第17話 ダンジョン騒動(6)
マーヤ達ダンジョン探検は5階へ来ました。
4階のボス部屋は一蹴とは行きませんでしたが、後衛への対処も上手く行きました。
「敵も隊列を組んでこられると、厄介じゃな。」
「はい、しかも攻撃の反応も早くなっているようです、部屋に入った時前衛に取り付く前に弓で攻撃を受けました。」
アントニー様が淡々と報告しますが、マーヤには深刻な内容に聞こえました。
「なに! ケガは無いか?」
「ええ、矢除けの結界が弾いてくれましたから、それに弓を撃てたのは1匹だけでした。」
「そいつがボスかもしれんな・・・ 。」
カークレイ爺様も考え込んでしまいました。
「ボスは他の魔物より能力が高いようですね、組織的な行動を取るには指揮役が必要です、その役をボスがするのでしょう。」
マーヤ達を向いて、ダルトシュ様が状況を分かりやすく、かみ砕いて説明をしてくれます。
考えが纏まったのか、カークレイ爺様が長考から抜け出てマーヤ達を見ました。
「5階に下りたら、近くの部屋へ入ってみよう。」
「賛成です、5階でのボスの立ち回りを知りたいですね。」
アントニー様が言う事は分かりますが、ボス部屋へ行くのが遅く成らないかしら。
「ご隠居様、ボス部屋は戦わずに6階へ行く事も選択に入れるべきです。」
ダルトシュ様は慎重過ぎると思います。
マーヤは今までの魔物がそれほど強いとは思えません。
でも前衛の3人がみんな慎重なのは、何かあるのかもしれません。
でも、ボスとは戦いたいな。
「確かにな、それも考えに入れて置こう。」
カークレイ爺様がマーヤとポリィーを見て言いました。
「どうも今回のダンジョンは様子が違う。」
「念の為、敵に杖持ちが居たなら、真っ先に対処してくれ、魔法使いの魔物じゃからな。」
「弓持ちは今回で分かったが矢除けの結界で対処できてる、放置しても問題ないじゃろう。」
「よし、5階へ行くぞ。」
地下5階は、一段と広くなっています。
5つの分岐に分岐毎に左右に5つの部屋と言う作りは変わりが在りませんが、その作りが4つも在ります。
並びは2つ横に並んだ物が縦に2つ、大きな正方形の型に収まっています。
各作りは分岐で縦と横の通路が繋がって行き来が出来るようになっています。
適当に選んだ部屋に入って居たら、同じ眺めをした作りなので自分の位置を見失ってしまいそうです。
でもカークレイ爺様は迷いなく、一番左手の通路へ行くと、左の部屋を指示して。
「この部屋にする、魔女っ子矢除けを頼む。」
カークレイ爺様も緊張しているのか、言葉が少な目だ。
「風を掴み、矢の行方を狂わせ、その境を守りとなせ!」
詠唱が陣を作り、陣が魔力を帯び魔術の行使されるのを待ちます。
「矢防、付与」
魔力を込めた起動の発声を出す。
マーヤの矢除けの結界の行使です、言葉に出すのは他の人に知って貰うため。
隊員全員に矢除けの結界を付与し終わった。
ポリィーの足元に座っている、迷宮毛長灰色狼に混乱の術を使える様に指示する。
『混乱を纏いなさい!』
魔力を込めた言霊で命令した。
使い魔が使える術は使役する魔女が使える術に限られる。
ポリィーは使い魔に2つの術で攻撃させたので、混乱と麻痺それに自分で使った腐敗も使い魔が使える。
使い魔に術を分与すると、使い魔もその術が使えるようになる。
魔力を感じ取る能力持ちにしか使い魔は存在を感じない。
幸い探検隊の全員が、使い魔を感じ取れる能力持ちだ。
カークレイ爺様以外のアントニー様とダルトシュ様が剣を抜いて構える。
マーヤとポリィーがカークレイ爺様を見て頷く。
「よし、行け!」
言葉と同時に部屋の扉を開けるカークレイ爺様。
アントニー様、ダルトシュ様が突入して行く、ポリィーの使い魔も続く。
続いてカークレイ爺様、マーヤ、最後にポリィーが部屋へ入る。
中は、剣持のゴブリン2匹とスライムが前衛。
後衛にコボルト2匹が弓を持って、1匹は既に弓を撃ち終え次の矢をつがえ様としている。
使い魔が後衛のコボルトに接触して行く。
弓を手に混乱で動きが止まるコボルト2匹。
マーヤの土魔術、礫を撃ちだす。
「礫!」、「礫!」
続けざまに礫を撃つ。
後衛のコボルト2匹が倒れる、前衛のゴブリン2匹とスライムも倒れている。
無事戦いは終わったようだ。
10級の魔石を拾い集めて袋へ入れる。
これで魔石が44個になった。
出て来た魔物もゴブリン、スライム、迷宮灰色狼、コボルトの4種類だ。
入った順に外へ出ると、カークレイ爺様がドアを閉める。
「カー爺様、ドアを閉めないままにしてたら魔物が部屋から出て来るの?」
「このドアは開けたら、開いたまま人が中にいる間、閉まらないんじゃ。」
「じゃが、人が居なく成ればこうして閉められるし、開けたままでもしばらくしたら勝手に閉まる。」
空間把握には部屋の中に魔力が集まって陣を作っているのが分かる、しばらくすれば魔物がリポップするのだろう。
それに気になったのが、ダンジョンの部屋の前の壁の中に、魔力で『聞き耳』と『遠目』の魔術陣を描いている事だ。
今の話からすると、人がどこにいるか判別しているのだろう。
「ご隠居様、この先でもう一つ部屋に入りませんか、ボス部屋の前にもう一度確認した方が良いと思います。」
「此処まで組織立って戦う魔物は初級の魔物としては異常です。」
ダルトシュ様はあくまでも慎重です。
「異常序に、次は魔法使いが現れるかもしれませんね。」
アントニー様は好奇心にあふれた様子。
「考えられんが、いやな予感がする、次はこの先の適当な所で部屋に入ろう。」
次回も5階です。




