Folge 69 夢に逃げる
「おかえり兄ちゃん。どうだった?」
「ただいま。咲乃はオレに気付いて起きた」
「寝てはいたんだね」
美乃咲姉妹も連れて来ている。
今は明日必要なモノだけを持たせて。
二人に会っていたわけだから、もちろん一緒に帰るさ。
夜にウチへ二人だけで来いなんて言えない。
「サダメが楽しくなる服選んでいたら寝ちゃったんだ」
「姉ちゃんたちと一緒だ。今は二人共ぐっすり寝ているよ」
「そうなのね。楽しみにしてくれているのかな」
「それはもう。オレたちすぐ済むのに部屋に入らせてもらえなかったんだ」
「部屋?」
「ああ。ウチって着替え部屋があってさ、そこにタンス類が全部あるんだ」
「……実家なら似たような部屋があるわ」
「そうだった。実家は大きいんだったね」
「なのかしら」
「たぶん」
「兄ちゃん、とりあえず中に入ったら?」
そうだった、まだ玄関先だ。
家の中で話せばいいこと。
蚊も入っちゃうしね。
「さあさあ、二人共入って」
「なんか兄ちゃん楽しそうなんだけど」
「そうか?」
そうかな。
全員揃うと楽しくなる――あ、楽しくなっているのか。
とりあえず集まるリビング。
もうこの双子も目に入っていないと落ち着かない。
ソファーに座っているのを見ていると、ホッとした。
「二人は用意できたってことなの?」
「はい。サダメちゃんのお陰でササっと準備できちゃいました」
「兄ちゃんが手伝ったの?」
「二人が早く動く飴をいただいたので」
「飴? なんだかわからないけど、二人も兄ちゃんがいると捗るんだね」
「そりゃそうだよ。サダメから主従関係結んでもらったからさ!」
「しゅ、主従関係!?」
「ちょ、なんつー言い方するんだ」
二人は座ったまま片手を握り合い、こっちをガン見してきた。
何かを言うつもりらしい。
ろくでもないことを言うに決まっている。
心を受け身の姿勢に変えた。
「これからは二人共サダメさんの言うことをなんでも、なんでも聞きます!」
「なぜ二回言った!」
「重要な事だからです」
ろくでもないことをされるよりは、言うことを聞いてくれた方がいいさ。
でもな、その言うことを聞くってのは、違うよね!?
「ああ、兄ちゃんが何をしたかは把握しました。こんな兄ですがよろしく」
「……タケル、勝手に把握するな。ちゃんと話を聞けよ」
「え? だって、キスしてウチに住めって言ったんじゃないの?」
「お前、見ていたように言うな」
「兄ちゃんは分かりやすいからね」
そうだった。
オレの心は何かとザルらしい。
父親の遺伝なんて嫌いだ。
「タケル君、改めてよろしくね!」
「こちらこそ」
タケルもそうやって受け入れていくし、柔軟過ぎるんだよ。
後は妹たちだけども、今日は本気で寝ているみたいだ。
これは明日の朝から騒がしそうだ。
荷物も用意させなきゃいけないしな。
早く寝よう。
「あいつら早く起こさないといけないから、もう寝るぞ」
「ボク、一緒に寝ていい?」
「私も!」
「ああああああ、そう来るよなやっぱり。好きにしろ」
「やった!」
えっと、好きにさせていいのか?
彼女でもない同級生二人と一緒に寝るんだぞ、今更だけど。
ああ、今更か。じゃあ、いっか。
楽しんでしまおう……楽しむのか。
んーもういい! 寝てしまえばいいんだ。
そうだ、夢の中へ逃げよう。
――――逃げさせて。
お読みいただきありがとうございます!
一話からここまで読まれたあなたは完全にファンですね?
すみません、調子に乗りました。
ぜひブクマ&評価をポチっとしてくださいまし。
作者は小躍りし、執筆継続と品質向上へと繋がるハズです。
なにとぞ!




