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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
32/44

第032話 回避盾は猫王とともに

「これは埒が明かんな」


 釣り糸を増やしたところで、捕まえられる量が増えただけでバリエーションはあまり増えなかった。


「これは量で我慢してもらうか」

「ダメよ!」


 そういったのは他でもないサッシャだった。


「結果に妥協してはダメよ。

 ≪猫王様≫のために、最高の魚をプレゼントするのよ!」


 ネコと和解せよ状態になっている。


「エサが小さいのかも」

「エサなんてないから。釣糸垂らすだけだから」

「ミヤコ、あなたが行くのよ!」

「だから、餌なんてないし。って俺がエサかよ!」

「大丈夫、ピティと一緒に泳いでたんでしょ!」

「大丈夫じゃねぇ!」

「はぎ!」

「あい、分かった。

 主も観念せい」

「なんで、2人して俺の身体に糸を括り付けてるんだよ!」

「よしっ、いきなさい!」

「よしっ。じゃねぇ!」


 完全に準備が整って、2人が期待のまなざしで俺を見る。


「……いいけど。捕れなくても文句を言うなよ」


 根負けしてそう言葉をこぼした。

 サッシャならできるまでやらされそうだ。


 俺は覚悟を決めて水の中へ入っていった。


 ≪泥の短剣≫が強化されたことでできたエクストラスキル≪水泥の交わり≫により走るのと同じくらいのスピードで水の中を泳いでいく。

 確かに大きな魚が多い。


 たしか、猫に貝やエビタコはダメだったはずだ。


 水底を歩いていると巨大な影がズズッと動くのが見えた。

 それは俺が歩いているのを見ると激しく動き俺に向かってきた。

 それは蛇のように長い身体をくねらせ、大きな口を開けて襲ってきた。


「キラーイールか!」


 巨大なウナギのモンスター。

 俺はキラーイールの噛みつき攻撃を避け、そのまま≪泥の短剣≫で斬りつけた。


 ぬめりのせいでダメージが浅い。

 と、同時にキラーイールの血が水中に混ざる。


 キラーイールはその一撃で俺をエサから敵に認識を切り替えたらしい。

 あたりを囲むようにぐるりと泳ぎ、距離をとった。

 俺は剣を構えいつ攻撃が来てもよいように視線をキラーイールから離さない。

 水にキラーイールの血が混ざり濁り視界が悪くなる。

 その血煙に身を隠すようにキラーイールが俺に牙を剥けた。


 が、回避は俺の専売特許。


 その程度の半端な突撃を避けられないはずがない。

 俺はその突撃を躱した。


 キラーイールの突撃を躱した刹那、腕が血に濡れた水に触れた。


 その刹那、俺の体力の半分以上が一気に削れた。


「なっ!」


 攻撃を受けた記憶はない。

 ダメージエフェクトもない。

 見えない攻撃に俺は驚いた。


「これは……ウナギの血か!」


 うなぎの血には毒があると聞いたことがある。

 やばい。

 そう思った時にはすでに遅く俺の周りは円を描くようにウナギの血だまりが広がっている。



 From サッシャ

 釣れた?



 それどころじゃないのに、呑気なメッセージがきた。

 俺は事情を説明するメッセージをサッシャに送り返した。



 From サッシャ

 釣りあげるわよ



 状況を説明したのにこの返信である。

 釣りあげられたら苦労はしない。


「いや……」


 ありなのかもしれない。

 俺は≪泥の短剣≫の形状を変化させた。


 と、同時にキラーイールが俺に向かって突っ込んできた。

 イメージは棘付きの紐。


 らせん状に広げ、頭からそれをキャッチする。

 キラーイールがもがけばもがくほど、≪泥の短剣≫がキラーイールの身体に食い込んでいく。

 これで逃げられない。


 が、同時に、俺もキラーイールの傍から離れられない。


 キラーイールの身体からじわりじわりと血が滲み出て水を濁していく。


「サッシャ! 引き揚げろ!」


 俺の声に従うように、身体が一気に引っ張られた。

 身体が一気に水面に近づき、キラーイールの皮膚から吹き出した血が後ろに流される。


 サッシャとはぎの力に押し負けてキラーイールが水面に飛び出した。

 つり上げげられたかと思いきや、水面で激しく尾を打って、キラーイールはまた水中にもぐる。


 はぎの糸はそう簡単に切れない。

 俺の≪泥の短剣≫もしっかりと食い込んでいる。


「力任せで行け!!!」


 それにこたえるように、サッシャとはぎがキラーイールを一気に地上に釣りあげた。

 水面から弧を描くように飛びあがったキラーイールは地上に引き上げられると、サッシャとはぎの攻撃を受け、そこで力尽きた。


「お疲れ様」

「こんなデカいの釣れるとは思わなかったよ」


 キラーイールを釣りあげると新たに5000pt入った。


「ってか、これも釣り判定になるのか。

 もう、何でもありだな」

「私もポイント入ったわ」

「ランキング何位だ?」

「今は……4位かな。

 って、1位はミヤコで2位はピティなの!?」

「洞窟寺院であほみたいに釣ったしな」


 ドランサーペントがポイント対象だったのが大きい。

 まぁ、釣りイベントはどちらかというとおまけだ。

 メインはバトルロワイヤルだ。


「じゃあ、≪猫王様≫に持っていくか」

「その前に仕込みだけさせてね」


 そういってサッシャは何やら用意を始めた。



----


 俺たちはキラーイールに火を通したものをインベントリに入れ、例の扉の部屋に戻った。


「本日は産業街シオネスの猫の集会に集まってくださってありがとうございます」


 ≪ダークル≫が集まった猫に歓迎の言葉をかけた。

 すでに、多くの猫が集まっており、あの長い階段の上には美しい白い毛の猫が座っていた。

 おそらく、あれが≪猫王様≫なのだろう。

 サッシャはというと、どこを向いても猫というこの状況に興奮してあっちを見たりこっちを見たりと落ち着きがない。


「今日は珍しい客人がおります。

 ミヤコ様とサッシャ様。彼らから今日の猫の集会に手土産があるとのことです」


 俺がインベントリからキラーイールの白焼きを出すと猫たちが一斉に歓声を上げた。


「皆様、今宵の猫の集会をごゆるりとお楽しみください」


 ダークルは俺たちに近づいてくると頭を下げた。


「本日は集会にこのような素晴らしい献上品をありがとうございます。

 私は≪猫王様≫に献上品を届けますので、御二人は≪猫の集会≫をお楽しみください」


 その言葉に、サッシャは嬉しそうに猫の集会の中に入り込んでいった。

 俺はというと、なんとなくその輪に入れず端のほうで楽しんでいるサッシャを眺めていた。


「失礼、隣をよろしいですか?」


 ふと目をやると、そこには灰色の美しい毛を持つ猫が佇んでいた。


「いいのか、俺の横なんて」

「もちろん、今回は我が領の湖から素晴らしいものをお釣りいただき感謝申し上げます」

「というのは?」

「今宵の献上品がパルル湖から上がったと≪猫王様≫にお耳に入れば、そんな名誉なことはありませんからね」

「へぇ。我が領ってのは?」

「失礼、申し遅れました。

 私はパルル辺境猫伯のデルブン・キルル・フェリシア・ニャアと申します」

「デルブ……えっと……」

「気軽にニャアとお呼びください」

「ありがとう。あの湖はニャア伯爵のものなのか?」

「えぇ、事前にダークルから利用するとの話は聞いておりました。

 まさか、キラーイールを釣りあげるとは思ってもみませんでした」


 そういって、ニャア伯爵は顔を手でぬぐった。


「俺もまさか釣りあげられるとは思ってなかったさ」


 あれを釣りあげると表現するかは難しいところだが。


「釣りあげてよかったのか?」

「あの湖の主で、大きくなりすぎて困っていたのです。

 そろそろ、冒険者ギルドに依頼を出そうと思っていたところなので」


 そろそろということは、もしかして、イベントを先取りしてしまったのかもしれない。


「ミヤコ様」


 献上品を渡していたダークルがいつの間にか俺のそばにいた。


「ニャア伯爵、ご歓談の邪魔をして申し訳ございません」

「よいよい、本日の催しは大変満足しておる」

「これもニャア様の伯爵領の湖の貸していただいたお陰でございます」

「うむ。して、御前(ごぜん)がお呼びか?」

「はい、本日の客人にと」

「分かった。ミヤコ殿、貴殿に湖の使用許可を与える。

 いつでも好きな時に使用するといい」

「ありがとうございます」

「では、私はこれにて失礼するよ」


 ニャア伯爵はくるりと尻尾を回すと他の猫の集まりに溶けていった。


「ミヤコ様、≪猫王様≫がお呼びです。

 本日の献上品のお礼がしたいとのことです」


 見ると、サッシャはすでに階段の下で待っていた。

 俺はダークルに階段下まで連れられた。


「では、ミヤコ様、サッシャ様、おあがりください」


 俺たちは≪猫王様≫の傍まで昇った。


 一瞬、子供かと勘違いした。

 他の猫とはまるで違いヒトのように玉座に座っているが、その外見は間違いなく猫だった。

 二足歩行の猫。

 頭から背中にかけては宵闇のように美しくおなかの部分は雪のように白い毛並みだった。その小さなあたまには小さな王冠が乗っていた。


「今日は集会を楽しむ献上品を感謝する」


 子供のように少し高い声。

 が、エメラルドに光る美しい目は子供のような風体とは明らかに違う気配を醸し出していた。


「こちらこそ、貴重な集会に参加することを許していただき感謝します」

「気にするな。集会は気ままなものよ。

 来るものも去る者も追わぬ」

「寛大なお心ありがとうございます」


 一応、王様なのだから、一応の礼を尽くす。


「うむ。今宵の献上品に私からも感謝の品を送ろう。

 何か、ほしいものはあるか?」


 急にほしいものと言われると困ってしまう。


「あ、あの、私は糸がほしいです」


 サッシャが小さく手を上げてそう答えた。


「糸か。ではこれを授けよう」


 ≪猫王様≫はサッシャに何か上げたようで、サッシャは驚いていた。


「では、次はお前だ」

「俺か……と言っても、すぐに思いつかんな」

「ふむ、では、お前には余の幸運のスキルを分けてやろう」


『スキル:幸運のケットシーを取得しました。』


 スキル:幸運のケットシー

 効果:戦闘中一度のみ任意の確率効果を必ず成功させる


「これ、凄いな」

「であろう。

 余は大変満足だ。客人は好きに楽しみ好きに去るが良い」


 俺たちは頭を下げると階段を降りていった。


「ミヤコ、見て見て。こんなの貰った」

「なんだこれ?」

「≪運命の糸≫だって。

 これでまたいろんな物が作れるわ」

「……そういえば。

 はぎからこんなもの貰ったんだが、これで何か作れるか?」


 俺はグランドバトルではぎからもらった≪猛毒の蜘蛛糸≫を見せた。


「何この毒々しい名前の糸は」

「はぎから貰ったんだが」

「これで布を作れると思うけど……」

「ものは試しで作ってみてくれ。

 バトルロワイヤルも近いし、強い防具は用意しておきたいしな」

「いいわ。任せておいて」


 俺とサッシャはそのまま≪猫の集会≫が終わるまで猫たちと遊び続けた。



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