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絶望の使徒は心を求む  作者: MTU
第三章 学院交流
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井の中の蛙

 ディア学院との交流戦当日

 アレスたちは説明を受けた大教室へと集められていた。

 

「おう、全員いるな。それじゃあこれから、え~、ちょっと待ってろ」


 やってきたカムは早速手間取り、教卓にこの学院の地図を取り出し、集合場所を確認する。

 

「えっと、闘技場は・・・・・・そこか。おし、移動するぞ、準備しろ」

「先生、今回の交流戦のルールの説明はないんですか」

「向こうで説明するだろ。それよりもう時間がないんだ。急ぐぞ」


 生徒たちは皆、時間がないのはあんたが集合時間に遅れたからだろと思ったがいつものことなので口には出さず内心呆れる。

 生徒たちはカムに続き大教室を出ると外にあるという闘技場へと向かった。

 ディア学院の校舎はこの縦に伸びる塔だけで外にはグラウンドや訓練場、多少激しい戦闘が許され観戦席も設けられた闘技場があった。

 その闘技場が今回の交流戦が行われる場所だ。


 闘技場は塔のような校舎の裏にあるため普段は見えることはないが、その闘技場を目の前にするとその迫力に圧倒される。

 校舎が高すぎるが故に気づきづらいがこの闘技場もまた立派だった。

 それは中に入ってみてもよく分かる。


 約一万を越える動員数を誇る観客席、整備された通路、しかも何故か売店まで用意されている。

 そんな闘技場の戦場を越えた先、そこにはすでに観客気分のディア学院の生徒がいた。ゼンが受け持つクラスだ。

 ゼンはカムたちの存在に気づくと一度会釈して、こちらに近づいてきた。

 

「おはようございます。本日はよろしくお願いします」

「ああ」

「では早速・・・・・・ん?どうして交流戦に出る生徒の方々がここに?」


 ゼンは交流戦に出るはずのアレスたちがこの場にいることに疑問を浮かべた。

 その疑問に生徒たちはカムへと疑念の視線を向ける。またやったかこのろくでなしと

 

「何も説明してないからな」


 何の悪びれもなく当然だと言い切ったカムにもう誰も何も言わない。

 

「説明頼む」

「え、ええ、では説明を」


 困惑しながらもゼンは説明する。

 今回行われる交流戦は両校三名ずつ出場する勝ち抜き戦、ルールは単純、相手を戦闘不能、もしくは中央に設置されたステージから落とせば勝利となる。殺しは当然無し、危険だと判断した場合カムやゼンが止めに入る。得物は自前の物でも、闘技場の控え室に置かれている模擬戦用の武具が使用可能、ただし、自前の武器を使用する場合、刃を潰す。もしくは剣ならば鞘に入れて使用することが条件だ。

 

「順番は好きに決めてください。審判は私が務めます。それから選手の方はステージの近くに用意されている観戦室でお待ちください」


 闘技場の内側面に壁がガラス張りになっており中に待合室があった。ゼンの生徒たちが座る場所の下にある待合室にはすでに三名の生徒が待機していた。その中にはアレスにとって見覚えのある人物が

 そうして見ていると深い蒼の瞳と視線が交わった。

 

「アレス、ぼうっとしてないで早く行くわよ」


 アリアの賭け声で視線を外したアレスは、アリアと共に階下にある待合室へと向かった。

 

「まったく、あなたなら心配いらないだろうけど戦いの前にぼうっとしないで」

「うん」

「本当に分かってるの」


 反射的に返された返事に訝しむがこれがアレスだと割り切る。

 待合室に辿り着くとそこには先に来ていたタイタスがいた。タイタスは待合室に用意されていた模擬剣を手に取り早速手になじむか確かめていた。

 

「俺が先に行く。いいな」


 得物が決まったタイタスが有無を言わせぬよう圧を放ちながら言うが二人には何の圧にもならない。

 

「どうぞ」

「僕もかまわないよ」

「俺一人で勝ち抜いて終わらせてやる」


 そんな風に“不可能”なことを息巻いて出て行ったタイタスに宵闇は小さく吹き出してしまった。

 

「井の中の蛙、あれはすぐに死にますね」


 戦場に出たらと、自分の実力と相手の実力を測れない馬鹿が滑稽で仕方なかった。

 タイタスがいなくなったことで宵闇は普通に会話する。

 

「そんなに差があるの?サルムレベルの生徒相手だったらあいつでも十分戦えると思うけど」

「はぁ、これだから小娘は」


 やれやれとわざわざ姿を見せため息を吐く宵闇にアリアはイラッときた。

 

「ただの生徒?本気で言ってるなら、戦場ですぐ死ぬぞ小娘」


 だがその苛立ちはすぐに消える。

 宵闇からの嘘偽りのない言葉に体を硬直させる。彼女はその小さな容姿で時折忘れてしまうが『呪刀』だ。数々の戦場を知るモノだ。

 

「相手の力量を見ろ。あれは警戒するに値するやつだぞ」


 その宵闇がそこまで評する人物が帝国側に控えている。

 

「まぁ、せいぜい苦戦することだな」


 意地の悪い笑みを浮かべ舌を出すと宵闇はそっぽを向いた。

 

「あー!!」


 そしていきなり大声を出した。

 

「あ、主様、な、何を」


 先ほどまでの冷たい態度が嘘のように酷く狼狽し、模擬剣を選ぶアレスを見た。

 

「何って、武器選んでるんだけど」

「・・・・・・浮気です。また浮気ですか!」


 宵闇は瞳に涙を浮かばせ叫ぶ。

 

「どうして私ではなくそのようなゴミを選ぼうとするのですか!どうして、そのゴミのどこがいいのですか!」


 その女のどこがいいのよと浮気現場を見てしまった女のように騒ぎ立てる宵闇にアリアは呆気にとられる。

 

「手になじむ」

「殺します。へし折ります。消します」


 凄まじい殺意と共に禍々しい闇を模擬剣に向ける。

 禍々しい闇が小さな花弁の形を作り出そうとした時、アレスは宵闇の頭に手を置いた。

 

「なんですか。今更弁明ですか。私は今すぐその身の程知らずのゴミに現実を教えるんです。邪魔しないでください」

「いや、邪魔するよ。そもそもこの戦いじゃ君を使えないんだ」

「私を見られると困るのは分かりますけど、それなら幻で私の姿をただの模擬剣に見せればいいだけじゃないですか」

「君は鞘で戦おうとすると怒るだろ」

「今は非常事態です。主様の手に他のゴミが握られるよりはよっぽどましです」

「そう?ならいいけど」


 あっさりとアレスが模擬剣を元の場所に戻すと宵闇は上機嫌に笑みを浮かべる。

 

「何見せられてるのかしら」


 もはや、この二人のテンションについて行けないアリアは戦い前だというのに何とも絹抜けた息をつき、自身の模擬剣を選ぶのだった。


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