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亡国のイデア  作者: おこめ
第三章
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コルラ峡谷

「竜車ってすごい快適なんですね~。」


 リーンを出発して数時間、アイリは竜車の快適さをひしひしと感じていた。


「この竜車は特にだな。なんでもリーンの最新技術で作られているらしい。」

「へぇー。どおりで振動とかも少ない訳ですね!」


 数年前に突如リーンから発表があった三つの最新技術。そのうちの一つが振動軽減機能付き竜車【ガブリオレ】である。

 馬車および竜車の乗り心地改善は何年も前から各国がチャレンジし、失敗してきた。特に長距離移動時の負担軽減は物流において急務であった為だ。

 多くの技術者が風魔法を利用した策を考える中、突如として現れたのが、鉄線を螺旋状に巻いたバネと呼ばれる部品を車体と車軸の間に挟み込むという、魔法を一切使わない製法であった。

 バネを取り付けた竜車ガブリオレは瞬く間にトップシェアとなり、今も他の追随を退けているのだ。


「この竜車が最新技術っていうのは分かったんですが、他二つは何があるんですか?」

「銃と呼ばれる遠距離攻撃用の武器と魔核を使わない照明だそうだ。」

「魔核を使わない照明!?どうなってるんですかそれ!?」

「さあ・・・構造は国家機密だそうだ。銃については弓とは違い素人でも扱えると言っていたな。」

「すごいなぁ・・・かしこい人がいるんですねぇ・・・。」

「フフッ。そうだな。」


 感嘆の声を漏らすアイリをみてイデアは思わず笑う。


「えっ!なんで笑うんですかー?」

「いやいや、笑ってないぞ。」

「いや、笑ってましたよ!」


 イデアとアイリは和やかな空気に包まれていた。

 そのまましばらく道なりに走り、そろそろ日が傾くといったあたりで竜車を停めた。


「今日はこのあたりで野営の準備をしよう。」


 ガブリオレが快適であるからといって、地竜の牽引速度は馬と同等である。そのため、平地において移動速度が変わることは無い。次の街までは馬車で二日かかるため、昼過ぎに出発した二人は最低でも野宿を二回挟むことになる。


「そうですね。暗くなる前に準備しましょう。」


 竜車の荷台から野営道具を引出し、準備に取り掛かる。長旅に備えてテントも買い揃えたが、竜車が想定より大きいため、荷台の中で眠ることにした。また、小型の地竜は温厚ではあるが、警戒心が強いため外敵察知に優れていおり、安心して眠れるというのも理由の一つであった。


 火を起こし、夕食の準備を始める。アイリは料理ができないため、必然的にイデアが担当となる。アイリが料理を作る様を横からそわそわと覗き込む。


「何を作るんですか?手伝いますか?」


 落ち着かないアイリを他所に、座ってろと心の中で呟くイデアであった。


 


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