Folge 22 雷のいじわる
さて。
今日の夜のお相手はカルラ嬢です。
なんかピンクな世界になっちゃうな。
いつも通り。
いっしょに寝るのがカルラの番、ということ。
すでにベッドに入っている。
でも、カーテン越しに強烈な光が部屋に入り込んで来る。
「キャッ!」
お色気攻撃ではなく、本気で抱き着いてくる。
「もういやだあ、ひゃっ! また! サダメ止めて」
「無茶言うなよ。さすがのオレでも空のご機嫌はどうにもできない」
いや、他に何かできたことなどないけれど。
何が起きているのか――そう、サンダーだ。
と言ってもロックバンドやプロレスラー、ちっちゃなモンスターではない。
カミナリ、である。
「いいわ。サダメにくっついて離れないから。ちゃんと隠して」
「それならできるぞ」
なんだか情けないセリフだ。
雷の轟音にかき消されていたのだろうか。
音の隙間を突いてドアのノック音が聞こえた。
「あれ? 誰か来たのか?」
「やだ、怖いこと言わないでよ」
「いやいや、二人のどっちかじゃないかな」
確かに聞こえたノック音の主を確かめてみた。
「誰だ~?」
ドアが開くと、枕を抱えたツィスカが立っていた。
「兄ちゃん、グスッ」
あらあら、半べそになっちゃって。
「カミナリ怖いのか?」
「知ってるでしょ?」
小さい頃から妹二人はカミナリが苦手。
らし過ぎて笑えてくるぐらい。
そこが可愛いんだけど。
「カルラ今日は三人で寝よう。いいよな?」
オレに顔を埋めたまま喋る。
「うん。カミナリだけは許すわ」
双子にしか分からない同じ感覚の共有。
「ほら、ツィスカおいで。カルラもおいでって言っているよ」
ツィスカはツツツツっと寄って来る。
抱えていた枕は床に置きながら上手にベッドに入った。
普段何度もオレが寝ている間に入り込んでいるのが分かる動きだ。
「兄ちゃんだ。ありがとう」
「感謝されちゃったよ。妹二人に挟まれながら寝るのはオレも嬉しいんだぞ」
「へへへ」
閃光が部屋に入り込む。
「キャー!」
「オオッ!」
今カルラの脚がオレのハザードエリアを撫でていった。
「あれ? 兄ちゃんどうしたの?」
「い、いや――ちょっとな」
「なになに? 兄ちゃんも怖いの?」
「いや、そうじゃない。違うことで……」
――――閃光!
「キャー!」
「オオッ!」
それヤバイって。
脚を絡めるのは心地良いけど、ハザードエリアは別物だ。
こういう時に察しの良い妹ってのは都合が悪い。
「サダメ、もしかして」
「え?」
「カルラ、兄ちゃんって何かあるの?」
バレたか?
「もしかしてだけど、これ?」
カルラはゆっくりとハザードエリアを脚で撫でてきた。
「オオオオッ!」
「やっぱり!」
ツィスカが背中をよじ登ってカルラを覗き込んだ。
「何よ?」
「サダメはね、わたしの脚で、その……撫でちゃったからよね」
少し間が空いたけど、ツィスカは気づいたようだ。
ヤバイな。
「そういうことね。カルラの脚が気持ちいいの? ならあたしのもいいはずよ」
「ちょ、何を」
カルラがオレの腕を封じてツィスカが脚を開かせる。
ったく、何を思いつくんだか。
「カルラやるよ!」
「いいわ」
「オオオオオオオッ! やめろ! 何を考えて、いや、それヤバイから、マジで!」
二人が巧みに脚を使って撫でてくる。
容赦ねえ。
男であるオレの身にもなってくれよ~。
――いや、反応する男で楽しんでいるのか。
「やめてくれ! 頼む!」
「ええ? だって気持ちいいんでしょ? いくらでもしてあげるよ?」
「それは嬉しい――じゃなくて、身がもたないから、頼むから止めて」
「本当に止めていいの~? 気持ちいいのに~?」
「あのね、男はあんまり気持ちいいのが続き過ぎても身がもたないって……何を言わせる!」
ったく!
絶対絶対こいつら殺す気だ!
脱出しないとスイッチが入ってしまう。
腕を抑えているカルラの耳をカプッと甘噛みしてやった。
首がつりそうだけど、やむをえない。
「はうっ!」
一瞬力が抜けたところで腕を外す。
次は寝返ってツィスカに抱き着く。
「あっ!」
そのままベッドを降りてツィスカを床に寝かせる。
動きを止めるため、首筋を舐め上げてキスをした。
「ふわぁ!」
よし、これで脱出できる!
オレはそのまま部屋を出て一階へと降りた。
もう、喉がカラカラ。
とりあえず開いているミックスジュースを飲む。
「あれ、兄ちゃんどうしたの?」
タケルは一階にいたようだ。
ジュースをゴクゴクと飲み干してから訳を話す。
「いや、カミナリだろ?」
「ああ。じゃあツィスカも来ちゃったってこと?」
「それだけならいいんだけどさ」
「うんうん、また酷い目に遭ったみたいだね」
酷いというかなんというか。
「ま、まあ、男としては複雑な酷い目に遭った」
「複雑に、ねえ」
なんだかタケルの奴、ニヤついているな。
「なんだよ」
「またヤバイ! ってことされたんでしょ?」
「分かるのか?」
「いつものことじゃない。兄ちゃんも大変だねえ」
「ある意味、そうだな」
「血が繋がっていないなら、ねえ」
「繋がっていないとしても、歳的にダメだろ」
「それはそうだけどさ、まだ許される余地があるというか、ギリギリだけど」
「繋がっているよりは、ぐらいしか差が無いな」
タケルはソファーを指差し、座ろうと誘う。
「ふう。嬉しいんだけどな」
「僕もさ、兄ちゃんに思いっきり懐いている姉ちゃんたちが見られないと心配になるし」
「そうなのか」
「小さい時からずっとそうしてきたから」
「オレも同じ気持ちなんだよ。でもなあ、歳なりに厳しくもなってきているぞ」
「僕は少しだけど分かるよ。よく兄ちゃん我慢できるね」
片膝を抱えてブラブラとさせるタケル。
「まあ、オレはあの二人が好きなんだよな」
その言葉を吐いた時、背後に気配を感じた。
「サダメっ! 今最高の言葉を聞くことができたわ!」
カルラが首に抱き着いてきた。
しまった~、本音を聞かれてしまった。
「兄ちゃん、あたし……今最高の気分よ!」
ツィスカは前から抱き着いてくる。
また始まった。
ニコニコしているタケルが言う。
「そうそう。兄ちゃんはそうされていればいいのさ」
「そうは言ってもタケル、マジで身がもたないって」
「それは姉ちゃんたちの兄になった宿命だから、諦めて」
それを言ったら身も蓋もないだろ!
◇
結局妹に部屋へ連れ戻されて、あれやこれや夜通しされて……。
カミナリの恐怖はどこへ置いてきたんだ?
――――朝は何キロ痩せているのかな。




