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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第1章 イタロ・カカリ村
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第15話 ダンジョン騒動(4)

 マーヤはダンジョン2階のボス部屋へ突入しました。

 中には、スライムが1匹とゴブリンが2匹。


 奥で1匹、弓を構え、前はゴブリンが剣を構えている。


 アントニー様とダルトシュ様はボス部屋に入り込む前に強化をかけていたのか、動きがとても速かった。


 マーヤが部屋の中に入った時は、アントニー様が剣を持ったゴブリンを切り下げ、ダルトシュ様がスライムを剣で刺し貫いていた。


 では、弓持ちのゴブリンは? と見ると。


 「腐敗ラァット!」


 ポリィーの声がして、弓の弦が腐り落ちた。


 闇魔術の腐敗ラァットを弓の弦に掛けて、弓を引け無くしたのだ。


 魔術陣を行使した様子も無かったので、魔術では無くスキルだと思う。


 「すごい、魔女先生ポリィーは闇魔術のスキルを持っているのね」


 「えへへ、ありがとう、でもね魔女っ子は知らないだろうけど、元々魔女は闇系の魔法スキルを使うのが伝統と言うか当たり前なのよ」


 「今のカカリ村の魔女は魔力が増えたおかげで魔術を行使できるようになっただけよ」


 「え、昔は魔術が使えなかったの?」


 「そうよ、前は魔法スキルを使ってたわ」


 ポリィーと話している内に、弓持ちのゴブリンもカークレイ爺様に切られ、10級の魔石に変った。


 ポリィーの言う魔法はスキルの事だとは知っているけど、魔法スキルだけで地下生活を維持できるのだろうか?


 時間が在ればポリィーに聞いて見よう、今は次の階のボス部屋へ移動しなければ。


 大魔女のおばば様が言う通り、自分のその場の知識だけで分かったような気になっていた。


 より深い知識と理解の前では、先ほど考えていた魔術で地下生活を維持していた考えは浅慮だった。


 みんなが集めてくれた魔石を袋に入れながら、魔法スキルを魔術より下に見ていた事に気が付いた。


 魔術陣を使わない、魔力の籠った言霊こえ魔技どうさによる魔法スキルは魔力の消費が少なくても魔術と同じ効果が出せる。


 その半面、魔力を多く使う威力の高い魔術は魔法スキルには無いと思い込んでいた。


 でも、魔法スキルだけで地下の生活を賄えるほどの、魔術に負けない魔法スキルを使いこなしていた事を知った。


 マーヤは自分の至らなさに深く反省した。


 ボス部屋を出て、通路の先の階段を地下3階へと降りる。


 「地下3階じゃ、ここの階の魔物も先ほどのボスを見ると又ゴブリンの様じゃ。」


 「恐らく前衛と後衛に分かれて出てくるぞ。」


 カークレイ爺様が階段を下りた先の通路で此の階の注意点を話してくれた。


 「ご隠居様、それは弓で攻撃して来るゴブリンが居るって事ですか?」


 ダルトシュ様が嫌そうな顔をしています。


 「そう言う事じゃな、弓対策をしなければならん。」


 弓持ちが出てくるように成れば、鎧を着ていない探検隊は防ぐのが難しいかも。


 マーヤの出番だと思う。


 「カー爺様、私が矢除けの結界をボス部屋に入る前に、行使しても良いですか?」


 「矢除けの結界とは、強い風で矢を吹き飛ばす奴か?」


 「矢だけでしたら、そこまで強くしなくても防げます」


 「此処で儂に掛けてみてくれるか?」


 カークレイ爺様が矢除けの結界を身をもって知りたいようです。


 「風を掴み、矢の行く先を狂わせ、その境を守りとなせ!」


 詠唱と共に魔術陣が出来て行く。


 「矢防アローガード


 魔力の籠った声で矢除けの結界が行使された。


 マーヤ流の風の結界です。


 結界ですから境界面に矢が来れば風をコントロールして矢の方向を結界面に沿った方向へ変えることが出来ます。


 「カー爺様、今結界を張りました、結界の外から何かが来れば逸らしてくれます」


 「うむ、何の変化も感じられんのじゃが、ダルトシュ端っこに何か投げてくれんか?」


 「ハッ!」掛け声と共に銅貨が投げられ結界に逸らされて、地面に落ちた。


 「銅貨程度なら結界が逸らしてくれるようですね。」


 銅貨を拾いながら感心した様に言います。


 「ならば魔女っ子、矢除けの結界を全員に掛けられるか?」


 「はい、1回の魔術の行使で全員に結界の効果を付与できます」


 「持続時間も1コル(15分)以上持続しますし、矢も何回でも防げますから」


 「よし、これで弓持ちゴブリンの対策は成った、ここのボス部屋へ行くぞ。」


 地下3階の地図は空間把握によると、地下2階と同じ5つの通路部分とその先の2つの通路から成る構成になって居ました。


 ボス部屋は5つの通路の先の2つの通路の更に先が地下4階への通路で、その途中にありました。


 此のボス部屋には4匹の魔物が中に居ます。


 「風を掴み、矢の行く先を狂わせ、その境を守りとなせ!」


 「矢防アローガード付与エンチャント・ファイブ


 ボス部屋の前で矢除けの結界を行使して全員に付与する。


 いつもの様にカークレイ爺様が扉を開け、アントニー様とダルトシュ様が先に突入し、カークレイ爺様、マーヤ、ポリィーの順に続く。


 飛び込んだボス部屋の中に4匹いる。


 前衛2匹、後衛2匹だ。


 前衛は犬と槍ゴブリン、後衛は弓ゴブリン、2匹。


 犬(おおかみ?)はアントニー様が切り伏せ、槍ゴブリンはダルトシュ様が獲物を跳ね上げて袈裟懸けに切り伏せた。


 1匹の弓はポリィーが弦を腐らせた。


 最後の弓ゴブリンの放った矢がアントニー様の結界で逸れる。


 弓持ちの1匹はカークレイ爺様、残りをマーヤの土魔術、ストーンで仕留めた。


 ポリィーが犬? が居た後を見て戸惑った顔をしています。


 「私、使い魔が魔物として出て来るの始めて見たわ」


 そっか、犬じゃあ無くて迷宮毛長灰色狼だったんだ。


 使い魔として召喚しても黒い影のシルエットでしか見えないから実物を初めて見たんだ。


 マーヤも初めて見たけど、毛長じゃ無かったような? でも怖い顔をしてるんだね。


 でも毛長灰色狼って、8級じゃあなかった?


 これで魔石4つ手に入れました。


 探検隊の隊員も今回の結果は手ごたえがあったのか満足そうです。


 魔物が強くなったと言うより、隊列を組んで向かって来た事で戦力が上がったのだと思います。


 ポリィーは10級の迷宮灰色狼と迷宮毛長灰色狼を勘違いしています。

 普段使役しているのは8級の迷宮毛長灰色狼です。

 次は、地下4階です。

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