第60話 オースネコン国
オースネコン国に上陸したクラン”緑の枝葉”は宿を取る事にした。
船が岸壁に横付けされると、下船許可が下りてオースネコン国に上陸する事になった。
港の船乗り場で入国の手続きと入国税(今回は王太子に同道する者として徴集無し)などを済ませ表へと出て来た。
アレクサンドロス王太子一行と一緒に、私たちクラン”緑の枝葉”も船乗り場前の広場へと出た。
王太子様とは、初日の夕食時に声を掛けられてから 何度も話しかけられていた。
船内で二度目に会話した時、自分の事を”アレク”と呼んで欲しいと言われたので、それからは「アレク様」と呼ぶように変えた。
私の事も魔女として名は名乗らず(と言ってもマーヤニラエルと言う名前は知られているでしょうけど)とも偽名のマリィーと呼んでもらう事になった。
「アレク様、この後は王宮へ向かわれますか?」
「私たちは宿を探す予定ですけど」
カー爺から王太子一行の対応は代表して私がするようにと任されています。
彼らの目的も私との友誼を結ぶ事なので、ちょうど良いからと任されてしまいました。
私も母の誘拐に神聖同盟が関係無かった事が分かり、彼らへの対応もこだわりが無くなった気がします。
「殿下、オースネコン国から招くようにする事が、今回の会議を開く国の立場として必要と思います。」
アレク王太子の二人の側近で私たちへの対応で勘違いした方の人が助言してきました。
私たちには早とちりで醜態をさらしたけど、こうして側で見ているとしっかりと側近の仕事を熟す人だと分かる。
恐らくミンストネル国王の伝え方が悪かったのだろう。
「マリィー殿、恐らくオースネコン国は王宮へそなたらを招くと思うのだが、一度宿を取られてから待っている方が良いかもしれませんね。」
アレク王太子もサントスさんの考えを是とした様で、私たちに王宮への同行を求めるより宿を取る事を勧めてきました。
ミンストネル国王の余計な謀のせいで、神聖同盟の王族と闇魔術師討伐隊なる物を結成する事になってしまった。
アレク王太子の話では此処オースネコン国で近々参加する王族を集めて会議が開かれる事になっているそうだ。
開催国がオースネコン国なので、申し入れた事になっている(?)私たちはオースネコン国から参加への要請が在るのだろう。
あくまでも私たちクラン”緑の枝葉”は、闇魔術師の行いを訴え出ただけの傭兵としての立場しかない。開催するオースネコン国は、闇魔術師の非道を知る参考人にして闇魔術師に対抗出来る戦力として表向きは対処する様だ。
裏の意図は私との友誼のためだとしても、国が動くためには明白な理由が必要と成るのだろう。
それにミンストネル国の要人と共に王宮へ行くのも本音(裏の意図)からしてダメなのだろう。
かと言って勝手は出来そうにない、私たちを見張ってる人を数人、私の空間把握で見つけている。
そう言う事で王宮から迎えに来た馬車に乗るアレク王太子と別れ、私たちはオースの港からオース市へと歩き出した。
港も大きかったが川から広がる市街地も広い。何処まで行っても山が無くて、遠くにロマーネ山脈が見える方が次の目的地ミュリネン国が在る場所なのだろう。
道々買い物をする積りで道沿いに開いている商店を覗いて行った。
多かったのが食料品店、次に多いのが以外にも魔物の落とし物を加工する革や工芸の工房に素材に加工する薬品工房、そしてそれらを商う商店だった。
魔物の革は防具以外にも、靴や帽子に財布やカバンなどに加工されて売られていた。
革を良く落とすのは狼系の魔物が残すが、此処には鹿や熊の魔物の革も売っていた。
空間収納を付加した入れ物に魔物の革製品は相性が良いだろうし、幾つか買い物をしても良いかもしれない。
この国に来て初めて見た物として、魔物の一部、内臓や血液などを利用した物があった。
これは魔石を直接破壊する事でしか手に入らない、魔物の体を利用した薬や道具だろう。
初めて見る物なので、店に入ってじっくりと見ようとしたけど、ポリィーに手を引かれて連れ出された。
「マリィー 宿を決めて部屋を取ってからよ」
「既に昼11時(午後4時)も中頃なのよ、今日の泊まる所を決めないと、野宿になるかもよ」
ポリィーの言う事は道理だ。王宮からの召喚が在るのは明日か明後日だろうし、泊まる所が無ければ路上で夜を過ごす事になりかねない。腕輪の部屋はクランだけの秘密だから後を付けてくる人の前で使う事は出来ない。
「おぉ そうだね」
直ぐにでも宿を決めないと、本当に此の大都市の路上で夜を過ごす事になるかもしれない。
「慌てなくても向こうに見えて来たのはホテルや宿が並んだ場所の様だよ。」
慌てだした私にダルトさんが教えてくれた。
ダルトさんが見てる方に大きな建物が幾つも建ってる場所が見える。
近づいて見ると、何だか近寄りがたい気がしてきた。
「大丈夫かなぁ なんだかとても高そうなホテルだよ」
一目で高級ホテルだと分かる様な作りで、道に面した場所には馬車留めが設けられているし、玄関は大きくて豪華だ。
私たちのような傭兵を泊めてくれるか心配になる。
「試しに幾つか良さそうな所に入って見るさ。」
アントさんが近づいて来た大きなホテルへするりと一人離れて、馬車留めの向こうに見える豪奢な玄関へと入って行った。
最初の幾つかのホテルや宿屋は既に予約で満室になってるそうで、アントさんも断られたけど嘘ではなさそうだと言っていた。
考えられるのは各国の王族が集まる会議の随行員の宿泊先じゃあないかな。
それなら歩いていればその内空いてる宿が見つかるだろう。
十ヵ所目でやっと宿が取れた。
一体ネーコネン一族は何人ぐらい集まるのだろう?
神聖同盟の国はロマナム国を入れて11ヶ国。
表向きはミンストネル国の様に代表の王族一人と随員は数人だろうけど、その人たちは王宮かその辺に泊まるだろう。
大手の宿が9件も予約で満室になる様な人数がやって来るのかもしれない。
予定では26日に会議は始まるそうだけど、一日だけなのか何日か続くのか聞いていない。
本当に随員だけでこんなに宿が予約で満室になるのだろうか? 一体何が起きて居るのだろう?
見た目ですが、石やレンガ造りはホテル、木造だと宿の呼び方です。
大手の宿は会議のための各国の要員だけでなく、オースネコン国に集まるダンジョンの産物目当ての商人がミンストレル国で発生したスタンビードで出た産物の取引で集まって来たのと重なっています。
次回は王宮からの呼び出しです。




