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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
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13/44

第013話 回避盾はユニーク武器とともに

「ふぅ……」


 俺は大きく息をついた。


「おじさん、凄いです!」

「ありがとう」


 駆け寄ってきたコトハちゃんの頭を撫でる。

 黒く綺麗な髪の毛が俺の手でくしゃっとなる。

 コトハはそれが気持ちいらしく、猫のように目を細めた。


「ミヤコ、見てよドロップアイテム!」

「おっ、ラッキーだな」

「ちょっと、これ凄い!」


 ドロップアイテムを見たピティが声を上げた。


「ミヤコ、これ頂戴!」

「どうしたんだよ。急に」

「トータスコータスの甲羅って硬質化すればするほど品質が上がるんだけど、

 これは凄いわ」

「そういや、結構硬質化してたからな」

「そこら辺のレアメタルよりも硬いわ。

 これで武器製作用のハンマーを作りたいのよ」

「武器製作用か……」

「ねぇ、お願い……」

「じゃあ、条件がある。

 それを渡す代わりに、コトハちゃんに武器を作ってくれ!」

「まっかせてよ! ≪茨の金槌≫以上のものを貰ったんだから最高のものを作るわ!」

「頼んだぞ」

「ええ、貰ってばっかりじゃ悪いからね」

「そろそろ、私、ログアウトしないと……

 学校の宿題が残っているので」

「じゃあ、私は、工房に籠ろうかな。

 せっかくの素材。最高のハンマーを作るわ」

「はいはい、2人とも好きにしてくれ」

「ありがとう! じゃあ、週末、裁縫屋に会うから絶対来てよね」

「じゃあ、おじさん。また、週末です」

「お疲れ様」


 ピティとコトハが目の前から消えた。


「さてと、俺は……」


 今回の戦いで分かったのは、やはりもうちょっと強い武器が欲しい。

 コトハちゃんほどの運があれば、あれよあれよと変なイベントに巻き込まれてレアアイテムとか貰えるんだろうな。


 と、物思いにふけっていると、ピコンと通知がなった。

 ウィンドウを見ると、どうやらコトハちゃんから連絡のようだった。

 メールウィンドウを開くとコトハちゃんからメッセージが来ていた。



 From:コトハ

 今日は助けてくれてありがとうございます。

 この後、おじさんはどうするんですか?



 どうやら、一人残ったのを心配したみたいだ。



 From:ミヤコ

 一人で素材探しかな。

 今日戦ってみたら攻撃力が低いからもっとと強い武器を探さないと



 メッセージを送り返してウィンドウを閉じる。


「と言ってもどこで、どこで探すかだな」


 普通のソロプレイなら気軽に探索できたが、今はスキル≪覚悟完了≫のせいで、デスペナルティが尋常じゃない。

 戦っている時は覚悟完了だとか思っていたが、いざ平時なるとちょっとした冒険も命がけというのは正直つらいところがある。


「まぁ、めぼしいところ回るか」


 夜霞(よがすみ)の沼の奥には立ち寄ったことがなかったので、奥へと進んでいく。

 途中に何度か戦闘はあったが、危なげなく倒して素材を回収していく。


 1時間ほどあたりを探索するが、めぼしいものは見つからない。

 やはりそうそう都合よくイベントには遭遇できないようだ。


 道を進んでいくと、徐々に足元の水気が増えていった。

 30分ほど進むと、道はほとんど見えず、膝まで水に浸かっていた。


 モンスターを倒していくが、水場のせいで回避が難しくなってくる。

 素材はおいしいので、あとでピティに何か作ってもらうことにするか。


 そう思いながら歩いているとまたピコンっと音が鳴った。

 また、コトハちゃんからのメッセージだ。


 from コトハ

 あの沼で素材探しですか?



 From ミヤコ

 うん。けど、いいの見つからないから諦めようかと思っていたところ



 そう返信してウィンドウを閉じた。

 実際、これ以上の探索は無意味そうだ。

 すぐにピコンっと音が鳴った。

 今度の返信は早めだ。

 勉強が終わったのだろうか。



 From コトハ

 沼の中とかにないんですかね?



 From ミヤコ

 沼? あの泥の中?

 さすがに泥の中にはないと思うけどな



 そう返信。

 が、ふと思った。


 言ったのはコトハちゃんだ。

 姉にして血を引いた娘だといった。

 俺は慌ててさっきの返信に追加のメッセージを送った。



 From コトハ

 泥の中潜ってみるよ。

 アドバイスありがとう。



 ちょうど、今は水が膝の上まで来ている。

 潜るにはいい感じの水位だ。


 俺はウィンドウを閉じると沼の中に身体を沈めた。


 水中を泳ぐには水泳スキルがいる。

 何度か泳ぎ続けるとスキル取得とスキルレベルが上がっていく。

 しばらく沼の中でパシャパシャとしているとスキル≪水泳≫を取得した。


 あとは泳ぎ続ければ水中での滞在時間と移動速度がスキルレベルともに上がっていく。

 浅い泥の中を泳ぎ続けてスキル≪水泳≫のレベルを上げていく。


「こんなものかな」


 ふつうは湖や海でやるのだが、あいにくここにはない。

 おかげで身体中泥だらけだ。


 目の前にスキル取得のウィンドウが現れた。


『スキル:泥泳を取得しました』


「ん? 何このスキル?」


 スキル:泥泳

 取得条件:泥の中で泳ぎ続ける。水泳とは別のスキルとなる

 効果:泥の中でも移動速度が落ちない


「おっ、これはラッキーだ。

 が、俺が欲しいのはスキルよりも武器だったんだがな」


 あたりを泳ぎ探したが、それらしいものは見つけられなかった。

 得られたものは大量の泥だけ。


「やっぱ、都合よくいかないものだな」


 その時、またコトハちゃんからメッセージがきた。



 From コトハ

 絶対見つかるように祈っておきます



 コトハちゃんからのメッセージを開いた瞬間、すぐ近くで、泥が盛り上がりマッドドールが現れた。

 沼に引きずり込み獲物を捕食する獰猛なモンスターだ。

 なぜか機動力が高い上に、仲間も呼ぶので戦うのは少々厄介だ。

 幸運の女神からのメッセージを閉じると俺は武器を構えた。


 泥だらけだが、スキル≪泥泳≫のおかげで機動力は落ちていない。

 マッドドールは泥を投げる飛び道具がある。

 囲まれると非常に厄介なので仲間を呼ばれる前に倒すのが得策だ。

 

 膝まで使った泥水を抵抗なく進み、マッドドールのそばに忍び寄る。

 攻撃しようと思ったが、ふと、違和感を覚え、その腕を止めた。


 マッドドールは索敵能力が高く、だいたい不意打ちされることが多い。

 が、どうもマッドドールはこちらに気づいていないのか戦闘態勢に入っていない。


 幸運なことなのだが、どうも様子がおかしい。


 迷ってしまい、一瞬の隙をみせてしまった。

 その隙をついたのか、マッドドールが大きく手を振り上げ、俺の肩をつかんだ。


 しまった。

 そう思った時には遅く、その腕は力強く身体を引き寄せた。


「って、あれ?」


 マッドドールの腕に攻撃判定がない。

 通常なら、≪紙の命≫のせいで大ダメージもおかしくなかった。


 引っ張られるまま、マッドドールに連れていかれる。

 そのまま連れていかれるとマッドドールの集まり不思議な泥の泉に連れていかれた。


「ここは?」


 その泥の泉にはマッドドールが大量に集まっていた。

 これら全部倒すのは正直かなりきつい。

 が、そこにいるマッドドールは戦闘のそぶりを一切見せない。

 むしろ、愛想がよい。


 もしかして、仲間と間違えられている?

 改めて自分の姿を見ると全身泥だらけだ。

 確かに、マッドドールと言われれば。ではある。


 泉の中央に泥でできた舞台のようなものがあった。

 その上を、マッドドールが代わる代わる昇りそこで踊りのような動きを披露していた。

 お祭りか何かなのだろうか。


 ここまで連れてきたマッドドールが俺の腕を引っ張った。

 どうやら、踊ってくれと言ってるようだった。


「ふふふ、踊り子スキルを習得した俺にそんなことを頼むわけか。

 見ていろ!」


 俺は泥の舞台に上がるとあらん限りの踊りを披露した。

 スキル≪影分身≫に≪身代わり≫。

 移動は≪泥泳≫と≪スライドウォーク≫を併用しての水上ムーンウォークを見せる。


 マッドドールも俺の踊りが受けたのか頭上に泥を投げて歓声を上げる。

 俺の踊りが終わり、次の踊りが始まる。

 意外と楽しかった。

 あっという間に時間が過ぎ、この祭りも終わりに近づいた。

 途中、なんどかまた踊るようにせがまれたので、スキルを駆使して色々な踊りを見せた。


 見上げるようなマッドドールが現れると、ここにいるマッドドールは急に静かになった。

 通常のサイズが人と同じサイズだとするとこのマッドドールはかなり大きい。

 おそらくネームドなのだろう。


 その巨大なマッドドールが俺のほうを見ると腕を伸ばした。


 戦闘になったらと思うと、一瞬身体に緊張が走る。

 が、それも杞憂だった。


 あたりにいるマッドドールから歓声があがった。

 おれは大勢のマッドドールに押し寄せられて舞台に上がる。


 巨大なマッドドールが俺に何か渡した。

 と同時に、目の前にメッセージウィンドウが現れた。


『スキル:泥の英雄を取得しました。

 合わせて、アイテム:泥の短剣を取得しました』


 聞いたことのないアイテムに急いでそのアイテムを調べる。



 泥の短剣(唯一武器(ユニークアイテム)

 攻撃力:0

 形状は不定かつ無限。剣速が上がれば上がるほど威力が上がる。



 それもゲーム上一つしか存在しない、ユニークアイテムだ。

 通常の数値ではなく、剣速で威力が上がるなんて俺向きの武器だ。


 なんてラッキーなんだ。

 たまには運がいい時もあるんだなと嬉しくなった。

 そう満足げに余韻を楽しんでいると、ピコンっとメッセージが来たことを示すアラート音がなった。


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