表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ?~  作者: 沢鴨ゆうま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/101

Folge 26 ……まったく

 オレは寝ている。

 夢の中は平和だ。

 双子の妹が十組いるんだ。

 みんなオレに懐いている。

 どの子もそれぞれかわいい。

 次から次へとキスをされる。

 夢だから唇も腫れない。

 安心してキスができる。

 二十人も妹がいるんだ。

 オレからの愛を全員に行き渡らせるのは至難の業。

 しかしここは夢の中。

 至難の業も朝飯前と化す。

 素晴らしい。

 なんて素晴らしいんだ。

 ん?

 なぜだろう。

 夢なのによ~く知っている重さを感じる。

 夢のはずなのに。

 オレは双子だらけの妹たちとまだイチャつきたいんだ。

 頼む。

 オレはこの世界で一生暮らしても悔いはない。

 頼む。

 ここに居させてくれ。

 頼む。

 ……頼む。

 …………頼む!


 夢から目覚めてしまった。

 最高の夢だったのに。

 と思いきや、目の前にはツィスカの顔が間近にある。

 間近に。

 マジか。

 これはしておかないと。

 そのままツィスカにキスをした。

 夢とは違う。

 やっぱりこっちがいい。

 もう一回キスをした。

 するとツィスカが抱き着いてプレス機のように締め付けてきた。

 夢ではこの感覚は味わえない。

 うん、これだ。

 オレも抱き返す。

 ツィスカもさらに力を増す。

 負けじとオレも。


 それにしても。

 ツィスカってこんなに力あったっけ?

 いや、なんか、違わね?

 締め付けのあまりのキツさで眠気が覚めてきた。

 よく見ると……。


「タ……ケ……ル……。き、キツイんだけど」

「兄ちゃん、最初騙されたでしょ。兄が僕たちのこと分からないなんてことがあったらダメだよ」

「ごめん、寝ぼけていたからだ。覚めてきたら気づいただろ? ゆ、許せ」

「騙せた僕はもう満足しているんだけど、ツィスカがもっとやれってブロックサインを出しているから」

「いや、別に相手に分かりにくい合図を出す必要はないだろ」


 違う、問題はそこじゃない!


「え~。僕が怒られちゃうんだよね。兄ちゃん、ツィスカに謝って」

「ツィスカ~、愛しているから許してくれ~」


 締め付けられたままで謝るからなんとも情けない声だ。


「解いて良しのサインだ。はい。兄ちゃんご苦労様でした」


 ほっ。

 束縛から解放された。

 あれ?

 また束縛が。


「兄ちゃん、愛している人には何をするんでしょうか?」


 今度はツィスカが抱き着いてきた。

 あの~。

 オレって確か休んでいたのでは。

 まあ、キスはするけど。


「はい、よろしい。もっとする? 遠慮しなくていいのよ?」

「オレさあ、疲れて寝ていたはずなんだけど」

「そうね。じゃあこうしてあげる」


 ツィスカは胸の間にオレの頭を抱え込んだ。

 いい匂い。

 安眠枕……。

 即寝られる。

 おやすみなさい。


「一人忘れていない?」


 あ、安眠枕が遠ざかってゆく。

 しかし、次の安眠枕に替わった。

 即寝られる。

 おやすみなさい。


「寝たらわたしとできないでしょ?」


 しっかりとキスされた。

 うん、しっかりと。


「それじゃ、後は姉ちゃんたちに任せて僕は部屋にいくよ」

「ありがとね、タケル」

「僕は兄ちゃんにくっついただけだから」


 タケルは部屋を出て行った。

 あん?

 今ちらっと美咲が見えた気がするんだけど。

 咲乃の看病でいるんだからおかしくはない。

 ――けど。

 なんだかいつもと雰囲気が違ったような。

 自分でも何が気になるのかわからないから、いっか。


 ◇


「兄ちゃん、美咲さんだよ」


 あれ?

 あのまま寝てしまったようだ。

 休むために横になっていたのだから問題はない。

 カルラの抱きしめは、絶妙な力加減だから幸せになる。

 美咲?

 そっか。

 もしかして……。

 オレは半身を起こして美咲に聞いてみることにした。


「咲乃は起きたの?」

「ええ、お陰様で。いつも通りに戻りましたよ。ゆっくり起きるように言ってありますが」

「焦ることはないから、ゆっくりしていくといいよ。美咲もご苦労様」


 えっと、ベッドを降りられない。

 いつも通り妹に挟まれているんだな。


「ベッドを降りてきちんと起きたいんだけど、いいかな?」


 二人はそれぞれ起き上がる。

 何か一言頼まないと束縛を解除してもらえない妹ロック。

 言わないと解除されない素晴らしいロック。


「オレ、咲乃の顔を見に行くよ」

「ぜひ。喜びます」


 二人に文句を言われないように、妹たちを連れて咲乃に会いに向かう。

 ツィスカのベッドで半身を起こした咲乃が、こちらに気付いた。


「サーちゃん! ボク迷惑かけてばかりでごめんね」

「そんなことないよ。誰だって自分じゃどうにもならないことはあるさ」


 咲乃の前で膝をつき、目線を合わせる。

 眼も澄んでいて奇麗だなあ。

 美咲と同じなのになぜか咲乃の眼は惹かれてしまう。


「そんなにジッと見てどうしたの? 初めてだよね、そんなに見てくれるの」

「ごめん、随分顔色も良くなっているし、安心したんだ」

「謝ることないよ。ボクはサーちゃんに見てもらいたかったからうれしい」


 そこまで言ってもらうようなことをしたつもりはないのに。

 言葉で説明できるものじゃないっていうやつなのかな。

 家族以外の女性から好意的に接してもらえると、なんだか戸惑うな。


「今日一日でこれだけのダメージを受けるなら、学校へ連れて行くのを躊躇うんだけど」

「ううん、それは大丈夫……までは言えないけど、慣れないと、ね」

「気持ちは凄くわかるんだよ、でもなあ」

「サーちゃんがいてくれれば頑張れるの! お願いそれだけは、させて」

「医者からその辺の話はないの? 無理にするとまずいよ、とかさ」

「薬を出されるだけだし、確かに無理はするなと言われるけど、外へ出たいときは出てみなさいって」

「う~ん、慣れようとする初日だから症状が重いと考えれば、徐々に良くなっていくのかなあ」


 自分の身体じゃないから無理の限界がわからない。

 これは咲乃の言う通りにしてあげるしかないのかな。


「よし、わかった! つらいのを承知でやるんだよな。協力する」


 咲乃の表情がグッと明るくなる。

 こっちまでうれしくなっちゃうよ。


「でも、限界を感じたら絶対にオレに言うこと。言わなかったら二度と会わないからな」


 痛っ!

 咲乃に腕を思いっきり掴まれた。


「絶対に言うから! 会わないとか言わないで。ボク、ちゃんとサーちゃんの言うこと聞くから」

「約束してくれるならこの話は終わりだ。それより咲乃、爪を立てて握るなよ」


 腕に刺さる勢いで爪を立てられた。

 猫じゃないんだから。

 ん? 見回すと猫人間だらけだな。


「ごめん! 怖いこと言うからつい……」


 咲乃がこちらを向いて正座をした。


「改めて、よろしくお願いします。う~、やっぱりこれだけさせてっ!」


 へ? うわあ!

 咲乃が抱き着いてきた!


「ちょ、お前、また――」


 はあ。

 結局、唇は奪われるわけね。

 まったく、この娘は。


「ちょっと! まったく、離れなさいよ!」


 ツィスカが咲乃を剥がしにかかる。

 カルラはオレを羽交い絞めにして咲乃から引き離した。


「サダメも離れなさいよ! なんでされたままなの。まったく、そういうところなのよっ」


 引きずられながらそんなことを言われた。

 うん、確かに。

 なんでキスを回避しなかったんだろう。

 まったく、と思ったことがブーメランとなってしまった。


 この状況を眺めている二人がいる。

 なんだよ、二人で笑い合って。

 最近、タケルと美咲ってなんだか……いや、まさか、ね。


 咲乃はすっかり元に戻り、美咲と自宅へ帰っていった。

 妹二人はやれやれといった様子。

 タケルはなんだか一人だけ楽しそうだ。


「なんでタケルは楽しそうなんだ?」

「そう見える? 別に何もないんだけどな」


 ふうん。

 何もない、か。

 何かありそうだから聞いたんだけど、答えを引き出せなかった。

 まあいいや。

 そのうちにわかるだろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ