前衛が居る、通常では考えられんことじゃ。」
「でもカー爺様、出た魔石は10級です、10級の魔物が強化魔術でパワーアップしていると言う事です」
「もう一度ボス部屋の前にこの階の部屋を攻略するぞ。」
カークレイ爺様はそう言うと、3つ先の部屋の前まで移動して手招きすると皆を呼び寄せた。
「この部屋にしよう、この部屋でも杖持ちの魔法使いが出るならボス部屋でも出るじゃろう。」
そう言うと、剣を抜いて瞑想を始めしばらくすると『金剛身!』と魔力を込めた言葉を発した。
カークレイ爺様が魔法を使う所を初めて目にした。
するとアントニー様とダルトシュ様も『『金剛身!』』と同じように魔法を使い魔力を体に纏った。前衛の3人が金剛身を使ったなら、マーヤとポリィーも金剛身で魔力を身に纏った。
全員が強化で身に魔力を纏うと、マーヤは続けて矢除けの結界を行使した。
「風を掴み、矢の行方を狂わせ、その境を守りとなせ!」
「矢防、付与」
『混乱を纏いなさい!』
ポリィーは召喚している使い魔にもう一度混乱を付与する。全員の用意が終わると、カークレイ爺様が確認をする。
「用意は良いか!」
「「はっ。」」、「「はい」」
「良し、突入!」
掛け声と同時にドアを開けた。アントニー様とダルトシュ様、使い魔が突入し、カークレイ爺様、マーヤ、ポリィーが続く。
部屋の魔物は槍コボルト、剣コボルト、灰色狼、弓ゴブリン、杖コボルトだ。敵の前衛と此方の前衛がぶつかる。
此方が優勢だが倒すところまで行けない。敵の弓がカークレイ爺様に放たれたが矢除けが逸す。杖コボルトはポリィーの使い魔が混乱を使いボーと突っ立たまま棒立ちしている。
「礫」、「礫」
連続で撃つため少し遅れたが、土魔術・礫が弓ゴブリン、杖コボルトを撃ち抜く。
これで後衛は魔石になった。前衛の3人は? 敵の前衛が倒れている、直ぐに魔石に変わった。
終わったようだ。
「ご隠居様、今回も強化されていましたな。」
アントニー様が剣を鞘に納めながらカークレイ爺様に言いました。
「狼は速さが強化されとった、力だけで無く速さ迄強化するとは厄介な。」
「これは、金剛身を掛けているのは確実です。」
ダルトシュ様が断定されました。
「今回も、杖を持った魔法使いでコボルトが出た。」
「これで5階の杖持ちはコボルトと考えてよさそうじゃ。」
「ボス部屋で杖持ちが2匹出て来るじゃろう、問題は6階から出る9級の魔物じゃ。」
「もし前衛が9級の魔物で、金剛身を使って来るとしたら、ちと厄介じゃ。」
カークレイ爺様が考え込んでしまわれた。
「みんな聞いてくれ、儂はこれまで2ヶ所の神の恩寵型ダンジョンに入った事がある。」
「他にも存在する神の恩寵型ダンジョンも調べた。」
「その事から分かるのは、今回の神の恩寵型ダンジョンは今までの物と違うと言う事じゃ。」
「地下5階までに魔物で魔法使いが出るなど聞いた事が無い。」
「今回が初めてじゃ、それだけでは無い、前衛の魔物が金剛身を使うなど中級の魔物ぐらいじゃ。」
「中級の7級以上が出る15階より下なら出て来るが、下級しかいない15階までで魔物が使うなど前代未聞と言って良い。」
「故に、帰還する。これは儂の命令じゃ。」
カークレイ爺様がこの言葉を発した途端、部屋のドアが次々に開く音がし始めました。
「何事じゃ、部屋の外から音がするぞ。」
部屋の外を覗かれたアントニー様が大声を上げた。
「魔物が通路に出て来た!」
迷宮は大きな罠と成ってマーヤ達に襲い掛かってきた。




