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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
8/44

第008話 姪は修道院の邪龍とともに 3

 コトハの一撃が重い音をあげた。

 予想外の攻撃の威力にデオシスは大きく口を開けて痛みに吠えた。


「ラナン姉様!」


 その隙を逃すはずもなく、リナリーはラナンを救い出すとぎゅっと抱きしめた。


「リナリー、ごめん、心配かけたね」

「ラナン姉様、無事でよかったです」

「コトハ、回復をありがとう。おかげで助かったよ」


 コトハはふるふると首を横に振った。


「後は、リナリーとボクに任せて。

 全力全開で行くよ!」

「お姉様、任せてください!」


 ラナンが深く剣を構え、リナリーがそれを守るように盾を構える。


「コトハ、ラナンを助けていただいてありがとうございます。

 これを受け取ってください」


 コトハの目の前にスキル取得のウィンドウが現れた。


『スキル:ハイヒールを取得しました。』

『スキル:パラライズストライクを取得しました。』

『スキル:ポイズンストライクを取得しました。』

『スキル:スローシンプトムを取得しました。』

『スキル:デクライシスを取得しました。』

『スキル:デキノシスを取得しました。』


『スキル:リゼより認めらし者を取得しました。』


「これは?」

「わたくしが知っているものです。

 さぁ、もう少しです! 共にいきましょう!」


 リゼはにこりと笑うと、デオシスの方に向き直った。

 コトハも同じようにデオシスを見た。


 前衛職であるラナンとリナリーがデオシスと戦っている。

 重い一撃をリナリーが受け、その隙をラナンが斬りつける。


 その完璧なコンビネーションは確実にデオシスの体力を奪っている。


「でぇやああああぁ!」


 ラナンの強烈な一撃でデオシスの体力ゲージが赤くなった。


「あと少しです!」


 リゼがそう発破を掛けた瞬間、デオシスが咆哮を上げた。


「人間どもがああぁぁぁぁ!」


 デオシスを中心に衝撃波が走り、全員が散り散りに飛ばされた。

 離れてはいたが、コトハもその衝撃を受けて大きく後ろに飛ばされた。


「このデオシスをここまで追い込むとは。

 だが、ここまでだ! 虚無の磔刑(クルーシフィクション)!!」


 倒れこんだ全員に黒い鎖が巻き付き地面に縛られた!


「なにこれ」


 コトハがそれを振りほどこうとするが、動くたびに身体を締め付け起き上がることもできない。


 見下ろすように飛び上がると、デオシスは全体に向けてブレスを吐いた。


「きゃああああぁ!」


 ラナン、リナリー、リゼが叫び声をあげる。

 見る間に、全員の体力が削られていく。

 今こそ、自分の出番なのだが、散り散りに飛ばされた全員を回復するためには、ワイドヒールを使うしかない。


 だが、いま、コトハが使えるワイドヒールの範囲ではリゼが精一杯だ。

 ラナンとリナリーはワイドヒールの範囲外にいる。


「どうしよう……」


 目の前がデオシスの炎に包まれ、容赦なく体力が赤く変わっていく。


 どうしよう。

 どうすれば。


 リアヒールもハイヒールも単体で、自分のMPでは連発できない。

 MPも底上げして、ワイドヒールの範囲も広げる。

 そんな都合の良いことができるはずもない。


 おじさんは修道院は簡単なものといっていた。

 そんな簡単なイベントですらクリアできないのか。

 自分の腕に落胆した。


『さて、コトハちゃんはどんなプレイヤーになりたい?』


 ふと、おじさんがそういった言葉を思い出した。


『そうそう、まぁ、大雑把に言うと、前線で戦えるヒーラーになりたいか、後方で支援に徹するプレイヤーになりたいかだな』


 おじさんと話していた話だ。


 今は分かる。

 私は3人を救いたい。

 だから、後方で支援に徹する。


『そうだな。基本はINT(知力)で効果をあげて、MPの絶対量を増やしたいからたまにMEN(精神)をあげるくらいかな。MEN(精神)はMPの他に状態異常の判定や範囲魔法の判定だったりするんだ』


 急いでステータス画面を開く。

 ステータスポイント。

 

 画面の表示には残りのステータスポイントが20と出ている。

 そのすべてをMEN(精神)と書かれている部分に振っていく。

 MEN(精神)はMPの他に状態異常の判定や範囲魔法の判定に利用される。


 おじさんの言葉通り、ステータスポイントが1振られるごとに、MPが飛躍的に伸びていく。


 最初は指折り数えるほどしか打てなかったリアヒール。

 が、今ではそれがかすんで見える。


「ワイドヒール!」


 コトハがワイドヒールを使った瞬間、辺り一面が一気に光り輝いた。

 その瞬間、ワイドヒールで減ったMPが一瞬で回復した。


 炎に囲まれ3人の姿は見えなかったが、宙に浮いている体力ゲージだけは見える。


「ワイドヒール! ワイドヒール!」


 デオシスのブレスの減りよりもワイドヒールの回復量が上回った。

 赤くなっていた体力が今では元の緑色に戻っている。


 デオシスのブレスが終わり、炎に包まれた地面を満足そうに眺めた。


「ふん、少しばかり本気を出してしまったか。

 小さき者どもよ。我を怒らせたことを闇の炎の中で後悔せよ!」

「後悔するのはあなたのようですわ!」


 その瞬間、炎が一瞬で消え失せた。


「コトハさん、ありがとうございます」


 リゼがそういった。

 ラナンもリナリーも小さく手を振って私に笑いかけた。


「なっ、我が、ブレスに無傷だと!」

「わたくしたち、白百合鉄束団はあなたには負けません!

 決めなさい! ラナン」

「はい! お姉さま!」


 ラナンの体剣がデオシスの首を切り落とした。


「き、貴様ら……」


 デオシスはそう言葉を残すと地面に倒れこんだ。

 その瞬間、辺りの風景は先ほどまでいた小部屋に戻っていた。


「お、終わったんですか?」


 コトハが心配そうにそうつぶやいた。

 ラナンとリナリーも不安そうな顔をしている。


「えぇ、終わりましたね」


 リゼの言葉で、全員が一斉に笑顔になった。


「やったよ! ボクらすごいんじゃない!?」

「凄いですよ。だって、原書に記される一柱ですよ!

 それが私たちだけで」

「ラナンとリナリー。あなたたちとならできると思っていました。

 そして――」

「だね!」

「そうです」


 3人がコトハを見た。


「あなたのおかげです」

「わ、私ですか?」

「最後のワイドヒール凄かったよね。

 あのブレスの中、ボクたちを生かしたんだから!」

「そうです。危ないところを何度も救ってくれました」

「2人のいう通りです。

 コトハ、あなたがいなければきっと負けていたでしょう。

 いいですわね?」


 リゼが2人のほうを見るとそう確認した。

 2人は無言で頷いた。


「コトハさん、これを」


 その瞬間、コトハの目の前にスキル取得のウィンドウが現れた。


『スキル:ラナンより認めらし者を取得しました。』

『スキル:リナリーより認めらし者を取得しました。』


『条件を達しました。リゼ、ラナン、リナリーに認められし者が統合されました。

 新たにスキル:三聖女より認めらし者を取得しました。』

『クエスト:修道院の秘密を知るをクリアしました。

 特別達成報酬を受け取りました。

 スキル:白百合鉄束団を取得しました』


「これで、あなたも白百合鉄束団の一員ですわ」

「これ、ボクからね」


『スキル:ジャッジメントパニッシャーを取得しました』


「コトハは前衛向きじゃないからね。ちょっと癖があるけど面白いスキルだよ」

「じゃ、じゃあ、私からはこれを!」


 リナリーが慌ててコトハの方を向いた。


『スキル:オートリフレクトを取得しました』


「初撃だけですけど確実に攻撃をはじきます。

 ヒーラーでも迷惑はしないはずです」

「最後にこれは全員からです」


 リゼはそういってコトハに何かを手渡した。


『アイテム:白百合の証を取得しました』

『アイテム:聖女の聖骸布を取得しました』


「皆さん、ありがとうございます!」


 コトハは頭を下げた。

 フッと、一瞬あたりが無音になった。

 少しだけ違和感が走ったが、コトハ気にせず頭を上げて3人を見ようとした。


「えっ?」


 視線を外した僅か一瞬、頭を上げたその時には3人の姿は目の前になかった。


「コトハさん、こんなところにいたんですか!」


 がちゃりと扉を開ける音共に、先生役の修道女が入ってきた。


「皆さんはすでに集まっています。あなたも来てください」

「あ、あの」

「何ですか?」

「ここに、リゼさんたちが」

「リゼ? 三聖女のですか?

 前半の講義を聞いていましたか? 三聖女はこの聖堂の成り立ちからですね――」


 先生役の修道女の話が延々と続いている。

 コトハはその話を半分に聞きながら彼女たちとの戦いを思い出していた。




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