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二百二十三話 決断9

タチアナの夢。



『私はヒーローになりたいのだ。』



彼女は俺にそう言った。


だが、タチアナを待ち受けていた現実は

残酷で、彼女の夢とは真逆のものだった。



けれど、俺はタチアナに魔王を消滅

させるために、自分の命を犠牲に

するような結末を迎えてほしくない。


どうせ死ぬのなら、俺は

タチアナにこの世界のヒーローとして、

英雄として最後を迎えて欲しいのだ。


俺にはそんな夢みたいなことを

実現させれる魔法が使える。



その魔法はこのレッドブックに

載っていた。

誰が考えたのかもわからない

謎多き魔法の書だが、この魔法を

使えば、タチアナはこの世界の

英雄として、旅立つことができる。




「タチアナ......俺の方を向いてくれ。」



俺がそう言うと、タチアナは

若干緊張ぎみに俺の方を

向いた。



俺は自分の左手をタチアナの頭にかざす。




「少し痛みを感じるかもしれないが、

我慢してくれ。直ぐに楽になる。」




タチアナは俺の言葉に頷いて

くれたが、目を瞑ってしまった。

やはり、死ぬのが怖いのだろう。



可哀想ではあるが、俺にできるのは

タチアナがなるべく苦しまないように

魔法を素早く完了させることくらいだ。

失敗は許されない。



俺は一度深呼吸をして、気持ちを落ち

着かせる。



次に魔法の名前をもう一度確認する。



よし! いくぞ!



俺は意を決してその魔法の名前を叫んだ。



魔吸転生まきゅうてんしょう!」



すると、タチアナは苦しそうな

声を漏らしながら、俺の手を

強く握ってくる。

苦しいはずだ。

なぜなら、俺は今、タチアナの魔力を

全て吸い取っているのだから。



レッドブックに記されてあった

魔吸転生という魔法の説明は次の通り

だった。


[この魔法がかけられた対象から、

完全に尽きるまで魔力を吸収し、

その魔力を死んだ者に与え

この世界に復活させる。

ただし、与えることのできる

魔力は、同じ世界で生まれた魔力に

限る。]


つまり、どういうことか説明すると、

この魔法を使えば、ある者から

死んだ者へ魔力、この世界では

そう表現されているが、いわゆる命を

与えることができる。


完全に魔力が尽きるという

表現は、ただ単に全ての魔力を魔法に

使ってしまったということではない。

この世に魂を定着させる為の力その物、

簡単に言えば、生命力を完全に使い

果たしてしまうという意味だろう。

だから、この魔法にかけられた

対象は死ぬことになる。


けれど、その代わりに死んだ者に

魔力という名の生命力を与えることが

できる。


更にこのレッドブックには、

対象者の魔力が多ければ多い程、

この世界に復活する者の数も多くなる

と書いてあった。



ならば、タチアナではなく俺の魔力を

使えばいいのではと思ったかも

しれないが、そうもいかない。


なぜなら、このレッドブックに


ただし、与えることのできる

魔力は、同じ世界で生まれた魔力に

限る。


と書いてあるからだ。


おそらくだが、この一文は

転生者や転移者の魔力は

この世界の者には与えられないと

いう意味を表しているのだろう。


だが、俺の魔力でなくても、

タチアナ程の魔力なら

百......いや、千人もの死者を甦らせる

ことが可能かもしれない。


そうなれば、タチアナはこの世界の

英雄として永遠に語り継がれる

ことだろう。



俺は決して、タチアナを

この世界の悪として終わらせたくない。



そんな糞みたいな結末には絶対に

させない。



そう思っていると、随分魔力を

俺に吸収されたのか、タチアナは

ふらっと意識を失って倒れかける。

俺はすかさずそれを受け止めた。


もう少し......もう少しで完全にタチアナ

の魔力を吸収し終わる。


後はそれを俺が死んだ者達に

与えるだけだ。





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