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絶望の使徒は心を求む  作者: MTU
第三章 学院交流
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魔剣フラム

 アレスが廊下を疾走、遅れて身体強化魔法を発動したアリアが駆ける。

 壁の奥から淡い灯火の光に照らされた鈍色の輝きが見える。

 直後、目の前から計三本の投げナイフが飛んできた。左側から二人飛びだしてきた。その手に得物はまだ見えない。だが、確実に何か仕込んでいる。

 しかし、そんなことアレスの前では関係ない。

 ナイフを目視し、三本とも躱す。

 すると右の一人が飛びだしてくる。飛びだしてきた黒装束の人物はその片手によく見えるナイフを持っていた。

 

「技か」


 目の前から迫ってくる二人よりも飛び出してきた一人の方が厄介だと判断したアレスは壁を蹴り、右側へ急旋回

 

「アリアはその二人を」

「任せなさい」


 アレスに続いていたアリアが接敵すると、紅の長剣を小刻みに二度振るう。

 相手が武器を隠し持っているのに警戒して消極的な動き、当然目の前の二人には躱される。

 覚悟を決めたからと言ってまだアリアは命の駆け引きに慣れていない。

 だが、それを補うほどの戦意を秘めていた。

 黒装束の人物達はアリアを挟むように移動、袖の中から毒塗りの刃を見せる。

 やっと見せた得物に、ヒリヒリと伝わってくる殺意

 アリアはそんな状況で小さく息を吐き思考を落ち着かせる。そして訓練の際、兄からの言葉を思い出す。

 

「いいか、戦場にあるモノは何でも利用しろ」

「何でもですか?」

「ああ、戦場には使えるモノが豊富に転がっている。土、使い手がいなくなった武器、人、相手でも構わない。とにかく何でもいい。使えると思ったらそれを利用しろ。そうすれば選択肢が増え最適解を見つけやすくなる」


 それは経験から基づく考えだった。

 全ての武器を使えるようになる必要はない。ただ、それらを利用できるようにすればいいだけだ。


 アリアは状況を見る。

 今使えるのはこの剣、だが、ここで力を使ったところでこの挟み撃ちを切り抜けられるわけではない。

 ならばどうするべきか、広い視野を持って利用できるモノを考え、そして捨てた。

 アリアは一人へと向き合い、もう一人へと背後を見せた。

 その行動を好機とみたランディスを侮る暗殺者はその鈍色の刃に殺意を宿らせる。


「私を誰だと思ってるの」


 アリアは紅の長剣へと魔力を流した。


 その時、炎が舞った。


 紅の瞳が魔力により淡い光を宿す。この剣を受け取った時から、『蛮族』ランディスとしてこの場にいる。それは戦意と覚悟の証


 直後放たれるは炎の斬撃、アリアの紅の瞳に映る暗殺者は何が起きたか分からず、その目を瞬かせる。

 暗殺者はその胸を斜めに焼き切られたことに気づかず息絶えた。

 だが、訳の分からない攻撃により仲間が犠牲になったところで背後の暗殺者が止まることはない。その殺意の刃がアリアの肌に接する直前いくつもの水弾が暗殺者へと襲いかかる。


 刃へと一発、衝撃により刃が弾かれ凶器を失う。直後暗殺者を囲うように水弾が殺到、計二十発の水弾が暗殺者の体を打ち付けた。過度な衝撃によりボロボロとなった暗殺者は倒れた。

 

「・・・・・・あれ何」


 セイナは倒した暗殺者に目もくれず、アリアの持つ紅の長剣へと目を向けた。

 剣に宿るのは魔力だが、ほんの僅かに別な何かを感じる。それが何かは理解できないが、そういうときのウンディーネだ。

 

「ランディスの魔剣よ。オリジナルの粗悪品だけど、間違いなくこっち側の力」

「魔剣・・・・・・」


 魔剣とはその名の通り魔力の宿った剣であり、多種多様なモノがあるらしいが、市場に出回ることはほとんどなく希に見かける珍しい代物だ。

 アリアが持つ魔剣の銘はフラム、ランディスの人間しか使うことの出来ない魔剣の中でも特殊な魔剣だ。


 一方、アレスは飛びだしてきた暗殺者を相手取っていた。

 暗殺者はナイフを細かく振るう。

 それに対しアレスもまた呪刀宵闇を細かく動かし受け止めていた。

 互いに大きな振りはなく細かい連撃による攻防

 このまま状況が硬直するわけもなく、突如暗殺者の体が沈んだ。

 暗殺者は逆手に持ち替えたナイフでアレスの腹部を急襲しようとするが、防がれた。アレスがそれを弾こうと力を加えると暗殺者はそれを瞬時に察知し、後退、アレスが呪刀を振るうのを見て再びその懐へと飛び込もうとする。

 一撃離脱、それを繰り返す黒装束の動きは明らかに一撃で殺す暗殺者のそれではない。

 

「戦士か」

「・・・・・・」


 当然、暗殺者は応えない。

 暗部に所属しているだけあって、名前を聞いたところで何も返ってこないだろう。

 このまま続けていても時間稼ぎされるだけだろう。目の前の敵から感じられる殺意は薄いがアレスが隙を見せれば容赦なく命を狙ってくるだけの鋭さを持っていた。

 向こうから仕掛けてくることはない。なら


 アレスはわざと勢いよく呪刀を振るった。

 それに食いついたように暗殺者はその隙を狙ってナイフを突き出した。

 だが、アレスはさらに勢いをつけて呪刀を引き戻し、突き出されたナイフを弾こうとするが暗殺者の挙動が変わる。

 突き出されたナイフが放された。

 凶器への視線誘導、常人ならば殺意の乗った刃が突如放されたことに戸惑いさらなる隙を見せる。そこへ暗殺者は袖の中にしまっている毒塗りのナイフを振るい仕留める。

 暗殺者は投げたナイフへと視線が誘導されたことにより出来た死角からナイフを振るう。

 やったと、そう思えたが暗殺者は忘れている。アレスが只人ではないことを

 

「そう来るよね」


 その言葉に暗殺者は思わずハッとする。

 アレスの視線はすでに放り出されたナイフから外れている。いや、最初からこうすることが分かっていたように外されていた。

 暗殺者は咄嗟に後退しようとするがそれは悪手、どうやら初めてのことで想定外だったらしく混乱している。


 アレスは腰に宵闇を構える。

 その構えを暗殺者は知らない。



―――極致一刀・閃



 放たれた斬撃は暗殺者を切り裂いた。

 

「残り一人」


 残り一人はまだ姿を見せていない。

 アレスは左側の通路へと入った。

 

「これは・・・・・・」


 アレスは立ち止まった。

 通路の壁際、そこには黒装束の人間が一人、胸にナイフを刺されて血を流し寄りかかっていた。

 

「自殺か」


 アレスは死体の様子を見ようと近づくと、倒れていた暗殺者の目が見開かれた。

 暗殺者の魔力が暴走、意図的に動かされる。自爆だ。

 

「宵闇」

「はい」


 闇の糸が瀕死の暗殺者の下から無数に現れすぐさま闇繭の中へと閉じ込めた。直後闇繭の中で暗殺者が破裂する。

 魔力による自爆攻撃

 暗殺者は油断したところで、自爆に巻き込みアレスを排除しようとしただけでなく、通路を爆破して通れないようにしようとしていたのだろう。

 咄嗟の判断で未然に防げたのは良かったが、これで的が自爆も視野に入れていることを考慮しなくてはならなくなった。

 

「面倒なことになりましたね」

「ああ」


 アレスは呪刀宵闇を鞘へとしまった。


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