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亡国のイデア  作者: おこめ
第三章
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コルラ峡谷

――ギィィ…


 イデアやアイリですら気付かないほどに小さな音であった。しかし自然界では決してあり得ない”金属の軋む音”が遥か遠方のリンドヴルムに違和感を与えた。


 先ほどまで辺りを気にする様子もなかったリンドヴルムが顔を上げ、音の出先を探るように振り返り、移動する竜車を見つける。


「あれ・・・こちらを見てませんか?

「気づかれたか・・・?」


 イデアがリンドヴルムを確認しようとしたとき、この距離で目が合ったような感覚を覚えた。


「ガァァァアアァ!!」


 刹那、リンドヴルムが竜車に向けて咆哮する。弓も届かぬほど離れた距離からの咆哮であったが、ビリビリと大気を揺らし、空気の砲となって竜車にぶつかる。


「くッ!マズイ!」


 大きな敵意の籠った咆哮を浴びた地竜が混乱し、暴走する。制御の利かなくなった地竜は一目散にリンドヴルムと逆方面へ逃げようと走り出す。

 リンドヴルムは、まるで獲物が来たと言わんばかりに再び咆哮し、竜車に向かって全速力で走り出した。


 進化の過程で翼が退化したリンドヴルムは、四つ足で地面を蹴り、地上を走る。空を捨てた平原の王者は、裕に地竜の最高速を超え、みるみる距離を縮め迫っていた。あと数刻もしないうちに追いつかれるだろう。


「迎え撃つしかない!」


 迎撃を選択したイデアは剣を抜き、竜車の後方に立つ。


「奴を引き付ける。アイリはこのまま縄張り外まで走り抜けてくれ。」

「それではイデアさんが!」

「心配ない。奴を倒してすぐに追いつく。それに・・・」

「それに?」

「竜車よりも走ったほうが早い。」

「あぁ・・・そうでしたね・・・。」


 やっぱり人間辞めてる。そんな視線が背中に注がれるが、気づく術もなくイデアは竜車から飛び降りた。


 着地とほぼ同時に、目前まで迫っていたリンドヴルムが角を突き立て突進するが、イデアは反り出た角に剣の腹を当て、突進を受け流した。

 そのまま轢き殺そうとしていたリンドヴルムであったが、渾身の力が籠った突進を容易く受け流されたことにより、苛立ち、急ブレーキをかけ反転する。

 イデアはファーストコンタクトでリンドヴルムの敵意を竜車から引きはがすことに成功した。


「お前の相手はこっちだ。」


 イデアは分かり易く挑発し、さらにリンドヴルムの敵意を釘付けにする。

 イデアの挑発に更に苛立ったリンドヴルムは怒り。咆哮する。白銀であった背鰭が赤く染まり、ゆらゆらと蜃気楼が発生する。大きく息を吸い込み、顎を閉じると隙間から蒸気が溢れ出す。


「熱線かッ!」


 リンドヴルムがイデアを目掛け勢いよく顎を開くと、体内で圧縮された熱が放出された。

 咄嗟に回避したイデアであったが、熱線に触れた地面は溶け出し、赤く煮えたぎっていた


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