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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
17/44

第017話 回避盾はカニとともに

 暗く細い道が続く。

 なだらかに下っているようで、壁に手を当てながらゆっくりと降りていく。

 坑道と同じように天井には明かりが連なっており、ここが使われた後だということが分かった。


「一応、想定されたルートっぽいな」


 俺の言葉に誰かが「うん」とうなずいた。

 全員が少し緊張をしている。


 想定されていたルートとはいえ、明らかに隠されたルート。

 何があるのか、想像ができない。


 全員が武器を強く握りしめゆっくりと通路を進む。

 モンスターの気配はなく、静かだ。


 水が流れているのだろうか、遠くのほうに水音が聞こえる。


「どこまでおりるんだろうな」

「結構な時間あるいていますね」

「ここまでモンスターが出ないとなんか気が抜けそう」

「このまま出ないならそれに越したことないんじゃない?」


 少し話すとまた会話がなくなる。

 気配がないのが逆に緊張する。


「何が起きるか分からんから、先に各々の戦力確認しておくか」

「分かりました」

「じゃあ、私からいうね。

 武器はザラタンハンマー。攻撃速度が遅いから素早い敵は苦手かな。

 あと、使っていて気づいたんだけど、これ一定確率で防御無視があるかも」

「隠し効果か」

「たぶんね。倒しきれないと思っていた敵が倒せたりしたしね」

「じゃあ、次は私ね。

 武器はポイズンナイフね。射程は体感10mほどかしら。

 離れすぎると当たるけどダメージは低いわ。

 もっとも――」


 そこでにやりと笑う。


「当たれば毒にできるけどね」


 嬉しそうだ。


「じゃあ、最後に私ですね。

 武器は錫杖ですが、店売りのなので、あまり威力はないです。

 スキルは皆さん知っている通りですが、さっき新しく覚えたのがハイストデットです」

「おっ、攻撃力アップか」

「はい、代わりに防御力が下がりますが、上がり幅が大きいんです」


 コトハは嬉しそうにそう語る。


「もしかして≪アイなス≫と≪パラプリ≫はデメリットの効果も上昇するのかな」

「あっ、そうかもしれないです」


 ≪アイなス≫と≪パラプリ≫は有用なスキルかと思ったが、デメリットも上昇するなら使いどころが難しくなるかもしれない。


「後はオートリフレクトです。

 もっともおじさんのおかげで出番がないですが」

「ははは、出番がないように頑張るよ。

 じゃあ、最後に俺だな。

 最近取った≪泥の短剣≫だけど振れば1mほどまで伸びる。

 が、威力が下がるからあまり使い勝手はないかな。

 あと≪泥の英雄≫っていうスキルが、確率で攻撃を無効化する。

 まぁ、当たる気がないからお守り代わりってやつだな」


 自分のスキルの話だと自然と口が軽くなる。

 緊張した空気がいい感じに弛緩した。


 ちょうど俺が話し終わるころに道は終わり広い空間に出た。

 見上げるほどの天井に全員が横に並んでもさらに余裕があるほどの広い空間。


 天井や地面には鍾乳洞にあるような石筍(せきじゅん)があった。


「すごいです」


 そして、何より目を引いたのは中央に蒼く光る地底湖だった。

 天井から生える岩からぽたりぽたりとしずくが落ちそれが地底湖に落ちていく。


 コトハちゃんがその地底湖に近づくと大きな声を上げた。


「見てください! ≪蒼天結晶≫です!」


 地底湖にいくつか蒼い宝石のようなものが浮いていた。

 拾い上げるとコトハちゃんのいう通り確かに≪蒼天結晶≫だった。


「≪蒼天結晶≫って鉱石かと思っていたけど、これって魔力結晶体だったんだ」


 ピティが同じように≪蒼天結晶≫を取り上げまじまじと見た。


「この地底湖の水なんだけど、魔力濃度が凄いよ。

 これを焼き入れの水につかったらどうなるんだろう」

「そんなに変わるのか?」

「絶対変わるよ! このゲームの金属って単純に水だけだと温度が落とせないのよね。

 魔力抵抗があるからそれを貫くくらいの水がないといい焼きができないの」


 ピティが地底湖の水に興奮している。


「コトハちゃん、こっちには≪精霊鉄≫もあったわよ」


 サッシュがそばにあった採集ポイントから質の高い≪精霊鉄≫を取り上げた。


「凄い! 凄い! これ全部ほしい!」


 ピティが周りをくるくる回りながらこの空間を堪能している。


「しかし、まぁ、最後にこれを引くか」

「へへへ、粘った甲斐がありましたね」

「まぁ、らしいと言えばらしいか」


 あそこで諦めていたらここには辿りつけなかった。


「採れるだけ採って帰るか」


 俺がそういった瞬間、地底湖の向こうから何やら動く気配があった。


「まぁ、そうか、さすがにモンスターがいないってわけにはいかないか。

 全員戦闘準備!」

「はい!」

「いけるよ!」

「任せなさい」


 俺の声に全員が武器を構えて俺の後方に移動した。


「相手はロッククラブか――って、でけぇ!」

「ね、ネームドですね!」

「ハサミもでけぇ!」


 まるでシオマネキのように片方のハサミが極端に肥大化したロッククラブが現れた。

 物理耐性が高いロッククラブ。

 だが、一匹なら対処はそれほど難しくない。


「≪挑発≫!」


 前に躍り出て≪挑発≫を使う。

 案の定、巨大なロッククラブはこちらをぐるりと見た。


「注意は引くからガシガシ削ってくれ」


 ロッククラブの巨大なハサミを避けながら、≪剣の舞≫を踊る。

 ≪不敵の舞≫の効果でロッククラブは後ろからピティとサッシャに殴られてお俺を狙い続ける。


 減りは悪い。

 サッシャの攻撃でロッククラブが毒状態になった。

 ピティの巨大なハンマーを何発も喰らっている。

 が、体力はほとんど削れていない。

 今度は俺が短剣で攻撃するが、ダメージとしては微々たるものだ。

 攻撃速度は十分乗っているが、まだ≪剣の舞≫の上昇値が小さい。

 しばらく攻撃をしてもらう必要がありそうだ。


 パラライズストライクを撃ってもらってもいいが、ヘイトがばらついて範囲攻撃を撃たれてもよろしくない。


「コトハちゃん、ピティとサッシャの攻撃力をあげてくれ!」

「はい!」


 多少の防御が下がるかもしれないが、攻撃は全部こちらで受け持つ。

 喰らわないならデメリットなんてないようなものだ。

 ピティが大きく振りかぶった一撃で、ロッククラブの体力が大きく削れる。


「出た!」

「それが防御無視か。いいダメージだな!」

「ランダムだけどね」


 ピティの稀に出す防御無視と地味だが確実にむしばむ毒。

 ペースは遅いが体力は確実に削っていく。


「じゃあ、俺もだ!」


 振り下ろしたハサミに、短剣で斬りつける。

 どうやら、相手の防御よりも≪剣の舞≫の上昇が上回ったようだ。

 俺のダメージも通り始めた。

 

「よっし、このまま畳みかけるぞ」


 そう号令をあげた瞬間、ロッククラブがハサミを振り上げて腹を見せた。


「コトハちゃん! パラライズストライクだ!」

「はい!」


 ロッククラブが泡を吹こうとしたその瞬間、コトハちゃんの麻痺が成功し、ロッククラブの動きを止める。

 吹き出しそびれた泡がロッククラブの口から漏れ出る。


 やはり範囲攻撃だった。


「ぎ、ぎ、ぎ、ギギギイギギイギギギイ!」


 悔しそうにロッククラブが声を上げながら、ゆっくりとハサミをあげる。


「こいつ何かするつもりか?」

「その前に倒すよ!」


 ピティが本日2度目の防御無視を発生させた。

 これでようやく体力の半分が削れた。


 ロッククラブは大きなハサミをゆっくり動かす。

 まるで手招きしているかのように、ゆっくり何度も動かす。


「まさか! コトハちゃん、スローシンプトムを――」


 俺の言葉がわずかに遅れた。

 いつの間にか周りには黒山の人だかり、いや、カニだかりができていた。


「くそ、囲まれた!」


 カニ、カニ、カニ

 ロッククラブで壁ができている。


 ロッククラブの壁がこちらに押し寄せてきたので、コトハちゃんが慌ててスローシンプトムを張る。

 が、進行速度が遅くなるだけ何かが変わるわけではなかった。


 身長を超えるロッククラブの壁がじりじりとにじり寄ってくる。

 ピティとサッシャ、そして俺が必死でロッククラブを削るが、壁はそれよりも早くロッククラブの数を増やしていく。


「何体いるんだよ!」

「ちょっと、まずくない! 押し込まれそう」

「コトハー! 何とかしなさいよ!」


 ロッククラブの壁の圧力に負け、徐々に全員の距離が縮んでいく。



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