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絶望の使徒は心を求む  作者: MTU
第一章 絶望の使徒
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ダンジョン探索記

「遅かったわね」

「ちょっと探すのに手間取っちゃって」


 アレスが戻る頃にはすでに他の三人が見つけてきた本を持って集まっていた。

 

「そ。それじゃあ何から読む?」

「自分たちが持ってきた本を読んで、後から情報をすり合わせるのがいいと思います」

「いいわね。そうしましょう」


 リーゼロッテの提案を受け、それぞれ自分たちの持ってきた本を読む。

 魔物に関しての本とはいえ、情報のほとんどは推察や憶測といった類のものだった。何かいい情報はないかと読みだしてから約一時間後、頬杖をついて本を読んでいたアリアの手が止まった。

 

「ねぇ、ちょっとこれ見て」


 まだ読み終わっていないのにもかかわらず本をテーブルの中央に置きとある文を指さした。

 その文には『魔物は追い込まれると捨て身の行動をとることが多々ある。そのせいか、魔物の手によって殺される者が後を絶たない』と

 

「これは、確かに有力な情報ですね」

「魔物についてはほとんど解明されていないのによくこんな習性を掴めたな」

「調べた習性というよりも経験則だと思うわ。ほらこの本のタイトル、ダンジョン探索記だし」


 経験からくる情報は馬鹿にできない。この情報は信用に値するとみてよかった。

 

「この記述とかはどうなの?」


 アレスはふと、視界に入った一文を指さした。

 そこには『※魔物の中には群れを形成する者も存在する。その魔物たちは刺激しないのが吉、もし刺激すればただでは済まないだろう』と

 

「怖いわね」

「だけど無暗にそんな危険な行動する奴なんていないだろ」


 未知の塊ともいえる魔物に常識的に考えてもやばそうなことをする奴はいないだろう。わざわざ本から教わらなくても理解できる。

 

「そうでもないみたいですよ。どうやら欲を見たパーティーがよくやる行為らしいですね」

「バカバカしいな」


 ダバンは辛辣な意見を口に出す。彼の性格からして堅実的でない行為は理解に苦しむのだろう。

 

「欲をかくって、魔物を倒しても魔石しか落とさないでしょ」

「そうですが、魔石は魔力の密度、大きさ、それから形、この三つの要素が嚙み合えば相当高値で取引されていますよ」


 魔石は魔道具を作るにあたって必ず必要になる材料だ。魔石の質によって魔道具の性能が決まり、魔石の質がいいほど高性能な魔道具を作ることができる。そのため質のいい魔石は商人たちの間で、高値で取引されている。

 

「へぇ、そうなんだ」


 それならば欲を見る者が出てくるもの頷ける。

 

「魔石の取引なんて私たちとは無縁の話ね」

「そうですね。お金を稼ぐのにわざわざ魔物を狩る必要はありませんからね」

「「……」」


 そんなお嬢様たちの言葉を庶民であるアレスと貴族ではあるがあまりお金に余裕があるわけではない下級貴族のダバンは無言で聞いていた。

住む世界が違う。その一言に尽きる。

 

「話が逸れちゃったわね。私が伝えたかったのはこれだけよ」

「なら、僕も面白いの見つけたんだけど」


 その後、四人はそれぞれ読んだ本の中で見つけた有用な情報を交換し合った。

 やがて時刻は夕刻になり外から入ってくる僅かな日は、ほのかに赤くなっていた。

 

「はぁ、疲れたわ」


 全ての本の情報を交換し終えアリアは椅子を少し後ろに傾けながら大きく伸びをした。

 

「はしたないですよ」

「軍家の娘にそういうこと言う?」


 まともなようでまともでない反論にリーゼロッテはため息を吐いた。

 

「軍家といっても公爵家でしょう。まったく」


 やれやれと額に手を置いた。

 

「それより、もう暗くなってきたから早く帰らないと」

「それもそうだな」

「確かにこれ以上遅くなったらカレンさんが心配するかも」


 急遽決まったことで何も知らせていない手前、早く帰らねばならない。

 

「なら遅くなってもいいじゃないですか」

「え?」


 誰かの黒い呟きにアレスは耳を疑った。キョロキョロと周りを見渡すも本を整理するダバンに体を楽にするアリア、そしてニコニコと笑みを浮かべるリーゼロッテ

 

「空耳か」


 不思議なこともあるなと暢気に呟いているアレスの裏で安堵の息を漏らす少女が一人

 

「さっさと本を戻して帰りましょう」


 その日は本をすべて元の場所に戻し解散となった。


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