Folge 90 胃袋を掴まれる
「ん?」
カルラが両腕を伸ばして要求してきた。
「カルラ起きた?」
「うん。はい、起こして」
「よしよし。いくぞ」
ヒョイっとお姫様抱っこをする。
そのまま食卓へと運んで椅子へ座らせた。
「え、これって……」
「みんな連れて来るから待ってな」
カルラを構うとすぐに気づく分身がいる。
「はい! 起こして」
「そのつもりで来たぞ、それ」
同じく長女をお姫様抱っこでカルラの横に座らせる。
タケルは目を擦りながら甘えを発動していた。
「朝なの? なんか寝ちゃった。兄ちゃん?」
「おはよう、ちゃんといるよ。ほら、姉ちゃんたちのとこへ行くぞ」
タケルにもお姫様抱っこ。
「着るものが違えばタケル君……凄そう」
「凄いってよ。寝ぼけたタケルも久しぶりだな」
タケルもイスに座らせて……。
最後に美咲か。
「それじゃ美咲も行きますか」
「いいなあ、ボクもして欲しい」
「したことなかったね。……普通することは無いと思うぞ」
「だからして欲しいんだよ。ね、お願い」
今日はいきなり凄い所を見せつけられているからなあ。
じゃれてもいるんだけどさ。
「お姫様抱っこぐらい、するよ。さくみさも軽いし」
「えへへ」
イスまで美咲を運んできたけど、起きない。
起きない? んーっと、これは。
「美咲さあ、起きているだろ? 座って欲しいんだけど」
「もうちょっとこのままがいいです」
「起きてるじゃん! このまま手を離すよ?」
「もお、嬉しかったのに」
ここまでして寝ていられるのは小さい子供ぐらいだろ。
それでも実は起きていたりするし。
自分が親にされた時は起きていたから。
「さて、起きているけどするかい?」
「やった! してして」
サービスのお返しをしますか。
綺麗な同級生を抱き上げる。
冷静になって考えると凄い事だな。
彼女のような存在になっているのなら、いいのかな。
行動を肯定するために彼女と言うのもまずいよね。
ああ、そういう壁があるか無いか。
無い事を分かりやすくするために『彼女』と言うのか。
『付き合う』ってこともそういう意味で使えばいいのか。
なら、さくみさは『彼女』と言ってもいい存在な気がする。
付き合っているとか、彼女だとか言われても否定する気も起きない。
うん、今は気にならないな。
『彼女』とした方が二人共喜ぶのなら、それでいいかも。
そんな気がしてきた。
「そんなに嬉しい?」
「少し恥ずかしいけど、癖になりそう」
「喜んでもらえて何よりだ。サービスのお返しね」
「あん。お返ししてもらえるなら料理ぐらいいくらでもしちゃうよ」
「その……色っぽい声が漏れると――」
「え、色っぽい? つい出ちゃったけど……色っぽかった?」
「うん」
「嫌なら気を付ける」
「その逆、聞けて耳が幸せ」
「サダメさあ、正直過ぎだよ。顔が熱くなってきた」
咲乃もイスに座らせる。
自分も座っていよいよいただくぞ。
「咲乃ちゃんが作ったの?」
「そうだよ」
「あの、困るんだけど」
「え!? 不味い? 口に合わなかったら無理しないで」
「逆よ、美味し過ぎて困るの。わたしの料理をサダメが食べてくれなくなるじゃない」
「良かったぁ、カルラちゃんに褒められちゃった」
これはとんでもなく美味い。
一見よく見る朝食だ。でも綺麗だし可愛い。
そして見た目を超えた味。
「まるで咲乃そのものだ」
――――え。
思わず口に出てしまった。
「どういうこと?」
「ああっとその……綺麗で可愛い見た目を超えた味だと思ったら、ね」
「――――はわわ」
両手で顔を隠して恥ずかしがっている。
それが可愛いんですけど。今日の咲乃は魅力全開か!
「朝から兄ちゃん飛ばすわね。何よ、なんだか嫉妬するんだけど」
ツィスカが嫉妬すると抑えるの大変なのに。
でも今日の咲乃は褒めさせて欲しいよ。
たぶん、ツィスカも料理への嫉妬があるのだろう。
「あ~あ、咲乃。とうとう見せちゃったのね」
「ん? だって、サダメが嬉しい事言うから」
「何を言われたの!? まさか……」
「な~いしょ!」
「……サダメちゃん。食べ終わったらじっくり聞かせてもらいたいのですけど」
咲乃が気になる言い方するから。
仕方ない、美咲にも直接伝えますか。
咲乃が喜んだ理由であり、美咲への気持ちを――――。
いつもお読みいただきありがとうございます!
楽しんでもらえていますか?
90話ですね。
相変わらず淡々と進んでおります。
甘々空間を味わっていただけたら幸いです。
ブクマ&評価をぜひ。
もう少し続きそうです。
引き続きよろしゅう。




