第021話 回避盾は炎剣とともに
「フレイムエンチャント! 劫焔の剣!」
ミラの剣に炎の渦がまとわりつく。
それは不規則に揺れながら辺りの空気を熱くゆがませる。
「次は避けられるか!」
先ほどと同じように剣を振るう。
が、空を切る音がこれまでと違う音となる。
炎が風に揺れる唸るような音。それが顔の間近を通る。
余裕をもって避けたつもりが、ギリギリだった。
「行くぞ、大剣乱舞! 月下太刀雨!」
大剣の連撃スキル。
このスキルは知っている。
初太刀は大きく振り下ろされる一撃で、次に身体を揺らしながら左右の連撃を繰り返す。
問題は初撃以後の左右の振りはランダムなところだ。
「まずっ」
初太刀を防げば、スキルを止められるが、炎のエンチャント付きで、受け止めても追加ダメージが入る。
通常ならそれで止める気も起きるが、俺の場合はただでさえ弱い防御力の上、≪紙の命≫も搭載しているので下手したら追加ダメージで死にかねない。
ミラが大きく俺に向かって剣を振り下ろす。
当然、受ける選択肢はない。
ミラの剣が地面を叩き、同時に身体が左右に揺れる。
ミラの身体が左に揺れ、それを追うように剣が動く。
となると、最初は右!
≪泥の短剣≫を厚めに作り直し、右からの剣撃を受け流す。
手のすぐそばを通る炎が熱い。
次にミラの身体が右に揺れ、剣がなぜか右から振られる。
慌てて右の短剣でそれを受け流す。
右、左。
左、右。
次々と振られる剣をギリギリで見極め受け流す。
「やるな! これを受け流すか!
ならこれはどうだ! 月下太刀雨 五月雨!」
ミラは軽く飛び上がると剣を振り下ろした。
受け流せる気がしない。
俺はそれを横に避ける。
ミラは着地と同時に身体を捻り、一旦、背を向けた。
視線が外れた。
これなら逃げることが――。
その一瞬、剣が身体のすぐそばを通った。
避けられたのは偶然だった。
リーニャとはぎの方に行こうと身体を傾けた。
それが偶然に回避行動になった。
「よく躱したな。
だが、五月雨は無限の連撃。相手が倒れるまで止まらない」
一回戦の相手のように視線が外れたから違う相手に行くことができない。
攻撃速度が早すぎる。
しゃがむような低い横なぎ。
かと思ったら、剣は空に向かって切り上げられる。
月下太刀雨の左右連撃だけじゃない。
さらに幾重にもの攻撃パターンが編み込まれ、剣筋を読むのがさらに困難になる。
その時、俺は気づいた。
ミラのやつ、大剣を片手で持っている。
「大剣は両手装備だろ!」
「おっ、気づいたな!」
くそっ、レアスキルか。
常時片手持ちなのか、スキル使用時なのかは分からないが、両手持ちの剣を片手で持っている。
それも乱舞中器用にも左右の手を持ち替えている。
大剣の長さと大きさ、それを片手剣のように扱われたら、剣速が早く感じるわけだ。
「この威力! この剣速!
貴様が攻撃しようものなら炎の自動カウンターだ!
この私のスキルに対応できるものなら――」
「残念」
剣の隙間を縫って、ミラの横を通り過ぎた。
「はーっはっは、臆した――」
急にミラが膝をついて、地面に倒れた。
「な、何が起きた」
「二刀乱舞 星屑龍星」
「乱舞スキルだと? そんなお前はあの一瞬で」
「俺が見えたか?」
「自動カウンターが間に合わないとは……」
危なかった。
マレクス鉱山のロッククラブ戦で偶然覚えたスキル。
スキル:≪刹那の見切り≫。
攻撃を避ければ避けるほど敏捷性が上がる。
≪剣の舞≫と併用で攻撃力と素早さが同時に上昇する。
あの乱撃をよけ続けたんだ。その上昇値は、アイテムの自動カウンターのはやさをうわまわった。
「さて、はぎの方はどうなっているかな?」
俺ははぎの方を見た。
どうやら、まだ戦っているようだった。




