Folge 100(終) 彼女
「たっだいまぁ! ママが帰ったよ~。可愛い子たちはどこかしら?」
「おいおい、パパもいるぞ! 急いでママに合わせたんだから」
帰ってきた。
子供四人を放ったらかしている両親が。
仕事と私たち、どっちが大事なのよ!
なんてドラマなセリフが脳内を横切ったよ。
声からすると、何も変わっていないみたい。
マイペース人間はこういう所に腹が立つんだよね。
ストレス感じて少しは疲れて帰ってきなさいよ。
と、長男は思うのであった。
「ママー!」
はい。
一番を取ることをモットーにしている長女が先頭。
あえて二番を選ぶことで長女の存在を上書きしていく次女が続く。
「ママ、パパ。おかえりなさい」
「おかえり!」
要領の良い次女にくっついて同じ効果を得ようとする次男。
お前ら、上手過ぎ。
「まあ! 三人共ちゃんと美人に磨きがかかっているわね、いいわあ」
「本当だ。家に帰ると目の保養になるのが助かるんだよなあ」
ならもうちょっと帰る回数増やせよな。
「えっと、サダメはどこ?」
呼ばれたので、行きますか。
「二人共、お帰り」
母親はツィスカの喜び方と同じように目を思いっきり開く。
髪の毛まで広がっているような錯覚を感じさせながら。
以前、同じことを別の人で感じた気がするが。
「私のサダメ! 早く来てハグさせてよ!」
どこかで聞いたセリフだな、いや、元祖はこの人だった。
なるほど、咲乃の言い回しがしっくりしやすい理由。
母親に刷り込まれたものを彷彿とさせているからだったのか。
「……もお、また魅力が増しているわね」
鯖折りのようなハグは非常に辛い。
しかしこれぐらい力を込めないと納得できないらしい。
これを首が座った頃からされ続けている。
オレの身体よ、よく耐えてきたな、褒めてやるぜ。
「大好きよ、サダメ!」
誰よりも濃厚なキスをされる。
母親のするレベルじゃない。
誰か代わってみてほしい。
高校生でされると複雑な心境になるということが分かるから。
「相変わらず物凄いのをしてくるね。もう諦めているけどさ」
「ええっ!? サダメは喜んでいないの? やめる気は無いけど」
「でしょ? だからさ」
「そっか、喜んでいないのね。私、嫌われていたのね」
「違うよ、こっちも歳なりになっているって事。親なら分かりなさいよ」
面白いぐらいにガックリと項垂れる母。
そのフォローはわきまえている。
「ママ、大好きだから。ほいっ!」
こちらからね、軽くキスすればいいのです。
恥ずかしい!
「サダメ、結婚して!」
「パパの前で息子に浮気するなよ」
「私、本気よ?」
「なおさら駄目だ!」
始まった。
この隙に離れておくんだ。
「あらら。こうなると一頻り話さないと終わらないから行きましょ」
「そうね。兄ちゃん、ご苦労様」
「ありがと」
奥ではさくみさが呆気にとられている。
そうでしょうね、こんな家族はそうそうないでしょう。
「いいなあ」
「ん? 咲乃、どした?」
「ここはみんな仲いいね」
「さくみさもこの仲間になるかもよ」
「え!?」
軽く手を振ってにっこりしておいた。
その辺の話を母親とするんだ。
「帰ってきて早々悪いんだけど、ママ」
オレの声に即反応する母。
旦那を放り出してこちらへ走ってきた。
「そうだったわね。しましょしましょ!」
「相談を楽しまないようにと言っているのに」
「だってぇ、息子に相談されるのよ? 興奮するじゃない」
なんで興奮するんだよ。
このズレ感、勝てないんだよね。
◇
自分の部屋に来てもらってこれまでのことを話した。
思い出せるもの全てを。
「うちの子たちは心配無さそうね。よく面倒見てくれたね、ありがと」
「あいつらが自分たちで上手くやっているのさ。オレは何もできないから」
「サダメがいるからあの子たちが頑張れるのよ。素敵な長男を産めて嬉しい」
深々とお辞儀をされた。
立場とか関係なく、素直に動く。
この人の魅力の一つなんだと思う。
「さくみさちゃん達の方は……」
どちらかというと、その答えが聞きたい。
「二人共彼女にすればいいじゃない。結婚じゃなくて彼女なんだし」
「そうなの? そんな考えでいいの!?」
「私は構わないけど。パッと見た感じでは美人さんだし、良い子だわ」
「分かるんだね」
「サダメが相談するまでになっているんでしょ? なら大丈夫よ。後で話をしてみるけどね」
二人共彼女にしろって。
すでに妹が彼女だと言っている現状。
彼女が二人増えたところで周りには何も言われないか。
『あっそ』の一言だろうな。
「子供は作っちゃだめだからね。結婚じゃなくて彼女だから、いい?」
「そ、そんなの考えていないよ!」
「そう? 年頃だからさ、するんだろうと思って」
「色々と容認し過ぎじゃない?」
「サダメだもん、全肯定だよ」
あはは、これじゃあ相談になっていないよ。
それでも親の答えをもらったことで安心はできた。
良いかどうかは別とする――うん、別とするよ。
◇
「サダメ! 私、二人共気に入ったわ! めちゃくちゃ可愛いじゃない!」
「……その通りだけど。まあ、気に入ってもらえて何よりで」
「さっきの話の通りでいきましょ、ね? あなた達、今日からサダメの彼女ね!」
「え、ママ、え!?」
さくみさは絶句中。
しかし、母の言葉で戻ってきた。
「そ、そ、そうなんですか!?」
「お母様からお許しが!?」
お許しって、何も悪いことはしていないでしょうに。
どちらかというと、オレでしょ。
「娘も彼女だって言い張っているし、一緒にサダメを支えてあげてね」
「それじゃあ結婚したみたいだろ?」
「あはは、彼女だからね? サダメにも言ったけど、子供は駄目よ」
さくみさは二人同時に真っ赤になって俯いた。
そんな大きな声で言うから、家の中でも恥ずかしいよ。
冗談で言っているわけじゃないしなあ、この人。
「そうか、サダメは彼女が四人か。俺の三人を超えたな」
「ちょっと、その話を詳しく聞かせてもらえる?」
「いや、学生の頃だよ。ママに会う前の話」
「あっそ。私が一番?」
「当然です」
「ならばよし!」
この夫婦、どうにかならないかな。
拗れないのは助かるけれども。
そして、正式にさくみさが二人共彼女になりました。
案の定という感は否めないが。
「美咲、咲乃。そういうことになったので……よろしくね」
「サダメ!」
「サダメちゃん!」
二人に抱き着かれました、長女に睨まれながら。
仮彼女とか企画したクセに。
「いつもと変わらぬ日常だけど、扱いは二人のご希望に沿った形になったということで」
「ちょっと、サダメの気持ちはどうなのよ? そんな言い方じゃこの子たちが可哀そう」
「ああ、ごめん。その……彼女になってくれてありがとう」
「き・も・ち、は?」
「……二人共、好きです」
さくみさがニヤニヤ、母親は満足気。
なんで公開処刑的になっているんだよ。
もう、隠れたいんだが。
「今日はお寿司でも食べよう! 違う、食べさせて!」
「ママはお寿司好きだもんね」
「わたしの料理は食べてくれないの?」
「カルラの料理はちゃんと食べるわよ。すぐに戻るわけじゃないし」
「どれぐらいいるの?」
「タケルへのキスが足りないから、三日ぐらいはいるかな」
理由がそれ?
タケルは嬉しそうだ。
あいつ、相当甘えるんじゃないかな。
末っ子だから両親とのやりとりは一番少ないからね。
「サダメ、いつもありがとうな。お前には感謝しかない。まだ大変な思いをさせてしまうけど、任せて大丈夫か?」
「何をいまさら。そりゃあ大変だけど、どうしても困ったら連絡するし、オレが頑張るまでもなく、あいつらは上手くやっているから。寂しく思わないようにしているだけだよ」
「それがありがたいんだよ。なかなか出来ることじゃない。それを頼んでいるパパママがマズいんだが。こっちが甘えてごめんな」
直接謝られると何も言えないよ、ズルいなあ。
でも二人のおかげでこんな生活ができているから――やっぱり、ズルい。
「照れくさいこと言わないでよ。彼女が二人増えたことだし、なんとかやってみるよ」
「俺に似て、よくモテて良かったよ。それもあんな美人姉妹な上に双子だなんてな」
「それはオレも驚いているよ。双子の妹に双子の彼女って何の冗談かとね」
「ははは。まあ、上手に楽しんでくれ。上手にな」
「その含んだ言い方やめてよ」
背中をバンバンと叩かれる。
その後は二人で大笑いした。
引っかかっていた気持ちも取っ払ってもらったし。
そのおかげで支えてくれる人が増えることに。
この先は、これまで以上に賑やかそうだ。
どうするか。
もうね、楽しむしかないでしょ。
――――思いっきりイチャイチャしてやるんだっ!
(完)
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いつもお読みいただきありがとうございました!
楽しんでもらえましたか?
これにて妹カノ、完結です。
読了ありがとうございました。
詳しくは、近況報告にて。




