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そして今度は麻沙美先輩のお家で……①



 初エッチをした次の日の朝というのは、何とも感慨深い……と思いきや、そうでもなかった。

 いや、満足感とか充足感とか、そういった感覚は凄くあるんだけど、それと同じくらい疲労感も強く感じていたからだ。

 しかも、これから向かう先は麻沙美(まさみ)先輩の家ということもあって、焦燥感すら感じ始めている。



(はぁ……、でも行かなくちゃ、押し掛けられかねないからなぁ……)



 麻沙美先輩とは、先日会えなかった分、今日埋め合わせることになっている。

 それを反故にしたら、間違いなく麻沙美先輩は怒るだろう。



(……でも、昨日の今日だと、やっぱり気は進まないよなぁ)



 僕だって、麻沙美先輩のことは好きだし、普段だったらこんな気分にはなりはしない。

 ただ、昨日あれだけのことをしておいて、今日別の女性に会うというのはなんとなく罪悪感がある。



(せめて、伊万里先輩がいてくれればなぁ……)



 残念ながら、今日は伊万里先輩の方に用事があるらしく、一緒に来ることはできないそうだ。

 どうにも複雑な気持ちは拭えないが、こればかりは仕方ないだろう。



(……それにしても伊万里先輩、あれから大丈夫だったかなぁ)



 シーツや衣服の始末や、小鞠さんへの誤魔化しなど、色々大変なんだったんじゃないかと思う。

 ……まあ、十中八九バレていそうな気はするけど。





 ◇





「我が家へようこそ! 藤馬君!」



「ワオン!」



 そう言って、麻沙美先輩とジョネスは僕のことを盛大に迎えてくれた。

 いや、何が盛大かって、二人とも(一人と一匹だけど)扉を開くなり飛びついてくるんだもの……



「ま、麻沙美先輩! そんないきなり抱き付かないで下さいよ! あとジョネスも! そんなに舐めないでってば!」



 ジョネスが耳周りを嘗め回すので、こそばゆくて身震いしてしまう。



「む、私も負けていられないな」



「なんで犬と張り合うんですか! やめてくださいよ!」



 張り合って耳を嘗め回す麻沙美先輩の顔をなんとか遠ざけようとするも、片方からジョネスの攻めを食らってるせいで上手く力が入らない。結局、僕が崩れ落ちるまで二匹の攻めは継続したのであった。





 ………………………………



 ………………………



 ……………





 顔を洗ってリビングに戻ると、麻沙美先輩はソファに足を汲んで座っていた。

 その姿から、どことなく威圧的雰囲気が感じとれる。



「それで藤馬君。昨日はお楽しみだったようだけど、どうだった? 良かったかい?」



「っ!?」



 な、なんだいきなり!? ま、まさか、麻沙美先輩は昨日のことを知っているのか!?

 ……いや、落ち着け。今のセリフは、何か確証があって出てきた言葉だとは思えない。

 恐らく、聞きようによってはどうとでもとれる聞き方をして、カマをかけているのだ。



「ええ。蟹鍋をご馳走になりまして。とても美味しかったですよ」



「……藤馬君、私が聞きたいのは、そんなことじゃないよ。伊万里との〇ックスはどうだったかと聞いているんだ」



「なっ!? 何を言ってるんですか!? なんで僕と伊万里先輩がセッ……をしたことになってるんですか!」



 カマをかけるどころではない。いきなりの断定である。

 まさか、本当に知っているのか!? だとしたら伊万里先輩経由なのか!?



「誤魔化しても無駄だよ。私は、そういうのは匂いでわかるんだ」



 匂いって何!? 僕、何かそんな香りでも放っているの!?

 ていうか、先程のことといい、もしかして麻沙美先輩って先祖は犬だったりするのか!?



「おいおい、私はれっきとした人間だよ。ちょっと人より嗅覚が優れているだけさ」



 またしてもこちらの思考が読まれてしまう。

 駄目だ。僕では麻沙美先輩に隠しごとをできそうにない……



「……た、確かに、昨日はその、してしまいましたよ。でも、感想とかそういうのは……」



「いやいや、あるだろう? 気持ちよかったとか、何回イッたかとか、どんな体位だったとか!」



「ちょ! 何をそんなデリカシーのないことを!? そんなこと、言えるワケないじゃないですか!」



「いや、藤馬君には言う義務があるよ。じゃないと、このあとのプレイに支障をきたすからね」



 …………今、なんて言ったこの人。



「ま、麻沙美先輩。プレイって、なんの話ですか?」



「決まっているだろう。これから藤馬君とする、〇ックスのプレイのことだよ」



 ……いや、わかりたくなかったけど、わかっていましたよ。



「するワケないでしょう!?」



 僕は脱兎のごとく逃げ出した。





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