プロローグ
ーーアルセリア王国
レミリア大陸の東西を隔てるレミリア陸橋の東に位置し、北に海を臨む美しい小国。海産物と農作物に恵まれ、南東にある山脈により鉱産物も多く産出される豊かな国である。
南東の山脈はアルス霊峰と呼ばれ、古くから炎龍の棲家として祀られてきた。小国でありながらアルセリア王国が繁栄し、魔物の襲撃や西部を支配する帝国の侵攻を退き続けられている理由は偏に炎龍の庇護下であることが大きかった。
アルセリア王国は年に一度、炎龍に感謝し、五穀豊穣と万民豊楽を祈願する祭礼が執り行われる。これが百年以上前より続くアルセリア王国名物 炎龍祭 である。
炎龍祭当日は周辺諸国より連合各国の重鎮が来賓として招かれ、国内外からも多くの観光客が訪れる。同時にアルセリア騎士団により炎龍の元へ供物が運ばれ、献上される。
国の中央に位置したアルセリア城より国王が姿を現し、演台へ昇る。第13代アルセリア王がゆっくりと右手を挙げ、炎龍祭の開催を宣言しようとしたその時、警報の鐘が国中に響き渡った。
「何事だ!」
国王は周囲を巡らし、報告を催促する。
「御前にて失礼。報告致します。西方の物見櫓より黄色発煙を確認。」
将軍より報告を受けた国王の顔色が一変した。
「黄色の発煙…魔物の襲撃じゃと…」
百年続いた平和を壊すように、炎龍の叫び声が国中に轟いた。