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君が本を閉じるまでに  作者: れおぽん
2/11

カウンターの距離

彼女がこの僕だけのはずだった空間に来てから何分が経っただろうか。


勉強に集中しようにも、できない。


それもそのはずだ。


見知らぬ女の子が、突然、僕の隣に、座ってきたのだから。


横目でちらりと彼女の姿を窺う。


やはり可愛い……じゃなくて。


なぜ彼女はそこに座るのだろうか。


これではまるで一緒に勉強をしに来た恋人同士じゃないか。


なんて馬鹿な妄想も大概にしなければ。


僕は受験勉強をするために図書館へやってきたのだから。


僕は自分のリュックの中からイヤホンを取り出し、そのコードをスマホに挿した。


僕はお気に入りの曲をピックアップしたプレイリストを選択し、ランダムに流し始める。


この時点で無音の図書館に来た意味は九割ほど失われたが、隣の彼女に気を取られて集中できないよりはマシだ。


それに僕は家で勉強する時はいつもこのスタイルだった。


これもう家で勉強するのと変わらないな。


受験本番まであとひと月もない。


ここからが正念場なのだ。


参考書を開き、昨日やったところからの続きを始めた。


すると、突然右耳から音が消えた。


隣の彼女にイヤホンを取られたのだ。


彼女は僕から取ったイヤホンを自分の耳にはめると「へえ、こういうの聞くんだ」とつぶやいた。


二人で一つのイヤホンを共有してる今、彼女の顔はすぐ横にある。


ほのかに甘い香りが僕の鼻をくすぐる。


肩と肩が触れそうな距離にまで来た時、僕の緊張度は体育祭の百メートル走スタート直前をはるかに超えていた。


体温が急激に上がるのがはっきりと分かる。


心臓の鼓動が速くなるのも。


彼女は自分の椅子を僕のすぐ横に移動し、再度、腰掛ける。


2人ともイヤホンを左耳にはめて、少しの間静寂が流れる。


なんて非対称な二人なのだろう。


自分たちを客観的に見て、そう思う。


彼女は頬杖をつき、音楽に優しくリズムをとっている。


思えば、この時もずっと彼女に見惚れていたんだ。


勉強しなきゃ。


そう思っても、それ以上に惹かれていた。


隣の彼女に。


名前も知らない、隣の彼女に。



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