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絶望の使徒は心を求む  作者: MTU
第三章 学院交流
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虫型魔人

 セイナが展開していた水弾の内、放たれたのは五発

 それぞれが直線に突き進み虫へと襲いかかる。

 虫は足を大地に突き刺していることで動くことができない。向かってくる水弾をまともに受けた。

 

「カチカチ」


 声を出すことのできない虫は痛みに牙をかき鳴らし顔をのけぞらせる。そして足を大地から引き抜いた。

 水弾は魔法で発生させた水を圧縮して弾にする魔法、その威力は圧縮させた水の量で決まるがセイナの放った水弾は殺傷能力が低く打撃攻撃にしかならない。それ故に虫はたいした傷を負っていない。

 

「・・・・・・面倒」


 セイナは残り二十五発となった水弾を待機させる。

 虫が放つ魔力の塊を受けるのはまずい。爆発により周囲に被害が出てしまう。せっかくアレスが被害が出ないよう立ち回っているのに、自分が参戦して被害が出たとなれば申し訳がない。

 

「カチカチカチ」


 牙を鳴らし、こちらを威嚇してくるが関係がない。

 セイナはゆっくりと歩き出し徐々に加速する。最終的には小走り程度の速さで虫へと近づいていく。

 虫は自身の体を地面すれすれまで下げる何らか構えを見せる。

 まさかあの体で近接戦でも仕掛けてくるのかと考えたがどうやら違うらしい。

 折り曲げられた六本の足が一気に伸び後方へと高く飛び上がった。近づけさせないつもりなのだろう。

 空中に飛び出した瞬間、待機させいていた水弾を六発、それぞれ足の節へと放った。

 水弾は吸い込まれるようにして足の節へと衝突すると爆発、衝撃が足の節へと大きなダメージを与える。

 それだけでは終わらない。


 六発発射させた直後、三発の水弾を発射、放物線を描きながら空へと昇り落ちる。落ちた水弾は虫の体へと衝突し爆発、衝撃で虫が落下する。


 残る水弾は十六発、これならば残りの水弾は使わなくても平気かとセイナは鈍色の刃を大地と水平にさせて構える。

 だが、この程度の攻撃で倒れるほど魔人は甘くはない。

 それに虫型の魔人の本領は防御能力にない。

 落下してくる虫は駆けてくるセイナを補足すると、その口元に魔力の塊を生成

 

「させない」


 空中で落下しているため周囲への被害を気にせずあの魔力の塊を対処できる。

 一発水弾を発射、水弾は魔力の塊を穿つ。白い魔力の輝きが空で爆ぜた。

 あれだけの威力を持った魔力を受けて耐えられるはずはないと、そう勘違いをしていた。着目点を間違っている。

 虫型の魔獣はその性質上魔力を高めるのと同時にとにかくしぶとい。

 白の輝きが消えると中から姿を見せたのは足を数本なくしボロボロになった虫、ただその周囲には先ほどと同様の魔力の塊が五つも生成されていた。

 すでに発射準備のできたそれはすぐにでも放つことができるだろう。

 セイナは読み切れていなかった。


 もう発射される。


 今水弾を発射して相殺しようとすれば、発射される魔力の塊があらぬ所で暴発してしまい被害が出てしまう。


「お願い」


 セイナは見ているであろう“彼女”に対し語りかける。

 すると周囲の水弾の水が揺らいだ。

 直後、水弾はうなりを上げ五発がそれぞれの魔力の輝きへと直進した。だが、それと同時に魔力の塊が発射される。

 このまま水弾と魔力の塊が衝突すれば暴発する、はずだった。

 水弾が魔力の塊と衝突する直前、水弾が大きく弾け圧縮された水が解放される。解放された水はまるで生き物のように蠢きだし魔力の塊を包み込んだ。すると徐々に水が包み込んだ魔力ごと圧縮されていき消失した。

 それは明らかに水弾からかけ離れた力であり、水そのものを自在に操る力


「へぇ」


 いつの間にか戦闘を終わらせていたアレスがその様子を見ていた。

 セイナはそれに気づかず、残る水弾を放ち魔力の塊を生成する隙を与えない。

 水弾に殴られ続ける虫は徐々に高度を落とし地面に衝突する直前、その眼にセイナの姿と共に鈍色の軌跡が映った。

 次の瞬間、虫の頭が切れる。

 血は出ない。叫びもしない。脳が切れたことで一切の機能を失った魔人はそのまま灰となった。


 セイナは血のついていない剣を鞘に戻すと、一切音のない大聖堂へと目を向けた。

 

「すごいね。あんな水弾の使い方初めて見たよ。というかどうやったの」


 何故か灰をかぶったアレスが虚無的に尋ねてくる。

 見られていたかと思うと数巡して、答えを出す。

 

「・・・・・・秘密」

「そっか」

「・・・・・・なんで灰まみれ」


 話をそらしたつもりはないのだが、自然と気になっていたのはアレスの姿を指摘する。

 アレスは自身の姿を見て苦笑する。

 

「ちょっと踏み込んで切ったら思い切り灰をかぶっちゃったんだ」


 セイナに虫を任せ数瞬後、踏み込み極致一刀によって獣を倒したのだが案の定、踏み込んだことで切った獣の上半身が覆い被さるように倒れ、その瞬間に灰となってしまった結果、上から降られたのだ。

 

「魔人の灰はこのまま放って置いても害はないと思うけど一応証拠として回収して置いた方がいいね」

「・・・・・・必要ないと思う」


 セイナはアレスを指さしながら答えた。

 アレスは現在全身に魔人の灰をかぶっており、わざわざ散り散りに落ちている灰を回収せずともその制服についた灰を提出すれば終わりだ。

 

「それもそっか。とりあえず、こいつらは縛っておくのがいいね」


 床に転がり気絶している襲撃者たちを見る。まだ生きているため拘束しなければ何をするか分からない。

 

「レインさん」

「終わったのですか」


 大聖堂からレインの声が聞こえてくる。

 

「終わりました。それで、よければこの件を騎士団に報告していただけませんか。さすがにこの数を教会で捕縛しておくことはできませんよね」


 レインは扉を開け大聖堂から出てくる。そして、外の光景を目のあたりにして驚きよりも関心を見せた。

 外には襲撃者が転がっているだけで物的被害は虫が固定するために足を突き刺した石畳の道のみ、これだけの数をこうもあっさり無力化するとは王国の英雄は伊達ではないなと実感した。

 

「分かりました。すぐに知らせましょう」

「それと縄を、こういう手の奴は捕らえても自殺しようとしますから多めにお願いします」


 あの死戦場でもこうして特攻を仕掛けてくる人物たちは皆、捕らえても自ら命を絶っていた。だから自殺防止のために身体検査に加え、舌をかみちぎれぬよう口に縄をかけておくのだ。

 

「縄ですね。大聖堂の騎士たちに持ってこさせましょう」

「ありがとうございます」


 レインがこの件を連絡しに行っている間にアレスはというと

 

「持ってきました」


 大聖堂から出てきた騎士が縄を多めに持ってきた。

 

「じゃあ、それ使って縛りましょう。教えるので手伝ってください。あ、セイナも手伝ってね」

「・・・・・・私も?」

「そうだよ」


 皇女であるセイナに対し賊の捕縛の手伝いをさせるなんて不敬だと捉え兼ねられないがそこはアレス、そんなつまらないこと気にしない。それはセイナも同じだった。

 

「・・・・・・分かった」


 アレスは二人に教えながら襲撃者たちを捕縛していった。


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