第037話 回避盾は聖女とともに
マップの中央。
平原にはまばらに木や身を隠せるほどの大きな岩があった。
周りを見て身を隠せる場所があることに安堵した。
ここまで移動する間に、頭の中で何度かシミュレーションした。
が、物陰がなかった場合は、俺は絶対に勝てなかった。
少ないとは言え、これだけ物陰があれば。
彼女とも渡り合える。
そして、平原に1人立っている少女。
そちらに近づいていった。
「おじさん、待ってました」
「まさか、コトハちゃんが残るとは思ってなかったよ」
「私も何とか残れました」
「ちなみに、どうやって残ったか聞いていい?」
「そんな、大したことしてませんよ。
モンスターと同じで麻痺と鈍足結界で動けなくした相手を1人ずつプチっ、プチっと」
ジャッジメントパニッシャーでつぶしていったわけか。
自分の番が来るまで他がつぶされていくのを見ていたわけか。
潰された他プレイヤーはご愁傷様です。
「今回、おじさんのためにピティさんと特訓しましたから」
「俺もコトハちゃん対策考えておくべきだったよ」
いいところまでいくとは思っていたが、まさか最後まで残るとは考えていなかった。
「じゃあ、おじさん」
「あぁ」
「――勝負です。
スローシンプトム!!!」
その瞬間、コトハちゃんの中心から鈍足結界が広がる。
鈍足呪詛とは段違いの効果を持つコトハちゃんの鈍足結界。
これに入るとまず勝ち筋はない。
そして――。
「パラライズストライク!」
遠距離攻撃としてこれがある。
が、今の俺にはそれはきかない。
コトハちゃんのパラライズストライクに合わせて飛び出し、その身に受ける。
ダメージ判定がない状態異常魔法など、今の俺には怖くない。
が、コトハちゃんはそれに驚く気配を浮かべなかった。
「状態異常回復、そこから、パラライズストライク!」
俺の身体の猛毒状態が一瞬で回復し、再度猛毒に戻る前に麻痺が割り込んできた。
「なっ!」
過信していた。
「≪蟲毒の呪装衣≫のことはサッシャさんから聞いていました。
猛毒状態になる代わりに、状態異常が無効だと。
それなら、猛毒を回復させてしまえば麻痺が通るのかなって」
かなって、そんなもんをぶつけ本番で試したのか。
コトハちゃんはすでにジャッジメントパニッシャーの構えをしており、すり足でこちらに近づいてくる。
あの鈍足結界の中に入れば確実に死ぬ。
慌ててインベントリから麻痺治しを取り出しそれを使用する。
「っぶね!」
お守り代わりに麻痺治しを入れていてよかった。
だが、それも残り1つしかない。
まさか、≪蟲毒の呪装衣≫で状態異常にかかるとは思ってもみなかった。
次に≪パラライズストライク≫を受けたら確実に負ける。
俺は急いで岩陰に移動した。
≪パラライズストライク≫は不可視だが、当たり判定がある。
大事なのは、コトハちゃんの視線上にいないことだ。
そして、鈍足結界は結界を踏まなければ発動しない。
なので、一足飛びでコトハちゃんのところまで飛べれば、鈍足結界の効果を受ける前に倒せる。
そのためには攪乱して、隙をつかないと。
俺は岩陰から出ると、コトハちゃんの視線を躱すように回り込む。
「さすが、おじさんです。
私の弱点、すぐにわかりましたか。
でも、それだけじゃ私は倒せませんよ!
行きますよ――」
コトハちゃんは大きく声を上げた。
「――始祖召喚!!!」
その声とともに空が曇り、光の柱が何本も降り注いだ。
そして、それと同時に光る羽根が幾重も空から舞い落ちた。
雲の隙間の光の柱から三人の女性が純白の羽根を背中につけゆっくりとコトハのもとへ降りていった。
「コトハちゃん、久しぶりね」
「はい」
三人の女性はそれぞれ身の程もある大きな剣、大きな盾、そして美しい杖を持っていた。
「知恵の聖女リゼはこれより白百合鉄束の盟約に従いコトハを癒しましょう!」
「同じく剣の聖女ラナンは盟約に従いコトハの敵を打ち倒す!」
「盾の聖女リナリーも盟約に従いコトハの身を守ります!」
「ちょっと待て、召喚もジャッジメントパニッシャーの対象外かよ!」
隠れて不意打ちつもりが、まさかの4対1の状況になった。
「いっくぞー!」
「いきます!」
ラナンとリナリーが同時に俺のほうに向かって突っ込んできた。
こちらを先に排除しないとまずい。
≪泥の短剣≫で斬りつけるが、リナリーの大楯がそれを防ぐ。
目の前から大楯が消えたと思った瞬間、目の前にはラナンの大剣が見えた。
「っぶねぇ!」
間一髪状態をそらして大剣を避ける。
半端な攻撃はリナリーの大楯に防がれ、同時に視界も奪われる。
それと同時にラナンの大剣だ。
連携はばっちりとれている。
その後ろで、リゼが2人にバフをかけ続けている。
コトハちゃんの話に聞いた邪龍をめった打ちにしたパーティーだ。
近寄れば鈍足結界、足を止めれば状態異常回復からの≪パラライズストライク≫。
遠近ともに完璧な布陣に見える。
テイマーは卑怯かというと、すでに俺ははぎを使った身なので、そんなこと口が裂けても言えない。
やるしかない。
俺はもう一度≪泥の短剣≫を握りなおすと深く構えた。
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