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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
38/44

第038話 回避盾は姪とともに

 前衛2人に、後衛が2人。

 アタッカー、タンク、バッファ、ヒーラーとことさらバランスがいい。


 長期戦はどうあっても不利だ。

 俺は



 ゆっくりしてられないな。

 俺はラナンに向かって飛び込んだ。アタッカーを倒せばリナリーは手数で押し切れる。

 が、俺の飛び込みに合わせるようにリナリーが飛び込み、大楯で俺の初撃をブロッキングする。


 初撃を弾かれたのは初めてだ。

 その隙を埋めるように≪星屑龍星≫でカバーする。

 一撃、二撃……三撃目が繰り出したと同時にラナンが大剣を振るう。

 それを紙一重で躱す。

 三手じゃなければスキル中で回避行動が取れなかった。


 これはまずい。

 もっと、もっと――


 ――集中しないと。


 ラナンが大剣の勢いを殺さないように一歩前に踏み出し身体をひねる。

 ちょうど、俺に背を向ける形。

 ほかの相手ならまだしも俺相手にその隙は逃さない。


「シールドバッシュ!」


 背中を斬ろうと踏み出した瞬間、リナリーがラナンの後ろから大楯を構え、そのまま突っ込んできた。


「はっ?」


 リナリーの前にはラナンがいる。

 大楯の突撃にラナンが大きく右側に押し出される。


 こいつ、仲間ごと。

 

「円撃 弧月閃!」


 はじき出されたラナンが、そのまま大剣を振り切る。

 右斜め前にはじき出されたラナンの剣は弧を描き、ちょうど俺の背中を狙うような形になる。

 通常攻撃モーションを被ダメでキャンセルして、ノックバックを移動に利用しやがった。

 後方からはラナンの大剣、前方からはリナリーのシールドバッシュ。

 が、弧月閃は水平攻撃。


 俺は体勢を低くし、弧月閃を躱す。

 空を斬った剣はリナリーの大楯と激しくぶつかり合う。


「シールドカウンター!! 震撼(クエイク)!!!」


 ラナンの大剣が大楯に当たった瞬間、リナリーはそれをトリガーにシールドカウンターのスキルを発動させた。


 シールドカウンター。

 本来なら、相手の攻撃に合わせてカウンターを行う大楯のスキルだ。

 その中でもクエイクはダメージ判定がないものの範囲に強制的に一瞬の怯みを生み出す。

 それを仲間の攻撃で発動させた。

 イレギュラーにもほどがある。


 が、カウンタースキルは使用者にもスキル硬直がある。

 ましてや、弾かれたラナンはリナリー以上の硬直が待っている。


 誰も動けないこの状況で――。


 そう思考を巡らせた瞬間、地面に影が走ったのが目に飛び込んだ。


 違う。

 相手は2人じゃない。

 聖女は3人いる。


 同時に頭の中でカチリと時計の針が動いたような音がした。


 視線を上に向けることなく、飛来した脅威を影だけで判断して躱す。

 着弾のエフェクトから小型の火焔球が3発程打たれたらしい。


「ようやく、このモードに入れたか。

 入るタイミングにムラがあるのは、困りもんだな」

「ラナン姉様、雰囲気が変わりましたわ」

「だね。この連携を避けられたのも初めてだし」


 速さにかまけて直線的な攻撃をするとリナリーに割り込まれる。


「なら――」


 あえてリナリーのほうに飛び込んでいく。

 リナリーは大楯を構えて、それを受け止める。

 今度はブロッキングはしなかったようだ。


 先ほどはラナンを狙った一撃で、リナリーもそれを狙いやすかったのだろう。

 リナリー狙いとなったなら当然、易々とブロッキングされないよう通常攻撃のタイミングは少しずつ変えていく。

 リナリーはやりづらそうに大楯に隠れてそれを受け止める。

 が、リナリーばかり攻撃していると、当然ラナンはその隙を狙ってくる。


「≪影分身≫」


 背中合わせに俺と同じ≪影分身≫が出来上がると、ラナンの一撃をさばく。

 多くのプレイヤーは≪影分身≫の構築で視界などの感覚の共有はオフにしている。

 当然だろう。

 俺の頭の中には2人分の視界と感覚が共有されている。

 現実世界では味わえない不思議な感覚。

 将棋の多面打ちのようなものだろうか?

 目の前に2つの景色が同時に見えて、同時に2つのことを考える。

 単純な攻防なら数を増やすのは簡単だが、ラナンとリナリー相手なら2体でもつらい。



 アレが来るにはまだ少し時間がかかる。


 ラナンとリナリーの隙間から俺と全く同じ形のものがコトハちゃんのほうに飛び出した。


「コトハ、わたくしが行くわ!」


 警戒してかリゼが飛び出した。

 リゼはそれが≪影分身≫と思ったのだろうが、本当は≪身代わり≫でできた俺とそっくりな人形。

 そいつには爆弾するアイテムであるトラップボムが仕掛けられている。

 触れればダメージとともに吹き飛ばされる。


 リゼが飛び出したと同時に、俺の形をした≪身代わり≫は爆炎とともにリゼの近くで爆発した。


「リゼ姉様!」


 リナリーの視線が一瞬、リゼのほうにそれた。

 俺はその瞬間を逃さず、リナリーの大楯を思いっきり蹴りつけた。

 リナリーがノックバックで距離を取った瞬間、振り返り、ラナンの方を見た。


 隙は一瞬、≪影分身≫の2人がかりでラナンを攻撃する。

 ラナンは大剣に身を隠すが、それでも俺のほうが手数が多い。


「これで、終わりだ――」

火焔矢(フレイムアロー)!!!」


 あと、一撃。

 あとほんの一撃の間だけあれば、ラナンに届くと思ったその瞬間、土煙の中から炎の矢が俺に向かって飛んできた。

 足元を狙うような空を切る音に飛び上がってそれを避ける。

 俺が見せた一瞬の隙、それを穿つようにラナンが大剣を振る。


 宙にいた俺が≪エアスライド≫で後ろに下がるが、それでもラナンの大剣のほうが長さがある。

 回避ができない。

 なら、相殺しかない。

 あの大剣を相殺できるほどの攻撃は――


「星屑龍星!」


 素早く空中で3連撃を行い、ラナンの大剣を押し戻す。

 視線だけを後ろにやると、リナリーが大楯の隙間からしっかりとこっちを見ていた。

 まずい。≪星屑龍星≫の乱舞構成を見られた。


 下手に≪星屑龍星≫を打つと、ブロッキングされかねない。


 重力に引かれ、足が地面についた瞬間、身体が一気に軽くなった。


「きた!」


 俺の足は地面を蹴った。

 その刹那、今までよりもさらに早くラナンと俺の距離が一瞬でなくなった。


「なっ!?」


 驚いたラナンは剣で受けようと引き戻すが、それよりも早くラナンを≪泥の短剣≫で切り刻んだ。


「くそっ!」


 悔しそうな声とともにラナンの身体が光の粒子となって消えた。


「ラナンお姉様!」


 リナリーがそう叫んだ時には、すでに遅く、俺は一瞬で切り返し、大楯に一撃を当てると自らその裏に回り込んでリナリーを斬り伏せた。


「そんな、早すぎる……」


 リナリーはそう言葉をつぶやくと彼女もまた光の粒となり空へと帰っていった。


「ラナン、リナリー」


 リゼが光に消えた2人の名前を呼んだ。


「その速さはなんですの! 一瞬でここまで早くなることなんて――」

「早くなったんじゃない。

 もとに戻ったんだ」


 そう、呪詛で下げられたパラメータが時間経過でもとに戻った。

 あのやり手の2人の虚を突くにはこれしかなかった。


「この!」


 リゼが持っていた杖で俺の足を払った。

 が、近接職でもないリゼの攻撃など今の俺には造作もなかった。足払いを飛んで避け、そのついでにリゼを斬った。


「後は……頼みましたわよ」


 リゼが光の粒子になって姿を消した。


「リナリーさん、ラナンさん、リゼさん。

 ありがとうございます。

 私! 負けません!」


 俺は浅はかだった。

 近接職でないリゼが最後杖を振るったのは、あの距離では魔法が間に合わないから苦し紛れの一撃だと勝手に勘違いした。

 なら、なぜそのまま振りかぶらなかったのか。


 避けやすい足払いに何の意味があったのか。


 安易に飛んで避けた俺の目の前。

 リゼが光となって消えたその先にはコトハちゃんがいた。


 彼女はステップで俺との距離を詰めた。

 地面には鈍足結界。着地したら勝ち目はない。


「≪エアスライド≫!!!」


 俺は後ろにエアスライドで滑るように後ろに逃げた。

 鈍足結界の範囲外に一瞬でも足がつけば、後はその瞬間、一気に逃げ出せる。


 ちょうどステップ1回分。

 コトハちゃんのステップが足りなかった。


「勝ったな!」


 俺が地面に足を触れようとしたその瞬間だった。


「いいえ、まだです!」


 コトハちゃんがステップで軽く跳ね、地面に足を着いた瞬間、足元が爆発し、コトハちゃんの身体が大きく前に押し出された。


「トラップボムです!

 ラナンさんとリナリーさんの戦い方をまねさせてもらいました!」


 ラナンとリナリーの戦い方。

 お互い仲間同士攻撃しあい、本来なら敵の攻撃で誘発するスキルを強制的に使用する。


 コトハちゃんは自分の前方にトラップボムを配置して、それを踏むことで、ステップの推進力を高めた。


 ジャッジメントパニッシャーの構え中のダメージ判定は構え解除の条件だ。

 本来なら、トラップボムを踏んだ瞬間にジャッジメントパニッシャーの構えは解除される。


 そう。本来ならそうなのだ。

 だが、爆炎とともにコトハちゃんの周りには白いエフェクトが包む。


 ≪オートリフレクト≫

 初撃を必ず弾くコトハちゃんのスキル。

 それにより、ダメージは0で吹き飛ばしだけが残った。


 俺が地面に足をおいたその場所はすでに鈍足結界内。

 コトハちゃんは俺に向かって錫杖を振り下ろした。


 くそ。マジかよ。

 どれだけ構えてたんだ?


 いや、違うか。

 元々俺は回避専門だ。

 一瞬でも攻撃が当たれば負けなんだ。

 聖女の3人とコトハちゃんの執念でここまで詰め寄られたのか。


 あぁ、鈍足結界で回避は無理だ。

 振り下ろされる圧倒的攻撃を弾く手段は俺にはない。



 違う――。

 俺は≪泥の短剣≫をしっかりと握った。


「星屑――」

「おじさん、私の勝ちです」


 無慈悲におろされたコトハちゃんの一撃。

 激しいエフェクトともに、ボスが10体並んでも瞬殺されるようなけた違いなダメージがはじき出された。


 その刹那、俺は≪泥の短剣≫を振るった。


「――龍星!」


 杖を振り下ろした無防備なコトハちゃんに一閃。

 瞬きの間もなく3連撃を打ち込む。


「そんな……なんで?」

「≪泥の英雄≫だ」


 被ダメを無効化してくれる。

 確率は分からないが、説明から見るとかなり稀な確率で発生するとのことだ。


「そんな、偶然に……」


 コトハちゃんが帰還エフェクトとともにその身体が消えた。


「いや、違うよ……」


 コトハちゃんが消えたその先に俺はそうつぶやいた。


「第1回 バトルロワイヤルを制したのは、ミヤコ選手!!!!!」


 その瞬間、アナウンスが俺の勝利を告げた。


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