第019話 回避盾は謎の少女ともに
リアル世界で夜中3時。
俺は格闘都市ザンを散策していた。
≪祝福の針≫はサッシャに、≪黒蒼鉄の裁ち鋏≫はピティが作成中だ。
最後の≪天恵の蜘蛛糸≫だけはまったく所在がわからない。
ザンにいるのは、ここには闘技場もあり攻略組もよく滞在しているので、情報が聞けるかもしれないという期待があるからだ。
ちょうど都合よく、今闘技場でグランドバトルという参加自由のフリーバトルが開始したばかりだ。
おかげでいつもより人が多い。
それにだ。
少し1人になりたかったというのもある。
前回のマレクス鉱山にあった隠し通路。
あれが見つけられなかったのが悔しかった。
自分勝手な意地だが、運に頼らないプレイを目指していた。
コトハちゃんと競い合うつもりはないのだが、負けた気がしてしまう。
「ヒントはあったんだよなぁ」
悔しくて空を仰ぐ。
観察力。
疎かにしているつもりはなかったのだが、やはり悔しい。
「まぁ、切り替えよう」
心のしこりを落とすように口に出す。
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「ぜんっぜん、情報ないな」
人が集まる闘技場や酒場。
NPCにまで聞きまくったが皆「そんなアイテムは聞いたことがない」という。
俺は広場に面しているカフェの椅子に腰かける。
それに合わせてウェイターがやってきたので、適当にコーヒーを注文した。
少ししたらウェイターが机の上にコーヒーをおいた。
と言っても、このコーヒーは飲めるのだが、味はない。
フルダイブと言いながらも嗅覚と味覚はまだ実現されていない。
近いうちのバージョンアップで実装されると聞くが。
物思いに更けながら通りに行きかうプレイヤーを見る。
遠目で見るとプレイヤーかノンプレイヤーかは区別がつかない。
「隣をよいかの?」
「ん?」
目の前に白い髪の少女が立っていた。
真っ黒な瞳に、にこりと笑うと八重歯が見えた。
白い髪と同じくらい白い服は太陽の光を優しく反射していた。
「なんじゃ、浮かない顔をしておるの」
「まぁな」
「ふふん、主の悩みを解決してやろうか?」
サッシャとは違った方向の生意気さだ。
「なんだ、俺の悩みが分かるのか?」
「そうじゃなー」
その少女は、俺のコーヒーを勝手に取ると口をつけた。
「あーコーヒーはいいのう。
これほど酔う飲み物はないぞ」
「コーヒー飲んで酔う奴なんかいるか?」
「目の前におるじゃろ?
まぁ、そうすぐにカッカするな。禿げるぞ?」
男にそれは禁句だろ。
「まぁ、良い。
おぬし、探しておるんじゃろ?」
「何のことだ?」
「≪天恵の蜘蛛糸≫じゃよ」
「どこで手に入るのかしっているのか!」
「ふむ。知っておるし、知らんともいえる」
「あいまいな返事だな」
「そうじゃな、グランドバトルに出て優勝したら教えてやってもいいが?」
「もう、出場登録は終わってるだろ?」
「タッグマッチなら当日受付可能じゃぞ?」」
要求の意味が分からない。
「やらぬならいいぞ? わしとしては、主が探しているから仕方なく来たまでじゃ」
「ん? タッグマッチってことは、お前も戦うのか?」
「なんじゃ? 文句あるか?」
「いいぜ、グランドバトル。
優勝してやる」
「うむ。よく言った。
姓は≪やつか≫、名は≪はぎ≫。主とともに戦うのを楽しみにしておる」
「はぎか。
分かったよろしく頼むぞ」




