第020話 回避盾は準決勝とともに
はぎと俺はグランドバトルの申し込みを行うため、闘技場に足を運んだ。
はぎの言った通り、タッグマッチは当日の受付も可能だった。
登録作業は彼女が滞りなくやってくれたので、俺は待つだけだった。
しばらくすると、登録がすんだのか選手控室に通された。
控室は大きな部屋でそこには様々な選手が自分が呼ばれるまでの時間をつぶしていた。
外ではちょうどソロ戦の決勝戦のようだ。
ひときわ大きい歓声があがった。
どうやら試合が終わったようだ。
しばらくするとNPCが部屋に入ってきた。
「タッグマッチの受付は終了しました。
ソロ戦が終わりましたので、これからタッグマッチ戦が始まります。
各自代表者は私の前に並んでください」
俺がはぎの方を見ると、彼女は視線で俺が行けと促した。
「では、くじを引いてください」
俺を含め全部で30組が集まった。
「試合形式はトーナメント方式か」
「何回勝てばいいんじゃ?」
「多くて5回かな」
「ほぅ、凄いな。すぐ分かるもんなのじゃな」
「2の5乗以下のチーム数だしな」
「ふむ、わしには難しいことは分からんな」
「チーム≪くものうえ≫さん!」
「おっ、わしらじゃな」
「そんなチーム名にしたのか」
そういえば、はぎに登録を任せてしまったので自分のチーム名を今の今まで知らなかった。
「≪雲の上≫って不思議なチーム名だな」
「ん? 発音が少し気になるが。まぁ、良い名じゃろ?
わしは気に入っておる」
俺とはぎは案内に連れられて闘技場へと進んでいった。
俺たちが闘技場に出ると歓声が上がった。
俺たちに向けられたというより、どうやら相手チームのようだ。
「なに、有名なのか?」
「さぁ、わしは知らん」
相手は戦士系の男と魔導士系の男だ。
戦士系は純粋アタッカーかタンク兼アタッカーなのか。
装備的にはどっちか分からないが、魔導士系の男は確実にヒーラーの装備だ。
と、なると。戦士風の男はタンク兼アタッカーか?
バランスよさげな装備しているしな。
相手の戦力分析は完了した。
「じゃあ、さくっと勝って優勝しますか」
「その意気よし」
「では、試合開始!!!!」
アナウンスが響いた。
と、同時に戦士系の男が俺に斬りかかってきた。
それを寸でで躱す。
「っぶね!」
油断していたわけじゃないが、相手の踏み込みが予想以上に早かった。
ステップ系のスキルで一気に距離を詰めた。
これでタンクまで兼用なら、優秀だ。
そのまま斬りこんだ剣が横に薙ぐ。
初太刀を避けられるのも計算のうちか?
流れるような連撃だが、攻撃系のスキルを使っているように見えない。
プレイヤースキルでこの連撃か。
俺は後ろに少し飛び二撃目を躱す。
男は剣の勢いを殺さず背を向けると、そのままくるりと円を描いて俺のいたところにもう一度横に剣を振った。
ブンッと風を切る大きな音とともに剣が宙を切った。
「いい太刀筋だが、相手から目を離すのは良くないな」
戦士系の男が俺から視線を外した一瞬。
俺は一足飛びにヒーラーの男の近くまで移動すると、短剣で数度斬りつけた。
「なっ!」
男からしたら剣が空ぶったら相手が消えていたようなものだ。
予想通り、ヒーラーの男は防御にあまり振っていなかったようで、俺の数度の剣で落ちた。
「さて、ヒーラーがいなくなって2対1だ。
続きをやるか?」
「くっ、負けだ。
降参する」
「勝者、≪くものうえ≫!!!」
勝利宣言のアナウンスとともに歓声があがった。
「主は早いの」
「素早さ重視が俺の戦法だからな」
「手の内明かして、これからが心配じゃの」
はぎの心配はよそに、第2試合、第3試合と順当に勝ち進んだ。
「危なげなく勝ち越すの」
「お前はさっきからずっと後ろで立っているだけだな」
「主が、動く前に片づけるからじゃ。
わしも戦わせろ」
「おっ、やる気じゃないか。
はぎの戦い方ってのも見てみたいな」
「ふふふ、驚くでないぞ?」
「チーム≪くものうえ≫さん。準決勝戦です。
こちらにどうぞ」
案内に促され、俺らは闘技場に出た。
「はーっはっは! 私の名前はミラ。
炎剣のミラだ!」
闘技場に出た瞬間、赤い鎧に金髪の髪の女性が銀色の刀剣をこちらに向けて大声で名乗った。
「あっ、どうも」
「うむ」
「……」
長い金色の髪に、蒼い瞳。
雪のような肌に対して赤いフルプレートの鎧。
対して、後ろにいる黒いローブの女性は魔導士系にしては軽装だ。
フードを深くかぶっているせいで、相手が眼鏡をかけていることくらいしか分からない。
妙な組み合わせだ。
「ん? どうした? 私が名乗ったのだ、お前も名乗れ」
「えっ? 名乗るの?」
「当たり前だろう。お互い全力で戦うグランドバトル。
腕と技を競う相手の名前を知らぬのも忍びないだろ」
「なんか、自分が勝つ気で話してねぇか?」
「無論。負ける気でここにいるものはおらぬだろ?」
と、ここで開始の合図がなった。
「そりゃそうだ――」
開始の合図と同時にミラの懐に飛び込む。
こういう勝つ気満々の類には奇襲があう。
「――じゃあ、そのまま負けとけ」
「甘い!」
俺の剣がミラに触れようとしたその瞬間、ミラの身体が炎の渦に包み込まれた。
「っぶね!」
炎に巻き込まれそうになり、思わず後ろに飛びのく。
「はーっはっは、貴様の戦い方は見させてもらった。
素早さ重視の攪乱戦法だろ?
だが、如何せん、火力が弱い。そこは改善点だな」
「ご高説どうも。
その炎で不意打ち防止ってわけか。
でも、それじゃあ――」
俺はミラを諦め、後ろにいる黒いフードの女性に目を向けた。
「――相方ががら空きだぜ!」
俺が黒フードの女に向かって飛び込んだ。
走り始めたら、ミラがどうしようと俺のほうが早い。
黒フードの女の懐に飛び込んだ。
着地と同時に、足元に石のようなものを踏んづけた。
何かと下を見た瞬間、それは激しい閃光とともにはじけ飛んだ。
激しい衝撃とともに煙が上がる。
「言い忘れていたが、リーニャはトラップを生業としていてな。
不用意に近づくと爆発するぞ――と言っても、もう聞こえないだろうがな」
炎の渦が消え、ミラは立ち上った煙を見た。
「主よ。
勝った気でいるのはちっとばっかし早いぞ」
「はーっはっは、なんだ、お前が戦うのか?」
「わしが戦いたいところじゃが。
ほれ、こやつが生きておるからな」
はぎは上を指さした。
そこにはトラップで消し飛んだはずのミヤコが宙に浮いていた。
「なっ、お前どうして生きている!」
「ははは、俺もびっくりだ」
俺の体がスーッと宙を移動すると、はぎの前に降りた。
「どうじゃ? 役に立ったろ?」
「これは……糸か?」
「うむ。名答。
そうじゃ、わしの武器はこの糸じゃ」
リーニャと呼ばれた女のそばに着地した瞬間、足元のトラップが爆発した。
さすがに俺もこれは負けたと思ったが、爆発よりも早く魚よろしく空中に一本釣りされた。
「戦えるか?」
「見せてやろう。ワシの剣技を」
はぎの手に白い糸が集まるとそれは剣へと形作った。
「白糸の剣!
我が八手の剣技を見せてくれる!」
はぎがミラに向かって飛び込むとその剣を素早くついた。
その件がミラに当たる寸前、俺の時と同様、炎の渦がミラを守るように吹き荒れた。
「自動カウンターか!」
「良く気付いたな! 焔龍の鎧は相手の攻撃に合わせ炎の自動カウンターつきの鎧だ」
はぎは一太刀浴びせることなく、すぐに俺の横に戻ってきた。
「なんで戻ってんだよ。
さっき、『我が八手の剣技を見せてくれる!』とか叫んでなかったか?」
「うるさい! ワシにも相性というものがあるんじゃ」
「相性?」
はぎは白糸の剣を見せた。
綺麗にこんがり焼けて溶けている。
「ワシの剣は最強じゃが、炎には弱い!」
「威張って言うようなことじゃねぇだろ!」
「仕方ないじゃろ! 世の中には超えられない壁というものがあるんじゃ!」
「くそっ、期待した俺がバカだった」
「あの炎の小娘は頼んだぞ」
「結局、いつも通りじゃねぇか!」
「何を言う、あの黒い小娘はワシが戦ってやる」
「しっかり、頼むぞ」
「誰に言っておる!
我が八手の剣技を見せてくれる!」
その言葉はさっき聞いた。
そういうと、はぎはリーニャに向かって走っていった。
「あいつ……大丈夫か?」
「よそ見とは余裕だな!」
ミラがいつの間にか、すぐそばに寄って剣を振り下ろした。
「余裕ってことはないが――」
耳元でミラの剛剣が宙を切る。
「――避けられるしな!」
振りぬいた剣が、すぐに戻り、俺の首筋を狙う。
が、それを状態を反らし避ける。
「これも避けるか!」
「それが本職なもんでね」
ミラの剣が俺を狙い何度も振りぬかれる。
右に左に行く剣の速度が上がっていく。
剣が斬る風よりも早く、続く剣が宙を待つ。
それは留まることなく、無数の剣に見えるほどの速度になっていく。
「はーっはっは、よく避けるな!
なら、これではどうだ!」
ミラが剣を上に掲げると剣が炎に包まれた。




