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妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ?~  作者: 沢鴨ゆうま


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Folge 23 ネタ待ちの、名ばかり親友

「どうしたの兄ちゃん、体重計なんかに乗って」

「いや、久しぶりに乗ってみようかなあと思って」


 体重。

 変化なし。

 ラブでは痩せない。

 学会に提出しておくか。


「サダメの身体に変化は無かったわよ、安心して」


 カルラはオレの主治医か?


「なんでわかるの?」

「そりゃあ毎日じっくりチェックしているもの、当然よ」

「あたしだってそれぐらい分かるわよ!」


 ツィスカの対抗が始まったぞ。


「いつも兄ちゃんの身体の隅々を念入りにチェックしているから」

「あれってチェックなの? 診察だったの?」

「スキンシップをしていれば毎日の調子なんて簡単に把握できるよ」


 そんな効果もあったのね。

 オレ、症状が出ていないと妹達の身体の状態まで分からない。

 う~ん、今日からそういう面も気にしながら入念にチェックしてみるか。


 入念にチェック?

 オレは何をするつもりなんだ!



 ◇   ◇   ◇



 妙に長く感じる週末も終わった。

 久しぶりに学校という気分。

 いつものように白い目で見られながら教室へ入っていく。

 そして例の奴がいるわけだ。


「おう! おっはよ~サダメっち!」


 最近、友達と言いたくないことも増えた友達らしき奴、裕二だ。


「おはようさん。何を待ち構えているんだよ」

「いやさ、だってさ、サダメ君だよ? どんなお話が聞けるか楽しみじゃないの」


 裕二は相変わらずオレで遊ぶことしか考えてねえな。


「週末、何かあったんだろ? さあ、吐いたら楽になるぞ」

「じゃあお前の奢りでかつ丼頼むわ」


 ワザとらしく自分の体中を野球のブロックサインのように触っていやがる。


「あっれ~? おっかしいぞ~。財布が無いや」

「テイクが無いなら何も話さねえぞ」

「って言うことは何かあったんだな? 分かりやすい奴だなあサダメは」


 ふぐっ。

 確かに何かあったと分かる言い方をしてしまった。

 サダメじゃなくてただのダメな奴になっちまうじゃないか。


「それでそれで? なになに、何があったんだよ」

「だから何か見返り――」

「聞いてあげてるじゃん。サダメの話を普通の顔して聞けるやつ、いるか?」


 いや、ニヤついているだろ。


 はあ。

 こいつに今更黙ってられるような仲じゃなくなっているのが悔しい。

 でもコイツすら話す奴がいなくなったら、完全にボッチだからなあ。

 白い目で見られているのを緩和するものが何も無くなっちまう。

 助けられているんだよなあ。

 裕二はあえて付き合ってくれているんだ。

 ――なんだか自己暗示で逃げている気がしなくもないけど。


「まあ、美乃咲さん絡みだ」

「ほうほう。やはり絡んでいたか。それで付き合うことにしたのか?」

「いやいや。それ、お前でも無理があるのは分かっているだろう?」

「サダメなら難しいかもな。俺ならとりあえず付き合っちゃうけど」

「強者?」

「んーなんじゃなくてさ、俺はサダメと違って一人だからな」


 オレの肩を叩いてきた。


「シス&ブラコンじゃないと気楽だぞ。サダメはこっちと世界が違うんだ」

「絶望的な事を言うなよ~。痛い所突きまくりやがって」

「ははは。自分を恨め」


 さらに肩をバシバシと叩いてくる。


「こっちにしてみりゃ妹が有名な美人で、度を越えて懐かれているなんて夢の話なんだから」


 やっぱりそうか、そうなんだよな。

 文句を言っちゃいけない立場なのかも。

 だけど、血が許してくれないんだよ!


「おい、サダメ。こっちに来るみたいだぞ」

「――それ、前に聞いたセリフだな」

「いや、マジで来るって」

「またそうやってオレで遊ぶのかよ。遊ばれる身にもなってくれ」

「ほんとだって」

「え? 美乃咲さんか?」


 気づけばクラスの生徒は全員自分の席に着いていた。

 教室へ一人の女子生徒を連れた担任が入ってくるのが見える。

 おまけに見覚えがある女子だ。


「え~、その~、休学中だった美乃咲さんが今日から復帰することになった」


 咲乃じゃないか!

 あれ?

 一緒のクラスだったっけ?


「みんなにしてみれば初めてになるな。訳あって初日から休学していたから無理もない」


 はあ。

 それは知らなかったぞ。ウチに来た時に言っておいてくれよ。


「転校生みたいになってしまうな。まあ、名前だけでいいから自己紹介をしてもらおうか」


 生徒達は最初ポカンと口を開けて見ていた。

 自己紹介をするために教卓の前へ咲乃が移動。

 すると、ざわつき始めた。

 そっか。

 オレは咲乃だってわかるけど、みんなは知らないんだ。

 となると美咲だと思っていたりするわけだ。


「今更ですけど初めまして、美乃咲咲乃と申します。美咲の双子の妹です、よろしくお願い致します」


 おお!

 ボクっ子がちゃんとお嬢様しているよ。

 あの辺の切り替えが怖いところだね。


「それでだ。美乃咲さんの席なんだが、藍原の横だ」

「へ? いや、でも空いていませんよ?」

「今から空けりゃいいだろ。さあ、とっととやれ」


 みんな揃って仕方なく動き出す。

 なんでオレの横なの?

 なんとなく察しはつくけどさ。


「よ~し、席なんてもんは大体でいいんだよ。それじゃあ美乃咲さん、座って」


 咲乃が横に座ったけど、目を合わさないなあ。

 まだこちらの様子を伺っているところか。

 あんな手紙を放り込んでくるぐらいだからな。

 咲乃もどうしたらいいのかわからないのかも。

 こっちも何の返事もしていないし。



 ◇   ◇   ◇



 一限目が終わってすぐに美咲が飛んできた。


「咲乃、どう?」


 クラスメイトは本当に双子なんだとあちこちで言っている。

 そりゃあ美人双子は目立つからなあ。

 あれ?

 そんな双子がどこかにいたなあ。


「どうもないよ。大丈夫」


 しまった、すっかり忘れていたよ。

 咲乃は集団が苦手だったな。

 そのせいでオレと目を合わさなかったのかな。

 合わせるどころではなかったというか……。


「そう、良かった~」


 片手を胸に当ててホッとした様子を見せている。

 吐いたりするって言っていたし、気になってしょうがなかったんだろうな。


「あ、サーちゃん先日は失礼しました。今後は気を付けますので、その……」

「ああ、いいよ。でもね、昨日のやり方もちょいと問題ありだからさ、できれば普通にしてくれると助かるよ」

「わかりました、ありがとう。よかったね咲乃、サーちゃん許してくれたよ」


 あ、咲乃に袖を握られた。

 二人が揃っているだけでも目立つ。

 その上オレと話しているとさらに目立つわけで。

 後始末が大変そう。


「ありがと。ボク心配でずっと寝られなかったんだ」


 確かに少々疲れた顔をしている。

 髪の毛にも疲れって現れるからなんとなくわかる。

 テンションの調整が利かない子だ。

 ネガティブに振ると酷いことになるんだな。

 ああ、そういう子を無視できないんだよなあ。

 オレのツボを突いてきていると言うか。

 困った子だ。


「これからは落ち着いて動いてくれれば妹達も悪くは思わないし、仲良くできると思うぞ」


 でも調整が出来ないんだから無茶ぶりになっているのかな。

 しかし困るものは伝えておかないと。


「咲乃の性格だと難しいだろうから、いきなり動くのをどうにか止める方法を考えようか」

「そんなのボクにできるかな。思った時に急がないと叶わない気がするんだ」

「その気持ちはもうわかっているからこそ、対策をしたいんだよ」


 美咲は黙ってオレと咲乃のやりとりを見ている。

 何か考えていることがあるのかな。

 策があるなら言って欲しいところだけど。


「咲乃が自分でブレーキ掛けられる方法って思いつく?」

「ボクだとこれしかないよ?」

「何?」


 握っている袖を引っ張られた。

 ってことはまさか。

 あ~あ。

 クラスメイトの前で公開キスをお披露目。

 オレはいつものように巻き込まれているわけだけど。


「これしか、ないよ」

「やってから言うなよ」

「――ちょっとお二人さん。い、今のは!?」


 裕二を忘れていた。

 というか、こいつはワザと存在を消していた。

 絶対に何か起こると踏んでいやがったな。

 ネタ待ちするなよ。


「こちらじゃなくて、こちらとお付き合いをされていたの? サダメ君」


 そっち? キスに反応したんじゃないのか!?

 どっちと付き合っているかが気になったと?


「いや、付き合っていないから」

「なのにキスをするのか?」

「そ、それに関してオレからはどうにも説明ができない」

「付き合う予定だからいいんだよ。ね、サーちゃん」

「だからそれだってば。そういうところを自粛して欲しいと言っているんだよ」

「でも、ブレーキはぶつかるしかないんだけど」


 はあ。

 それノンブレーキだから。


「付き合う予定があるっと」

「裕二、何をメモっている? テストには出ないから必要ないぞ」

「またまた~、いい感じじゃない。ところで、どちらがお姉さん?」


 こいつ、咲乃の自己紹介を聞いていなかったな。


「お前ちゃんと自己紹介聞けよ。美咲がお姉さんだよ」

「あの~サダメ君、呼び捨てにしていますけど、ほんとに付き合っていないの?」

「週末いろいろあったって言っただろ」

「随分と色々あったみたいだな」


 長い週末だった――。

 それで学校へ来てみればこの状況だ。

 目立ち方が不本意過ぎる。


「で、美咲さんが告白していたのに、話を聞いていると咲乃さんとなの?」

「それもオレからは何も言えないし、付き合うかどうかはオレの予定にはない」

「うそ!? サーちゃん付き合ってくれないの? 嘘でしょ?」


 嘘も何も、付き合う話が出るほど会ったわけでもないし。


「咲乃、落ち着いて。他の人達が驚いているから」

「それに、もう授業も始まるしね。美咲さん戻った方がいいんじゃない?」


 裕二はこういうところで助かるんだ。

 まあ、先生が来れば前の様に怒られるだけなんだけど。


「あ……そうですね。それでは咲乃、気分が悪かったらすぐにサーちゃんに言うんだよ」

「わかってる。でも大丈夫だよ」

「ならいいわ。無理しないでね」


 美咲は戻っていった。

 クラスメイトの目線をたっぷりと浴びながら。

 咲乃はオレの言ったことで少々落ち込んでいるみたいだ。

 俯いている。

 そして、まだ袖を掴んでいる。

 実はギリギリなんだろうな。

 なんでこうオレが気になることをするのかね、この子は。


 ――――様子が変だったら保健室へ連れていくか。

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