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不思議な科学魔法洞窟と少年

作者: リケビライター

初夏、長野県のとある山。


五才の少年と少女が、山道を駆けている。


「あははは!楽しいー!」


「もっと先へ行こう!」


二人はその道をぐんぐん進む。


2時間ほど彼等は川遊びや昆虫観察などに没頭した。


「そろそろ戻ろうよ」


「あれ、来た道どっちだったかしら」


「え!?」


二人は急に思い出したように立ち止まった。


「ああ~~道に迷った」


「ど、どうしよう……」


「とりあえず、分かれ道を全部ある程度行ってみて、来た覚えがある所を見つけ出そう!」


二人は、来た道を引き返し、分かれ道に来た所で、それぞれ歩いてみた。二人は連れてきてくれた親の元へ早く帰ろうと懸命に探ったが、どれも来た覚えがない道だった。


「ど、どうしよう……」息も絶え絶えに少女が言った。


「日も暮れてきたな……とりあえずどっかで休憩しようぜ。んで、作戦を立てよう」


二人は、しばらく、辺りを歩いた。すると、道の先に、広い草原が見えた。


「あそこだ!あそこでひと休みして作戦を立てよう」


林の中の道を出ると、そこには学校のグラウンド程の草原が広がっていた。


「ふぅー」


二人はその真ん中辺りに行き、倒れ込んだ。


しばらく休憩した。5分程して、少年が口を開いた。


「どうしようか……僕ら、帰れなくなったんじゃ……」


「そうだ!スマホがあるじゃない!!」


「「電話だ!」」


二人は同時に叫んだ。


「慌ててて、すっかり忘れてた……」

少年が番号を打ちながら言った。


「…………」


「あー良かった。これで母さんたちが来てくれるわ」


プルルル、プルルル


「……なあ棗」


「どうしたの」


「ここ、圏外だ……」


「あ、そうか、ああ……」


少女はぐったりしゃがみこんだ。


「さーて、どうするかな」少年が言った。


「もう夜だわ……完全に日暮れてるし」


「……」


「……」


「山で勝手に遊び過ぎたら良くないな……ん?」


少年は唐突に立ち上がった。


「どうしたの?」


少年は愕然としていた。


「あそこの木々の先に、何かを感じる、何か……自然のエネルギーみたいなものを」


「な、何を言ってるの?エネルギー?どこ?」


少女も立ち上がり、少年が指指した先の木々を見つめた。懐中電灯を取り出して照らした。


「何も無いわよ?」


「そこじゃない、その先200mくらいに、〝何か〝がある」


「それって……どういうこと?何か感じるの?」


「とにかく行ってみよう!」


少年はそこへ走って行った。


「待ってよ!」少女も続く。


「ちょっとちょっと、どういうことなの、詳しく説明してよ」


少女が走りながら聞いた。


「多分着いたら分かる」


少年はそれだけ答えて走った。


そして、〝そこ〝にたどり着いた。


「洞窟!?」


そこには、高さが3m程の洞窟が高い岩の下部にあった。


「ああ、この中に何かあるぞ!!行こう!!」


「待って、危険なものだったらどうするの?」


「大丈夫、僕が保証する」


少女は一瞬躊躇った。が、


「分かったわ、海斗。」彼等は幼い頃から非常に気が合い、どちらかがもう一人を疑ったことなどなかった。



二人は懐中電灯を照らし洞窟に入って行った。


「ね、その何かってのは後どれくらいにあるの」


「もう少しだ」


奥の方に入っていき、もう懐中電灯で照らした所以外は完全に真っ暗になっていた。気温は涼しく、足音が、湿った床にピシャッと大きく響いた。


「あ!光!?」


少女は驚いた。


「ああ……遂に着いた」


曲がり角に来て、そっと曲がった途端、この世のものとは思えないほどの美しい光景が見えた。


洞窟の上から地面までを雲か霧、水しぶきのようなものが覆い、その中から金色、銀色、青、赤、紫、緑、などいろんな色の光源が点滅していた。


「すごい…………なんだこれ」


二人はあまりの神々しさに魂を奪われた。


「ここってどういう所なのかしら」


少女が言った。


「わからない……けど、天国のような所だってことは確かだ」


少年は感動しながら言った。


「中へ行こうよ」


「ああ……」


二人は足を霧のような所に踏み入れた。


その霧状の世界を二人はまるで霧がかった山道を歩くように進んだ。50m程歩くも、その景色は変わらなかった。


しかしその先から視界が開けてきた。


そしてーー見えた


〝別世界〝が



まさに天国と呼ぶにふさわしい所だった。


地面は雪のようなもので覆われ、高さ20m程の雪状の物で出来た壁がその空間を形造っていた。その壁の表面を大小色とりどりなものが張りついていたり浮かんだりしていた。それら一つ一つから宝石に太陽光を当てたような光がキラキラ輝いていた。


「うっわー…………」


少年は胸を打たれた。


少女は言葉を飲んでいた。


あまりの美しさに二人はしばらく見とれていた。


やがて少年が我に返って言った。


「そうだ、もっとよく見てみようよ!」



二人は歩みよって、高い壁や雪のようなものはなんだろうと見たり調べたりした。


「ちょっと待って……これって水分子の模型じゃあ」


「分子模型?どこに」


少女は壁を調べていた手を止め、きょとんとして聞いた。


「ほらここ」


少年が指差した所には、確かにそれらしきものがあった。手のひらサイズの赤い球に、それより少し小さな青い球が左右の下部に二つ付いている。しかもただの模型ではなく、宝石のように輝いていた。


「あれ、これだけじゃないわ、ここにも、あそこにも、あ、あれなんか浮いてるじゃない!?」


そう、その辺りには宝石状の水分子模型がたくさんあった。浮いているのは〝魔法〝のようだった。


「それだけじゃない……他にもいろんな分子があるぞ!」


その水分子模型の上には、他の多種多様な分子模型が浮かんでいた。


「形だけで分かるもので、硫酸、二酸化炭素、アンモニア、メタン……まだまだあるな……」


それらを構成するそれぞれの原子模型から特有の色の光が点滅し、クリスマスのイルミネーションのようになっていた。



「こっちにもあるよ!

生物に出てくるいろんな模型が!」


「へ?」


少年は少女が見ている所へかけ寄った。



そこには確かに、カワセミ、コマクサ、ゼニゴケ等いろんな生き物や、生物の資料集で見たことがある、細胞分裂の様子、消化管、DNA等の、宝石のように色とりどりに輝く模型がたくさんあった。



「凄い……ここって本当に何なんだろうな、実験施設?違うな……研究室?いや、それにしては派手過ぎる……理科の模型屋……でもないしなこれは……」


少年が自問自答した。


「ガラス細工店に似てるっちゃ似てるけど、そういう次元超えてるわね、浮いている物まであるし……クリスマスのジオラマと理科の世界が融合した異世界みたい」


少女が驚きと感動の入り交じった声で言った。


「だよね、それに浮いている奴とかどうやってるんだ……魔法か?」


そう答えた時、少年はまだ全く見ていない所があるのに気づいた。


部屋の奥の方に、立て札があった。大人程の大きさの氷のような瓦礫の上にあり、奇妙な形の傘が被されてある。何か書いてあったが、傘に隠れていまいち見えない。


「棗、奥に何か書いてある立て札があるぞ!」


「え?どこ、見えないわよ」


「あーじゃあ僕の位置に」


少女は少年と場所を変わり、少年が指差した方を見た。


「あ!ほんとだ何かある」


「あそこに行って、何が書いてあるか見てきてくれないか?木登り名人の棗ならって」


少年の知る限り、少女ほど木登りが上手な人はいなかった。


「まああれくらいの瓦礫の階段ならいけそうだね、行ってくるわ」


少女はその下部まで行き、



少女は瓦礫を登っていく。思った以上に苦戦しているようだ。


「なんだかこれ……登りにくいというか、足をかけにくいわね……」


少女が懸命に登りながら言った。


「棗でも苦戦するのか……その氷もいったい何なんだろうな……」


ようやく少女は立て札に手が届きそうな高さまで登れた。


「よし!後少しだ棗!!」


いったい何と書いてあるのだろう?この不思議な部屋の秘密か?


「……よし!この傘をまずどけるわ」


少女は傘へと手を伸ばした。


ドーン!!


突如遠くで大きな音がし、洞窟の道の方から石がバラバラと崩れ落ちる音が聞こえてきた。


「キャ!!」


少女の足元が揺れ、落ちてしまったが、しっかりと着地した。木登りで上からの着地はさんざんやった。


「棗ー!」少年が叫んだ。


「大丈夫か?棗!」


「ええ、それよりこれは!?」


「何かが爆発したのかもしれない、戻ろう!!」


少年は少女の手を取り、来た方向へ駆け戻った。いったい何だ?この部屋の持ち主に見つかったのか?火山や地震か?


部屋を出、洞窟の道に戻ると、一目散に入り口へと走った。洞窟の天井から、石が轟音を上げてバラバラと崩れ落ちてきていた。二人は何とかそれを避けながら駆けた。


「光だ!入り口が見えたぞ!!」


入り口を出た。間一髪で逃げ切れた。出た途端に、上から落ちてきた大きな岩で洞窟はふさがってしまった。


「やったー!!出来たぞー!!!遂に、遂に習得したー!」


洞窟が崩れた外で、はしゃぐ人がいた。何とも奇妙な光景だったが、とにもかくにも、二人は互いの無事を確かめ合った。


「良かった、お互い怪我は無いわね」


「ああ」


二人は今出てきた洞窟を眺めた。岩が落ちるのも収まり、大分静かになった。


「ふさがっちゃったわね……」


「今のは一体何だったんだ……」


「え!?人がいたの!!?」


先ほどはしゃいでいた人だ。自分達と同じ年くらいの少年だった。体操服のような服を着ている。髪は肩にかかるくらいの長髪で、手に〝刀〝を持っている。


「えーー」


「ごめん!!人がいるとは知らずに……無事かい?君達」


「あ……はい」


少年は呆気に取られて答えた。少女もかなり変わった人だと思ったらしく、少し警戒していた。


「なら良かった。僕、ここら辺で修業してたんだけど、この洞窟の前に来て練習したら技が出たんだよ!!!そしたら洞窟に当たって崩れちゃって……練習前中に入って確かめた時は誰もいなかったんだけどな……本当にごめん!!」


その少年は深々と頭を下げて言った。


「あのーー修業って?」

少女が聞いた。


「あ、そうだった、まだその説明してなかったね……ここで話すのもなんだし、僕の家に来ないかい?」


二人は顔を見合せた。少年が少し向こうを指差した。少女はその意味を汲み取り、少女はこくりと頷いた。


「あの、ちょっと向こうで話して来ていいかしら」


「構わないよ」


二人は少し離れて話し合った。


「どうするの」少女が聞いた。


「ちょっと変わった人だけど、着いていく価値はある……というか、興味がある」


「でもあの人、刀みたいなの持ってたわよ

。まさかとは思うけど、本物だったらどうするの」


「でも、きちんと謝罪してくれたし、悪い人には見えないよ。」


「それもそうね……わかったわ。とりあえずついて行きましょうか、もう多分夜の9時くらいだし」


「あ!そうだ僕達山で迷ったからどうするんだって話だよな……とりあえず彼の家って所へ行くしかないな」


「じゃあ決まりね、彼の所へ戻りましょう」


二人は刀の少年の所へ戻った。


「もういいかい、それじゃ行こうか」


と刀の少年。


「いいよ」「いいわよ」


二人が答えた。


三人は崩れた洞窟を離れ、刀の少年の方へ付いていった。



「懐中電灯の電池切れそうだ」少年が言った。



「持ってるから大丈夫だよ」


刀の少年がポケットから小さなランタンを出して言った。


「ところで貴方は何者?」 少女が聞いた。


「その前に君達の方から教えてくれないか、こんな場所でこんな時間に何してたんだい?」


「ああ僕らはこの山の麓に住んでて、今日はここへ家族と遊びに来たんだけど、迷子になったんだよ。で……」


「それで私達、この辺りをうろついてたら、さっきの洞窟に行き着いたって訳」


少女が繋いで言った。そして少年にあの部屋の事はとりあえず言わないように口に人差し指を立てた合図を送った。少年は了解した。


「僕は黒瀬海斗、よろしく」


「私は花咲棗(はなさきなつめ)。棗って呼んでくれていいわよ」


「なるほどね。そういうことならちょうど良かったよ、僕この辺りの山小屋に住んでいるんだ。泊まっていきなよ。漣隼人(さざなみはやと)って言うんだ、よろしく」


「山小屋?一人暮らしなの?」海斗がちょっと訝しげに聞いた。


「そうだよ。あの山小屋は凄いよ……ここで言っても信じないだろうから見てのお楽しみだけど、『ま』がつく世界に関係しているとだけ言っておこう」隼人は異様な程にニヤニヤしながら言った。


(まさか魔法だなんて言わないわよね?)

棗は洞窟での光景を思い出して眉をひそめた。



「さっき洞窟を破壊したのが君の仕業だって言ってたけど、本当に?」


「ああ、そうだよ」


「どうやって?」


「それも、小屋に着いたら分かる」


二人は妙にもったいぶった隼人の話し方に不安を覚えたが、現状を思うと彼に着いていくより他になかった。


「ほら、あそこ」隼人が指差した先に、確かに小屋が見えた。丘の上にある。木で出来ていて、見事に自然と調和していた。


「さあ、見て驚けよ……」

隼人が待ち切れないように言った。


三人は少し高い丘を登って、小屋に着いた。隼人が正面の扉へと進んだ。「漣隼人」と書いた名札がある。


「ねえ、それってどういうもの?」海斗が聞いた。


「見れば分かるよ、それ!」隼人はそう言って扉を開けた。



山小屋とは思えない程に見事だった。洗面所、台所、食卓、キッチン、食器、本棚などが揃っていて、さながら普通の家のようだった。本棚には、様々な理科の本が並べてある。『力と運動』『熱と気体』『波』『熱化学と化学平衡』『遺伝子の働き』などなど。


「化学の本とかあるじゃん!へー」海斗が興奮して言った。


「これは何の本?」


棗がもう一つの本棚を見て言った。見ると、海斗と棗がこれまで生きてきて見たことも無い題名の本が並べてあった。



『理系魔法入門』『自然霊図鑑』『理系魔法と化学反応の起源』などというものだった。


「何?これ、読んでもいい?」海斗が隼人に聞いた。


「ああ、是非とも読んでくれ」隼人はある事を思っていた。これを見たら、この二人も……?


すかさず海斗はその本の一つ、『理系魔法入門』を手に取り、パラパラと捲った。


「え……これ……何、どういうこと……」


海斗は非常に摩訶不思議なものを見ていた。なんというか、〝我々の世界とは違う〝ような世界観をそれに感じた。


「ねえ、君これ一体全体何の本だい!?」海斗が隼人に聞いた。


「ああ、それについてはまた後で話すよ、話すと長いからね」隼人が答えた。



その本棚の上には、原子核の周りを回る電子や電気回路等の〝浮いている〝模型があった。


部屋の奥には物理で出てくる単振り子が、天井から糸で吊るされた金色の球としてゆっくりと長い周期で振動していた。


天井には太陽を真ん中として8つの惑星が同一平面上に回る模型が浮いていた。


「これは……」海斗と棗は、山小屋とはあまりにもかけ離れた豪華さと、魔法使いの住み処のような感じとで肝を潰していた。


「どう?」隼人は二人に感想を促した。


「これは〝君の家〝なの?」


海斗が聞いた。


「多分そうだよ、家の外に僕の名前が書いてある名札があったから」


「……」海斗は顎に手をあてて何か考えていたが、空腹の音が腹から鳴った。


「そうだ、僕達晩ご飯食べてないんだけど」


「ああわかった、今から出すよ」


隼人はそう言って台所に行き、出来立てのカレーライスを取り出してきた。


「え?今作ってたの?

」棗が聞いた。


「いや、勝手に出てくるだけ」


「え??どういうこと!?」


二人は台所に行き、隼人がいましがた〝出した〝という所を見た。


キャビネットから取り出したようだ。中を覗くと、なんと、エメラルド色の煙が奥を埋めつくしており、ここから出したのだという。


「こ こ か ら 出 し た ?」海斗が驚いて聞いた。


「ああ。食事は全てここから出てくるんーー」


「ちょっと待って!ここ、本当に〝君の〝家?誰か他の……その、〝魔法使い〝の家だったりはしない?」


海斗が再確認した。


「ここに来た時から、ここは僕の家だって、直感で分かるのさ」


「じゃ、この魔法の料理取り出し口みたいなのは、君がやってるの?」


「いや、この小屋が勝手にやっていることさ」


「それってーー」


「ねえ、もう頂きましょうよ、冷めちゃうわ」


海斗の質問を遮って棗が言った。



二人は食卓に着き、棗は隼人に部屋のいろんな事についてたくさん聞いた。だが海斗は会話に参加しなかった。


一体どういうことだ?この小屋が漣隼人のものだとしたら、誰が作ったんだ?彼の親は魔法使いか何かか?あの洞窟にこの小屋……この辺りは〝魔法使い〝の住み処なのか?そんな者がいるとは勿論信じられないが、しかし……


「ねえ、君もそうなの?」


隼人が海斗に聞いた。


「え、何が?」


「君も5才で中学理科は全部習得済みで、今は高校理科を自分でやってるんだね?凄いよ!僕以外に二人もいたなんて!僕そういう人に会うの初めてだから!」


「ああ、うん」


「どの辺りまでやっているんだい?」


「僕は化学好きだから、高校理科は化学しかやってないけど、まだまだだよ。計算は簡単な奴ならできるけど、中和滴定の二段階や溶解度積の所とかまだ全然できない……無機・有機は知識部分だけだいたい覚えたかな」


隼人はこれを聞いてワクワクした。理科好きの血が騒ぐ。「へー。なるほど。化学の計算は、物理みたいにほぼ文字だけでやるの?」


「いや、数値を当てはめてやる計算が多いと思う」


海斗も、先ほどのことは忘れて理科の話が盛り上がるにつれ、だんだん楽しくなってきた。


「へー、やっぱり化学は違うんだな」


「君は物理専門なの?」


海斗が聞いた。


「専門というか、僕は理科は全部好きだけど、物理が4分野の土台になっているって言うから、高校理科はまず物理からやってみようかな、と。そしたらむちゃくちゃはまってさ!!」


「特にどういう所が楽しい!?」


海斗が聞いた。


「世界観とか、それに式を書く時のあのたまらないカッコよさ……あれは物理が断トツだと思うよ。」

ここで海斗はハッとした。


この隼人という少年は、ただの人なのか?あるいはまさか、この少年も、魔法使いなのか?今の会話だけからだとただの理科好き少年にしか見えないが、ここに来た時にあの奇妙な本について何か詳しそうな様子だった。


「ねえ、隼人君、先ほど言ってたあの本についてだけど……」


「ああ、そうだった。あれは〝サイエンス・ウィザード(理系魔法使い)〝の教科書かな。見ての通りだけど、サイエンス・マジック(理系魔法)の出し方とかが中心に書かれてるよね」


海斗は再びあの本を開いた。目次には、『理系魔法使いとは』『理系魔法の出し方』『自然霊の取り込み方』……と続いていた。


海斗が第1章の最初の方を読み上げた。「サイエンス・ウィザード(理系魔法使い)とは、古代からいたとされる、理論科学を自らが持つ魔力で操って魔法を使う者である。ここでは筆記する科学を理論科学と表記する実際に実験したりする科学と区別する為。やり方の概要は、まず、対象とする行為に関係する式や定理を二つ、空中に書き並べ、次にサイエンス・ソードに自らの魔力でネイチャー・ソウル(自然霊)の力を取り込み、その力を蓄えた刀で二つの式を融合させ、新しい、理系魔法界特有の式・定理を完成させ、発動させる、というものである。」


「ああ、それが基本で、具体的なやり方とかは後の章に載ってる。」隼人が言った。


「なるほど……ってなるほどじゃない!これ一体〝何の〝話なんだい?子供が遊びで書いた本かと最初思ったけど、大人が正式に書いてる奴じゃんこれ……」


「書いてある通りさ。それは〝理系魔法使い〝の本だよ。僕も初めてこれを読んだときは目を疑ったよ。でも、実際にやってみたら、で き た ん だ。」


「できたって、何が?」


「今君が読んだことさ。僕も自分で驚いたよ、あんなことができるなんて。洞窟を破壊してしまったの、それによるものなんだ。僕はーー〝サイエンス・ウィザード(理系魔法使い)〝だったんだ」


一瞬、小屋中シーンとなった。外の虫の鳴き声だけがジーーージーーー、リッリッリリリリリリと聞こえた。


「君がーー魔法使い?」


海斗が聞いた。































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