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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
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第006話 姪は修道院の邪龍とともに 1

「このように、三聖女の活躍により――」

「ふわぁぁ」


 かみつぶせなかったあくびが漏れてしまった。

 コトハは思わず、自分の口に手を当てた。


 何をするかと身構えていたが、やっているのは学校の勉強と変わらない、精霊修道院の説明と治癒スキルの説明だ。

 最初にリアヒールという回復スキルを覚えたまでは面白かったのだが、後はずっとこんな調子だ。


「さて、次は」


 先生役の修道女の言葉にようやく眠けが吹き飛んだ。

 そろそろ実技だろうか。

 さすがに、ゲームをしに来て勉強は少しつらかった。


「祈りの台に行きましょう」


 教室から音楽室へ行くかの如く、同じように僧侶スキルを得ようとしていたプレイヤーが案内に従って机から立ち上がる。


「もしかして、また見学かな……」


 コトハはつまらなさそうにつぶやいた。

 ほかのプレイヤーも同じらしく、生気ない顔つきでぞろぞろとついて言っている。


 長い廊下を歩くと祈りの台と呼ばれる聖堂に案内された。


「ここは私たちが崇める治癒の精霊を祀る聖堂です。こちらを見てください――」


 話が長くなりそうなので、視線が思わず泳ぐ。

 と、集団の後ろを修道女らしき人が通り抜けていった。

 何気なくそれを目で追っていると、彼女は床に白いハンカチを落とした。


「あっ、ハンカチ」


 コトハの言葉には気づかなかったようだ。


「では、次にこちらに来てください」


 引率の修道女がまたみんなを連れてぞろぞろと移動し始めた。

 ついていくべきかと一瞬悩んだが、長い話にも飽きてきた。

 どうせ、聞いていないのだから、後から合流しても問題ないだろう。


 コトハは落ちていた白いハンカチを拾うと、駆け抜けていった修道女の後を追った。



----


 後追うと、祈りの台から奥に続く小さな扉があった。

 彼女がいった方向からそれ以外に道はなく、ここに入るしか他はなかった。


 コトハは、その扉に手をかけゆっくりと開いた。


「誰なの!」


 警戒するような声にコトハは思わず身をすくめた。


「す、すみません。

 あの、ハンカチを落としたのを見たので……」


 コトハはそういうと、白いハンカチを見せた。


「あっ、それ、わたくしの……」

「リナリー、お転婆ね。今日の儀式に必要なものでしょう」

「すみません。お姉さま」

「ありがとう。わたくしはリゼ。

 あなたの名前は?」

「えーっと、私はコトハって言います」

「コトハさんですね。

 リナリーのハンカチを拾ってくださって感謝いたします。

 それは今日の儀式にどうしても必要になるものでしたので」

「あの……今日の儀式というのは?」


 あまりにも連呼される言葉にコトハは不思議になってそれを尋ねてみた。

 コトハのその言葉にリゼもリナリーも一度沈黙をあらわにした。


「知りたい……ですか?」


 リゼが神妙な面持ちでそう言葉を返す。

 そういわれると、ひいたほうがいいような気もしてしまう。

 が、片足を突っ込んでしまったような気分でもあるので、思い切って聞くことにした。


「はい」

「そうですか……少しお待ちください。

 そろそろ、もう一人が――」

「リゼ姉様、お待たせ!」


 リゼが言い終わらないうちに、コトハの後ろから急に誰かが話しかけてきた。


「ラナン姉様、遅いですわよ」

「悪い悪い。ゼナ先生に見つからないようにここに来るのが大変だったんだ」


 内気なリナリーと違いラナンと呼ばれた女性は短い髪にボーイッシュな雰囲気を醸し出していた。


「リゼ姉様、この子は?」


 ラナンはコトハを見て不思議そうに尋ねた。


「リナリーが落とした雪食(ゆきはみ)の絹を拾ってくださった方です」

「えっ? あれ落としたの?」

「す、すみません。わたくしがドジなばっかりで」


 リナリーが慌てて頭を下げようとした。

 が、それをみたラナンはリナリーが頭を下げる前におでこを手でピタッと抑えた。


「もう、リナリーみたいな可愛い子がそんな簡単に頭を下げないで。

 ボクは怒ったりなんかしないよ」

「ラナン姉様」


 リナリーがうっとりとラナンを見つめる。


「御二人とも、コトハ女史が困っていますわ?」

「えっ、いや、私は……」


 リゼが急にコトハの名前を呼ぶので驚いてしまった。


「そろそろ、本題に入りましょうか」


 リゼの言葉にラナンはコトハを奥に入るよう勧め、扉を閉めた。


「わたくしたちは白百合鉄束(てっそく)団。

 この精霊修道院の中で、家族と同じ契りを結んだいわば姉妹のような関係です」


 コトハもそこまでは見ていてなんとなくわかっていた。


「今日、この精霊修道院の祈りの台の秘密を明かすために集まったのです」

「祈りの台の秘密ですか?」

「はい、なぜ、ここが祈りの台というのか?

 なぜ、ここが神聖な場所だとされるのか。

 私たちは、古い文献を調べついにたどり着いたのです。

 コトハさん? これ以上聞いたら後戻りはできませんが、本当に聞きますか?」


 リゼは改めてそう問い、コトハをじっと見つめた。

 その気配に思わず気圧されてしまう。

 が、コトハも後に引くつもりはなかった。


「はい、もちろんです」

「では、お話ししましょう。

 精霊修道院における本当に秘密を」


 その瞬間、コトハの前にクエスト受注の画面が現れた。


 クエスト:修道院の秘密を知る

 達成報酬:-



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