表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/349

三十二話 鳥と少女2

「じゃあお兄さん名前は?」



「隼人。君は?」



「メグよ。そんなことより、早く

どいて。」



「え、あぁ……悪い。どうぞ。」



俺は渋々座っていた岩から離れる。

邪魔ってどういうことだ、と思って

いるとメグは持っていたバケツを

重そうに下ろし、さほど高く無い 

岩から下にジャンプする。



「隼人! そのバケツ私に渡して!」



いきなり呼び捨てかよ。

と内心思ったが、言われたとおり

彼女が岩の上に置いたバケツを持ち上げ

下にいるメグに渡す。



「このバケツなんなんだ?

土が入ってるけど。」



「餌よ餌、土の中にミミズが

いるの。」



「餌? なんか岩の下にいるのか?」



メグは返事もせずに岩の影に隠れる。



流石に俺も何がいるのか気になり、

岩から下に降り、メグのあとを追う。



「ピッ! ピピッ! ピーーー!」



岩の下にいたのは水色の鳥だった。

鳴き声は小さい鳥のようだが、

羽を広げれば1メートルは

ゆうに超えそうな大きい鳥が岩の

下で、メグが手に持ったミミズを

鳴きながらがっついている。



「でかいな……なんていう鳥なんだ?」



「氷鳥、私はそう呼んでる。」



「氷鳥ね……どうしてこんな

ところにこんな大っきな鳥が?」



「五ヶ月前くらいに拾ったの。

右足を怪我したみたいで。それで

私がここに連れてきて看病してる。」



バケツのミミズを全て上げると

今度は優しそうに撫で始める。



「その怪我はもう治ったのか?」



「まさか。治そうにも私にそんなお金

無いよ。」



「え!? じゃあ五ヶ月も傷を放置してん

のか!? そんなんじゃ右足

今頃腐ってんじゃ……」



「それについては大丈夫。見て。」



メグは羽で隠れた氷鳥の足を俺に 

見せてくる。



「氷?」



確かに右足に傷がある。

だが、その傷を覆うように

氷鳥の右足は凍っていた。



「この氷鳥はね、自分で口から

冷たい息を吐いて物を凍らせる

ことができるの。だから、

傷は今のところ大丈夫。

私が回復ポーションを買えるだけの

お金が貯まったら、すぐに治して

あげるから、だから、それまで我慢

してね? ペルー。」



「ペルー?」



「この氷鳥の名前よ。私がつけてあ

げたの。」



そう言ってメグはまたペルーを

撫でる。



「お金が貯まったら……ね……」



俺は彼女に聞こえないよう小さく

呟いた。

見た感じ、服装も若い女性に 

してみればいささか地味な服を

着ている。

彼女がどんな生活をおくって

いるかなんて俺は知らないが、

恐らく彼女は言葉は悪いが貧乏なの

だろう。

回復ポーションはこの世界では確かに

高いが、庶民の手に届かないという

程の額ではない。

それが買えないのだから、相当

厳しい生活をおくっているのだろうに、

その貯まったお金を自分の為では

無く、怪我をした鳥の為に

使おうとしている。

なんとも健気な女の子だった。



「ちょっとそのペルーっていう鳥、

見してみろ。」



だから俺は


そんな彼女を見て


少し寄り道をしてもいいだろうと


そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ