第011話 回避盾は素材集めともに
「あと、これなんですが」
ジャッジメントパニッシャーの衝撃を見たすぐあと、コトハはアイテムボックスからとあるアイテムを出して見せた。
「聖女の聖骸布ですが、使い方分かりますか?」
俺はコトハからそれを受け取った。
これはあれか。
俺はそれを少し見るとピティに渡した。
「うーん、これって素材かな?」
「だな。ってことは、ピティの専門ってことでいいか?」
「そうなんだけど……私ってどちらかというと金属専門なのよね。
だから、うーん、1人心当たりがいるんだけど……」
ピティは言葉を濁した。
「何か問題があるのか?」
「問題か……あるといえば性格かな?」
「一番考えたくない問題だな。
それ以外の心当たりは?」
「ないかな」
「選択肢ねぇじゃねぇか」
「だって、生産の中でも裁縫屋って少ないんだよ」
後半になれば、防具も鎧が多くなる。
そういう意味では、裁縫スキルを磨いているのはある意味茨の道である。
「で、その地雷野郎ってやつの話だけでも聞いてみるか」
「ははっ……野郎じゃないけどね」
ピティが連絡を取れたようだ。
「今は時間が合わないからリアルで週末ならって」
「俺はかまわないけど、コトハちゃんは大丈夫?」
「はい、週末なら思いっきりやれるんで」
「じゃあ、その間に武器でも作るか」
「あっ、なら、私『茨の金槌』がほしい!」
「ラムダソーンか。
ピティにいい武器がそろえば、俺らの武器もいいのを作れるし、それにするか。
コトハちゃんもそれでいい?」
「はい!」
俺たちは、ラムダソーンが取れる夜霞の沼に向かうことにした。
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始まりの町ティレスから南にしばらくいくとある夜霞の沼。
出現するモンスター水棲系が多い。
まれに状態異常攻撃をしてくるモンスターもいるが、出現率も高くなく、そこまで警戒する必要はない。
レベル30台の適性狩場でもある。
「今、攻略組トップってどの程度なんだ?」
「ネットの情報だと、レベル50でキャップされちゃっているみたいよ」
「それくらいなんですか?」
「コトハちゃんは、今34か。で、ミヤコは28。私が31だから。
50キャップまでもう少しってところよね」
「この手のゲームはレベルが上がれば上がるほど1上げるのがきつくなるからな」
「そそ、だから、レベル1上げるよりレアスキル1つ見つけるほうが強くなるのには手っ取り早いのよね」
「例えば、コトハちゃんみたいなのか」
「そうなのよね。で、攻略組はそれらレアスキルは公開しないのよ」
「まぁ、独占したい情報ではあるしな」
「私のスキルってレアなんですか?」
「そりゃそうよ。≪アイなス≫と≪パラプリ≫に≪三聖女≫。
どれも未発見のレアスキルよ」
「まぁ、≪アイなス≫と≪パラプリ≫はクラウンができれば、大手クラウンなら簡単に達成できそうだがな」
「クラウンってなんですか?」
コトハが耳慣れない単語を聞いて不思議そうに尋ねた。
「うーん、まぁ、チームとかグループみたいなものかな。
大手クラウンになるとそれこそ何百人と集まるからな」
「へぇ~」
「っと、そろそろ、狩場だ。
ラムダソーンは沼地にいるアンガーパイソンという蛇型のモンスターが落とすぞ」
「へ、蛇型ですか……」
コトハが少しげんなりした顔でそういった。
「まぁ、すぐに慣れるさ」
「じゃあ、まずは三人で戦ってみましょう!」
ピティの提案に乗って、アンガーパイソンを三人で狩り始めた。
メインは、俺がモンスターの注意を惹いて、その隙をピティとコトハが撃つ。
なのだが、時間に立つにつれて役割が変わっていった。
「パラライズストライク!」
目の前のアンガーパイソンが麻痺を起こして、その場から動けなくなる。
「何これ、状態異常の成功率が100%なの?」
「MENのパラメータってここまで左右すんのか」
ピティと俺は感心というか、呆れに近い感想を漏らす
敵の注意を惹いて隙を作り、パーティの盾となる。
そんな素敵な回避盾を目指していたのだが、現状、目の前の敵はことごとく麻痺で倒れていく。
「でも、パラライズストライクって単体なので、複数出てきたら止められないですよ」
「いや、そうは言うけどさ……」
正直タンク役ってなんなのって感じはしている。
「ミヤコ! 前方からエンデリザードが3体来てるわ!」
「任せろ! ピティ!! 俺が注意を惹きつける!」
「おじさん、私も手伝います! スローシンプトム!」
スローシンプトムは術者を中心に相手を鈍足化させる特殊なフィールド結界を張る。
鈍足化した敵はそのフィールドから出ない限りは動きが極端に遅くなる。
このスキルは敵がタンクを超えてヒーラーなどに攻撃するときに若干の余裕を作ってくれる緊急避難的なスキルだ。
だが、コトハの足元から広がったスローシンプトムのフィールドは俺の足元を軽く超え、襲って来ようとしたエンデリザードをすっぽりと覆ってしまった。
こちらに走ってきたエンデリザードは当然、そのフィールドに覆われ今じゃ歩くよりも遅い勢いでこちらに向かってきている。
「えっ、えぇぇ……俺が……」
惹きつける意味が果たしてあるだろうか。
とろとろと歩いてくるエンデリザードを持っていた短剣で斬りつけて撃破する。
「いや、そのフィールドの広さなんだよ?
普通はせいぜい4,5歩の距離までだろ!?」
「ミヤコ。あれよ、MENには範囲条件もあったわよ」
「……コトハちゃん?」
「な、なんでしょう」
「ワイドヒール覚えてたよね」
「はい」
「使ってみて?」
「今ですか?」
「今」
「分かりました。ワイドヒール!」
コトハの足元から回復の魔法陣が広がる。
「うわぁ……」
「こんな広いのね」
俺とピティが光る魔法陣を見て唖然とする。
「そ、そんなにすごいんですか?」
「コトハちゃん、ワイドヒールってせいぜい隣接している相手を回復する程度だ。
それをここまで離れた俺とピティまで回復できるなんて」
「それも、回復量も凄いよ! INTはあまり高くないはずなのに、なんでかな?」
「あれか……≪アイなス≫か……」
「パーティ内のスキル効果があがるってやつ? 低いINTをスキルで補っているってことなの?」
「だろうな……」
あれ、これって俺必要なくね。
そんな疑問さえ浮かんでしまう。
少し先の沼地が大きく盛り上がり、中から巨大な亀が顔を出した。
「ミヤコ! あれって!」
「間違いない。トータスコータスだ。
フィルード主クラスだぞ」
通常湧き出るモンスターと違って、特別な巨大モンスター。
独特の名前がついていることから通称ネームドと呼ばれている。
「注意は俺が惹く。
コトハちゃんはパラライズストライクを撃ってくれ。
ピティはアタッカーとして相手の体力を削っていてくれ」
「分かったわ!」
「分かりました!」
沼から這い上がったトータスコータスは大きく唸り声をあげた。
剣山のようにとがった甲羅から伸びる4本の足は太く、長く伸びた顔は鋭いくちばしがカチカチと音を鳴らしていた。
「いくぞ!」
俺はトータスコータスの前に躍り出た。
「パラライズストライク!」
後ろからコトハちゃんの声が聞こえ、トータスコータスの身体がびくりと震えた。
麻痺は成功したみたいだ。
「麻痺、成功です!」
「助かった。
ピティ、攻撃は俺が全部惹きつけるから、頼んだぞ!」
「おじさん、でも、麻痺はきいてま――」
コトハちゃんがそう言葉を投げた瞬間、トータスコータスの針が甲羅から飛び出し宙を舞った。
「トータスコータスの甲羅から射出される自動迎撃の針。
これは麻痺対象外だ」
その数は数百。
空が針に遮られ暗くなる。
俺は、短剣をもう一本抜いて、左右の剣を軽く打ち鳴らす。
キンキンッ。
透明な音が響く。
「見せてやる! 回避盾の真骨頂だ。
こっちだ! ≪挑発≫! と……。
剣の舞!」
スキル:≪挑発≫により射出された針が一斉に俺に向かって降り注いだ。




