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絶望の使徒は心を求む  作者: MTU
第三章 学院交流
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試合開始

「勝者、アーク学院タイタス」


 ステージの上で押し出したディア学院の生徒を見下すタイタスは剣を鞘へと戻した。

 一回戦はタイタスの圧勝だった。その筋力によるパワーで圧倒した。


 一方

 

「主様、何かお食べになりますか」

「別にいいかな。宵闇が食べなよ」

「主様が食べないのならいいです」


 待合室に用意されていた水道付近には売店で販売されているクッキーが置いてあり、学院側の気の利いた采配だろうとアレスと宵闇は思っていた。

 そんな二人はタイタスの試合が始まるも、一切の興味を持たず二人で談笑したり、部屋の中を見て回ったり、そしてついには

 

「暇だね」

「暇ですね」


 二人して遠くを見つめぼうっとし出した。


 もうやることがない。


 やることを見つけようにも、特にやりたいこともなく、眠いわけでもないため寝ることもできず、唯々待合室から見える小さな空を流れる雲を見るだけ

 それを呆れた様子で見ていたアリアは注意しない。

 この二人にとってこの戦いが気の抜けたモノであるのは間違いないのだから

 実際、タイタスの戦いは学生の範囲にとどまっており、特に突出して評価すべき点が見当たらない。


 ただ、クラスメイトたちは盛り上がっている。

 敵側のディア学院の生徒は剣を杖代わりに立ち上がると痛みをこらえながら待合室へと戻っていった。

 

「次の生徒出てきてください」

「はいはい」


 けだるげに出てきたのはサルムだった。

 サルムはゆっくりとステージの上に上る。

 そんな態度のサルムをタイタスはきつく睨む。

 

「随分余裕そうだな」

「あ?当然だろ。お前みたいな脳筋に負けるわけがない」

「なんだと?」


 脳筋呼ばわりされたことにタイタスの眉間にしわが寄る。

 そのいらだった態度にサルムはタイタスに見えないよう顔を下げ、かかったと、にやりと笑みを浮かべた。

 

「だぁかぁらぁ、脳筋なんかに負けるわけがないって言ったんだ」


 ニヤニヤしながら煽るサルムにタイタスの苛立ちが止まらない。

 

「そうだ。そんな脳筋やっつけちまえ!」

「サルムさん、頑張ってください!」


 ディア学院の生徒たちがサルムの挑発を援護するように野次を飛ばす。

 

「はまったわね」


 その様子を見ていたアリアがもう終わりねと、この戦いの勝敗を予見した。

 タイタスは顔を真っ赤にして、今にも怒りでその豪腕をサルムに向けて振り下ろしそうになるが、まだ試合は始まっていないと自制する。しかし、すでに思考は冷静ではなく試合が開始されればすぐにでもその拳を振り下ろすだろう。

 タイタスが直情的であったのもあるが、さすがは外交を担うロイン伯爵家の子息、ただ本来なら交渉術に生かすべきその口を安い挑発に使っているのは残念なことだ。

 

「始め」


 ゼンの合図と共にタイタスはその拳を怒りにまかせ振り下ろした。

 それをサルムは後退して躱す。

 

「おいおい、どうした脳筋、とろいなぁ」


 煽る

 タイタスは剣を振るうがそれもまた後退され躱される。

 

「動きが単調だぜ、やっぱ脳みそまで筋肉なんだな。だからそんな動きしかできないのか。あぁ、なるほどぉ、お前本当は人じゃなくてただの筋肉だるまだろ」

「黙れ!!」


 タイタスはその煽りに屈し、怒りでサルムしか見えなくなった。

 無暗に拳と剣を振るいサルムを倒そうするせいで自分が徐々に前進していることに気づかない。

 一瞬、サルムの動きが止まる。

 それを隙とみたタイタスは勢いをつけた拳を放った。

 

「終わりだ!」

「はい、ばぁか」


 しかし、サルムが横に躱したことによりその速さを伴わない遅い拳は空を切り、勢いを余らせた拳に引っ張られタイタスの体制が崩れる。

 そこへ横からサルムが足を引っかけると、タイタスは前へと倒れた。

 そこでようやく気づく。そこがちょうどステージの端であることに

 タイタスは顔面からステージの上から転げ落ちた。

 

「勝者、ディア学院サルム」


 勝者宣言でディア学院の生徒たちが湧き上がる中。サルムはステージ下で転がるタイタスを見下す。

 

「これで代表?レベル低すぎだろ」


 試合は終わった。しかし、タイタスの怒りが消えるわけではない。

 タイタスは立ち上がると勢いよく地面にたたきつけられたこともあり花から血を流し顔中が土まみれだった。

 

「ぷ、あはははは、なんつう滑稽な顔してんだよ。ははは」


 思わず笑わずにいられなくなったサルムにタイタスの怒りがますます膨れ上がる。

 

「貴様ぁ!!!」


 タイタスは試合が終わったのにもかかわらずステージに勢いよく上がるとその拳をサルムめがけて放った。

 だが、その動きは直後制止される。

 

「落ち着け」


 いつの間にか間に割って入ってきたカムがその拳を受け止めていた。

 

「それ以上は罰則を与えることになるぞ」

「っ・・・・・・ふぅ、すみません」


 タイタスは落ち着きながら拳を下ろしたがその視線は鋭くサルムを睨んでいた。

 

「それからお前、煽りすぎるな。加減をしれ、でないと今みたいなことになるぞ」

「うっす」


 全く反省の色が見られない返事をした。サルムにこいつの教育はどうなっているんだとカムは内心呆れていた。

 

「はぁ、タイタス、戻って休んでろ」

「はい」

「三回戦の準備を」

「あ、はい、次の選手出てきてください」


 カムに促されゼンはすぐに進行に戻る。

 アリアは、次は私の番だと一度息を吐き心を落ち着かせる。

 

「行ってくるわね」

「頑張って」

「せいぜい苦戦することだ小娘」


 アレスの好意的な声援と宵闇の嫌みを聞きアリアはステージへと向かった。

 タイタスが横切るも何も言わない。失意の中、唯々痛みをこらえて歩くだけ

 

「誰かと思えば、昨日の蛮族のカスじゃないか」


 ステージに上がると早速サルムが煽ってきた。しかし、今のアリアにそんな煽りは通じない。

 

「吠えることしかできない弱虫が何言っても気にならないわ」

「っ、お前」


 逆に煽り返すとはっきりとサルムの表情に苛立ちが浮かんだ。

 その瞬間アリアは分かってしまった。彼が煽りに弱いことに、煽ることが自分の専売特許だと勘違いして体制のない阿呆にもう負ける気がしなかった。それよりもこれが子息でロイン伯爵家は大丈夫なのかとロイン伯爵家を哀れに思ってしまう。

 

「はぁ、早く始めましょう。ゼン先生、早くしてください」


 もうこれ以上の会話は必要ない。

 唯々、サルムを惨めに思ってしまうだけ、そんなの時間の無駄だ。アリアはゼンに早く試合を始めるよう促した

 

「あ、はい。それでは三回戦、始め」


 アリアは軽く剣を構える。

 

「どうした?俺と会話するのがそんなに嫌なのか。図星を突かれて」

「はぁ」


 もう会話の時間は終わった。にもかかわらず煽ろうとしてくるサルムにため息以外何も出てこない。

 

「っ、なめるなよ」


 サルムはアリアの哀れむような態度が気に食わず苛立ちを覚えた。相手を煽ろうとしたのに自身が苛立ちの中に閉じ込められてしまった。

 

「俺はお前みたいなカスに負けないんだよ」


 サルムが仕掛けた。


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